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書評:吉成真由美(インタビュー/編)『知の逆転』(NHK出版新書)

最終更新:2013年8月5日

書誌情報

書評

これ,タイトルが悪いなあ。どこが「逆転」なのかピンと来ない。

表紙の見返し部分に「限りなく真実を追い求め,学問の常識を逆転させた叡智6人」と書かれているが,逆転というよりも,革命を起こした人という方がより適切ではなかろうか。しかも,叡智6人とは,ジャレド・ダイアモンド,ノーム・チョムスキー,オリバー・サックス,マービン・ミンスキー,トム・レイトン,ジェームズ・ワトソンであり,本書の主題は彼らの業績の説明ではなくて,彼らがいまいろいろなことをどう考えているかなので,いっそのこと,継承とか箴言とかにしてしまった方が良いように思う。

吉成さんが共通して投げかけた質問がいくつかあって,中でも若い人たちに薦める本についての答えが面白い。ダイアモンドとサックスはバランスが取れた答えで,具体的なタイトルを列挙してくれているが,チョムスキーは一般回答などないから自分で探せと突き放すし,ミンスキーとレイトンはSF万歳だし(ミンスキーに至っては,「たいていの小説は,まず人々の問題があり,彼らが陥った難しい状況というものがあって,それをどうやって解決するか,うまく解決できてハッピーエンドになるか,そうでなければ,うまくいかなくて罰を受けたり死んだりするか。100冊小説を読んだら,みな同じなんですね」とSF以外のすべてを十把一絡げにして切り捨ててしまい,SFは新しいアイディアを与えてくれると賞賛している),ワトソンは予想通り俺様回答というか,自著の『二重らせん』とダーウィンの『種の起源』を挙げていた。他の質問の答えの中にも,強い印象を残したものは多々あるのだが,いま書き留めておく時間は無いなあ。

【2013年8月5日,2013年3月21日のメモより採録】


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