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環境衛生:2. 大気
Latest update on 2012年4月16日 (月).
大気の区分
気圏(atomosphere)のうち,海抜8〜17 kmまで(低緯度地方は厚く高緯度地方は薄い)を対流圏,その上の海抜50 kmまでの層を成層圏という。ちなみにオーロラは100〜200 kmの辺りに発生する(参考:地上400 kmを周回しているISSから見た地球のtime-lapse動画)。現在の窒素4:酸素1という大気の組成は,植物を中心とした生物の環境形成作用の産物。
物理的大気環境
- 気温(temperature):緯度が1度上がると0.8℃下がり標高が1 km上がると5.5℃下がる。アスマン通風乾湿計の乾球温として測定。ヒトは気温の変化に対し産熱と放熱のバランスをとって体温の恒常性を保つ。限界を超えた高温で熱中症,低温で凍傷など。低温曝露時の生理的反応としてハンティング・リアクションが有名。
- 気湿(humidity):大気中の水蒸気含量。絶対湿度(=水蒸気の密度,g/m3)と相対湿度(絶対湿度/その温度における飽和水蒸気量×100,%単位)があり,通常は相対湿度が用いられる。アスマン通風乾湿計の湿球温と乾球温から求める。湿度が高いと水分や汗の蒸散が遅くなるので,放熱に影響がでる。通常は45〜65%程度。80%以上で湿潤感,30%以下で乾燥感を感じることが多い(ただし感覚は温度や風速とも関連する。例えば,不快指数=0.81×摂氏気温+0.01×相対湿度×(0.99×摂氏気温−14.3)+46.3)
- 気流(air current, air stream)または気動(air movement):気流:大気の動き。風:地表面近くの水平方向の気流。気動:室内の空気の動き。いずれも風向風速計で測定。気流や気動のヒトへの影響としては,1 m/sec増えると体感温度がおよそ3℃下がることが知られる。
- 熱輻射または熱放射(thermal radiation):太陽や人工的な熱源から熱エネルギーが放射されること。太陽の熱放射=日射。ただし光自体は電磁波。黒球温度計で測定。元々は作業環境測定に用いられていた。
- 気圧(atmospheric pressure):空気の張力。単位は気圧(atm),mmHg,hPaなど(1 atm = 760 mmHg = 1013.25 hPa ≒ 1 kg重/cm2)。測定はアネロイド型気圧計等による(cf. 気象測器検定規則)。低地のヒトはほぼ1気圧下で生活し肺胞内の酸素分圧は約101 mmHg。高地に行くと酸素分圧が下がるので高山病になることがある。ただし長くいると高地適応する。潜水中は高圧になるが,急に減圧すると血液中の窒素が発泡して空気塞栓を生じる(ケーソン病,潜水病)。高地適応には段階があり,生理的調節(physiological adjustment)としては,血液の酸素分圧が低下(hypoxia)するのに対して呼吸運動昂進(hyperventilation),炭酸ガスが過剰放出され血液がアルカリ性になるのに対して,腎機能昂進し尿中への重炭酸塩排出を増加させ血液を酸性側に引き戻すことなどがある。これが1年ほど続いた後,高地馴化(acclimatization to high altitude)として,血液濃縮(RBC増加),肺の拡散能増加,右心室肥大,酸素解離曲線の右方シフト(ケチュア)などが起こる。もっと進んだ形の長期的な高地適応(adaptation to high altitude)としては,ヒマラヤのシェルパに見られる酸素解離曲線の左方シフトが有名。
- 放射線または輻射線(radiation)→別の回
化学的大気環境
- 自然の大気の化学組成
- 水蒸気を除いた乾燥空気では,窒素と酸素で99%以上
- 残りの大部分はアルゴン
- その他は0.04%:二酸化炭素,メタン,亜酸化窒素,オゾンなど
- 大気汚染物質(air pollutants)
- 二酸化硫黄,二酸化窒素など,人為起源の物質
- (cf) WHOの大気汚染の定義「戸外の大気中に人工的に持ち込まれた汚染物質が存在し,その量や濃度や存続時間が地域住民のかなり多数の人々に不快感を引き起こしたり,広い地域にわたって公衆衛生上の危害や,人間,動植物の生活を妨害するようになっている状態」
- 産業革命以後に急増
- 室内空気の汚染も問題
- 大気汚染物質の区分:
- 気体(gas)と粒子状物質(particle matter)
- 一次汚染物質と二次汚染物質:一次汚染物質:発生源から直接大気に排出(二酸化硫黄,二酸化窒素など),二次汚染物質:大気中の化学反応で生成(光化学オキシダントなど)
- 滞留時間:フロンは45年程度かそれ以上,二酸化炭素は7年程度,オゾンは対流圏で1〜4ヶ月,下部成層圏で1〜2年,二酸化硫黄や二酸化窒素は数日〜1ヶ月以下
- 講義ではgasの各論,particle matterの各論を上げたが省略(参照:画像削除版プレゼンファイルpdf)。『環境衛生科学』などを参照されたい。
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