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2007年1月29日に東京大学医学部健康科学・看護学科講義「人口学」の枠内で講義した「数理人口学」についてのサポートページ
"Applied Mathematical Demography"は,Keyfitz N, Caswell H (2005) "Applied Mathematical Demography 3rd Ed."が出ている。Keyfitz自身による第3版への序文によると,出版事情は次の通り。
第2版はほとんど売れ尽くしてSpringerが第3版を書けと言ってきたので,「もう90歳だし自分で新版を出すなんてほとんど問題外だけど,いい共著者が見つかるかも」と言っておいて,何人かの名声を確立した人口学者に声をかけてみた。でも,皆が,この本はよく書けていてよく練れているんでもう付け加えることはないと言った。これは,人口学者に声を掛けたのが間違いだった。生物の世界に気づいていなかった。Hal CaswellはAlfred Lotkaが人類という種の話をずっと超えていったように,非常に広い視野をもっている。Caswellとの共著のおかげで,第3版は非常に広い視野をもったものになった。このことに気づかせてくれてCaswellのところに自分を連れて行ってくれたJoel Cohenには感謝してもしきれない。Caswellがいなかったら本書は第2版で死んでいただろう。
そういうわけで,第2版と第3版ではだいぶ構成が違う。行列モデルを大きく取り上げ,中心的なフレームの1つとして扱っている点が特徴かと思われる。
章 | 第2版 | 第3版 |
---|---|---|
1 | はじめに:年齢なしの人口 | はじめに:年齢なしの人口 |
2 | 生命表 | 生命表 |
3 | 死亡率の比較:性比 | 行列モデルの枠組み |
4 | 死亡率と出生率の固定:安定人口理論の利用 | 死亡率の比較:性比 |
5 | 出生と内的自然増加率 | 死亡率と出生率の固定 |
6 | 移住,避妊,ゼロ成長への応用も含めた再生産価 | 生命表からの出生と人口増加 |
7 | 人口の特徴を理解する | 行列モデルからの出生と人口増加 |
8 | 人口予測(projection and forecasting) | 生命表からの再生産価 |
9 | いくつかの不安定性タイプ | 行列モデルからの再生産価 |
10 | 血縁関係の人口理論 | 人口の特徴を理解する |
11 | ミクロ人口学(microdemography) | 個人の生活史のためのマルコフチェーン |
12 | マルチステートモデル | 人口予測(projection and forecasting) |
13 | 家族人口学 | 行列モデルの摂動分析(perturbation analysis) |
14 | 人口分析における不均質性と淘汰 | いくつかの不安定性タイプ |
15 | エピローグ:人口学の事実を如何に知るか? | 血縁関係の人口理論 |
16 | ミクロ人口学(microdemography) | |
17 | マルチステートモデル | |
18 | 家族人口学 | |
19 | 人口分析における不均質性と淘汰 | |
20 | エピローグ:人口学の事実を如何に知るか? |
ちなみに稲葉さんの「数理人口学」の章立ては,第1章 歴史的ノート/第2章 安定人口モデルの基礎/第3章 安定人口モデルの発展/第4章 非線形単性人口モデル/第5章 ペア形成モデル/第6章 伝染病の流行モデル/第7章 年齢構造と伝染病流行/第8章 エイズ流行の数理モデル/第9章 インフルエンザ流行の数理モデル,となっていて,後半が感染症数理モデルの話になっている点に特徴がある。
Correspondence to: nminato@med.gunma-u.ac.jp.