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書評:川端裕人『動物園にできること 「種の方舟」のゆくえ』,文藝春秋

最終更新: February 27, 2006 (MON) 11:30 (文庫版情報を追加)

書誌情報

書評

昨年川端氏がアメリカ留学中に取材し続け,追及した,動物園は何をすべきか,何ができるのか,というテーマの総決算である。

イルカやマナティの取材のときと同じく,当事者の生の声が聞こえてくるような本にしあがっている(飼育者自身が書いたものではないにもかかわらず)。1年間でよくここまで取材できたものだと感心した。

13章「ブロンクス裁判」でアニマルライツとディープエコロジーの活動家を動物園に連れていってしまうバイタリティーもたいしたものだ。

本書で最後に触れられている,日本の動物園がお寒い状況だというのは,組織的な問題,制度上の問題であって,個人の資質ではないような気がする。川端氏には,是非北九州の「いとうずゆうえん」に行って欲しいものだ。

なお,日記にも触れた,本書後半の主題に絡んでくる,動物園による「種の保存計画」については,正直なところ賛成できない。別の本でそれをテーマに取材してくれるといいのだけれど。

【1999年5月1日記】


このハードカバーは長いこと入手困難だったそうだが,文庫になって入手しやすくなり,しかも日本の動物園関係者について追加取材された章が追加された。旭山動物園の話や京大霊長研の話,風太君騒動についてのコメントなど,川端のスタンスが良くわかって興味深い。

上野動物園の飼育課長さんによる文庫版解説までついているというお買い得な本だと思う。

【2006年2月27日追記】


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