最終更新:March 6, 2016 (Sun)
『雲の王』の前日譚やたぶん同時代の話も混じっているが,起承転結がハッキリした王道エンターテインメントだった『雲の王』に比べると,表現が文学的というか,重層的に入り組んでいる。その分解釈の余地が大きいので大人向きと思う。
タンポポの花が入ったガラス瓶とか,軽便鉄道の緑の通路で浮かび上がる蛍とか,印象的な描写が多いのも特徴と思う。たぶん何度か読み返してみたら,また別の発見がありそうな本でもある。
なお,気象学や色覚についてなどの知識がするする入ってくる教養小説としての側面も健在であった。
【以上,2015年10月4日,2015年10月4日の鵯記より収録】