プロジェクト【EPC-Bluesky】
〜青空ML有志による新しいエコポイントチェック
Last updated on
May 17, 2007 (THU) 19:07
(リンク先修正).
現在のところ,2209番までの投稿をまとめています。それ以降の投稿については,"EPC-Bluesky"というキーワードで過去ログを検索してください。
趣旨説明:なぜ新しく作るのか
(出典)[2148][2149][2157][2173]
エコポイントチェックの出典である高月紘[編著]「自分の暮らしがわかるエコロジー・テスト」(講談社ブルーバックス)のチェックリストには,例えば,「16.洗剤として合成洗剤でなく石けんを使っている」という項目がありますが,出典にも,「合成洗剤の方が石鹸よりBOD値が低く(合成洗剤25 gで0.22 gTOC/g,石鹸45 gで0.47 gTOC/g),一見環境にやさしそうに思える。しかし,合成洗剤は生物分解が難しいため,BOD値としては高くないが,逆に生態系には有害なものが多い。そこで,ここでは水質汚染と有害化学物質の両面から取り上げた」とある通り,使い方や環境によっては石鹸の方が環境負荷が大きくなることさえありえます。安井至さんのサイト「市民のための環境学ガイド」の2000年7月13日付けの記事が指摘するように,石鹸の原料として植物性の油脂が使われることを考えれば,地球環境問題の点からも石鹸の環境負荷は小さくありません。要は使用量とBOD,資源,生態毒性などを総合的に考えて適材適所で適量使うべきというのが,最近の環境科学ではほぼ合意のようです。
もっとも,学生実習で水道水のLASを測ってみると水質基準ぎりぎりの値がでてきたりするので(精度に問題はあるかもしれませんが),少なくとも上水の取水口より上流に住んでいて下水が整備されていないところ住民には合成洗剤を勧めたくないという側面もあります。
合成洗剤よりも石鹸を使う方が環境負荷が低いと判断された根拠としては,国立環境研究所を中心とした環境研究の専門家たちが行ったリスク評価において,環境負荷そのものだけではなく,ライフスタイルの変更へのターニングポイントとしての重要度など象徴的な意味も加味されたことが大きいようです。しかし本来,エコポイントチェックが依拠したコンパラティヴ・リスクアセスメント(CRA,詳しくは後述)の考え方でリスク評価の重み付けをする際には,専門家ばかりでなく住民参加が重要であるとされていて,この判断が妥当であったかどうかについては議論の余地を残しています。
他の項目でも,「11.太陽熱温水器を利用している」などは借家や間借りの人には意味のない項目ですし,「13.米のとぎ汁は流さずに有効利用している」も,都市住民がどうせ買った米を食べるのなら無洗米を利用するという手もありますし,プランタや植木鉢など置けない部屋もあります。また,これだけ携帯電話やコンピュータ,ゲーム機器が普及している現在,それらに関する項目がないのは,ライフスタイルのチェックとしては不十分な気がしますし,消費行動が大量生産・大量消費・大量廃棄の産業構造を支えているという側面も見逃されています。「自分の暮らしがわかるエコロジー・テスト」でも評点のつけ方や項目は適宜見直しを行うべきだと書かれていますので,一歩進んで,じゃあ自分たちで質問項目と評点を作ってしまおう,というのが,新しくエコポイントチェックを作る趣旨です。青空MLは,環境問題に関心をもつ人びとが個人の立場で自由に語り合う場なので,普通に暮らしている市民も専門家も評価に参加でき,理想的なCRAができるのではないかと考えられます。
コンパラティヴ・リスクアセスメント(CRA)の考え方
(出典)[2149][2173]
CRAは米国環境保護庁が環境問題の優先順位付けのために開発した手法で,ある地域に関する環境問題の包括的なリストを作成し,問題の影響の大きさをリスクの側面から比較評価して(この際,健康リスクだけでなく,生態系リスクや生活の質へのリスクなども加味する)ランクをつけるものです。評価するのに専門家だけでなく,市民代表など幅広い人が参加して住民の立場からの意見も取り入れる点に特徴があります。
ちなみに,優先順位付けのための手法としては,CRAのほかにも,エネルギー消費量や資源消費量や二酸化炭素負荷量などに還元して1つの軸で比較評価する方法(たぶん,環境経済学で有力視されている仮想評価法も値段という1つの軸に換算するので,ここに含まれるでしょう),除去や予防に必要なコストで経済的に評価する方法,科学的あるいは政治的に定められた環境上の目標に対する距離を用いる方法(環境影響スコアを特定の場所と期間における実測値で割ることによって正規化でき,さまざまな問題の間での相対的な比較が可能になりますし,重み付け合計して単一数値にすることも行われています)などがあります。
「自分の暮らしがわかるエコロジー・テスト」に使われたCRAは,国立環境研究所が中心になって,環境庁,地方自治体,大学,コンサルタント,環境研究所から,関係者24名がパネルとなって,年2回泊り込みで,環境問題のリストづくりとランクづけをした(結果は,同書図8として,リストアップされた15の問題領域[地球規模の大気変動,有害化学物質汚染,電磁波・放射線など]ごとの4つの側面[健康,生産,生物,精神]への影響の大きさの,参加者の平均値が示されています)ということなので,CRAにしては住民参加的側面が弱いように思います。
エコポイントチェックを作る方法論
(出典)[2175]
「自分の暮らしがわかるエコロジー・テスト」の方法論
- 参加したパネルメンバーが思いつく問題領域のリスト作りをする(たぶん,思いつくままあげていき,後で似たものをまとめたりして絞る)
- 絞り込まれた15の問題領域から,日常生活に関連が深いものとして温暖化,廃棄物,水質汚染,大気汚染,有害物質の5分野を取り上げる
- 各分野について,パネルがつけた4つの側面[健康,生産,生物,精神]での得点を加算し,得点比率を分野ごとの重みとする(環境研CRAでは,温暖化問題24.3%,廃棄物問題18.6%,水環境問題10.9%,大気環境問題15.9%,有害化学物質問題が30.3%となった)。総得点が100点満点になるように,重みの合計を10にする(同じく2.4, 1.9, 1.1, 1.6, 3.0となった)。
- 各分野について10点満点になるように,25の日常行動(各分野について関連しそうな日常行動を予め5つずつ決めておいたもの)に評点を割り振る。割り振りの基準は,現状の環境負荷全体をひとつの環境容量とみて,この容量に対してどれだけ負荷を削減できるかという視点で行われる(ただし前述のように,象徴的な意味も含めて考える)。
- 25の日常行動それぞれのエコポイントが,5分野での評点に重みを掛けて合計したものとして得られる(例えば「新聞・雑誌をリサイクルに出している」という行動は,温暖化評点0.6,廃棄物評点3.1,水環境,大気環境,有害化学物質評点が0なので,0.6×2.4+3.1×1.9=7.4となった)。
- 回答者が25の日常行動それぞれについて,「いつも取り組んでいる」から「まったく取り組んでいない」まで5段階で自己評価できるように,「いつも」にその行動のエコポイントの満点,「まったく」を0点として,その間を4等分して評点とする。
青空ML版の具体的進行
上の方法論と同じような手順で進めたいと思います。実際にいくつの問題領域があがってくるのか,いくつの日常行動があがってくるのかは,やってみなければわかりませんが,最終的にできあがるチェックリストの質問項目数は,利用者の便宜を考えて,25〜40くらいにとどめるのがいいと思います。
最初は,日常生活に関連しそうな分野(問題領域)をリストアップするところからやりたいと思いますが,チェックポイントとなる日常生活行動の候補はそれと平行してたくさん上げておいて,後で絞ればいいと思います。何でも思いつくことがあれば,青空MLにメンバー登録してから,Subjectに【EPC-Bluesky】という文字列を含むメールを投稿してください。
リストが絞れた時点で青空MLメンバー有志がパネルとなって評点をつけるわけですが,その段階ではCGIを用意してここからリンクを張るなどの手段も考えています。4つの側面は,そのままでいいと思っています。
進行上の問題点・検討すべき点
(出典)[2177][2178][2179][2180][2185][2187][2190][2192][2195][2196][2202]
- 居住地域や年齢,職業,収入などによって,同じ行為でももつ意味が変わってくる可能性があります。
- 一方では,意味が違っても環境負荷という意味では共通と捉えることもできます。
- 複数のチェックリストを作るのは大変です。
- 都市モード,田舎モード,それぞれの集合住宅と一戸建ての4パタンではどうでしょう?
- 回答者の状況で実現可能な努力目標も聞くことにして,実際の行動とのギャップがわかるようにすれば?
- 環境負荷としての絶対評価と実現可能な努力目標とのギャップを両方出すようにすれば個人の状況の差はカバーできそうな気がします
- 複数のチェックリストを考えるのは自分の居住環境の特性を良く知る必要があるという意味です。
- それなら態度を問うとか知識を問うチェック項目をつくれば良さそうです。
問題領域の候補
「自分の暮らしがわかるエコロジー・テスト」で上がっている問題領域
- 地球規模の大気変動
- 近隣諸国との間での環境問題
- 地域大気汚染
- 有害化学物質汚染
- 暮らしに潜む汚染
- 感覚公害
- 身近な環境の人工化
- 生物相のバランス
- 大規模自然開発
- 土地(土壌)の劣化
- 河川・湖沼の水質汚濁
- 海洋汚染
- 迷惑施設の立地
- 大量生産・大量消費・大量廃棄
- 放射線・電磁波
青空ML版での問題領域の候補
(出典)[2175]
これまでに青空MLで出た話題を整理すればいいのですが,できていません。日常生活に関係が深そうな領域に絞る作業も必要です。
(2000年8月21日)独自に問題領域を上げるのは難しいので,「自分の暮らしがわかるエコロジー・テスト」で上がっている15の問題領域について,そのままレイティングを呼びかけてみることにしました。日常生活との関連が深くて重要だと思う順に,こちらから評点をつけてみてください。
日常生活チェックリストの候補
(出典)[2174][2175][2176][2180][2183][2186][2187][2188][2190][2194][2196][2197][2199][2208][2209]
- スターバックスなどの飲み物のテイクアウトには使い捨て容器でなく再利用できるカップ(パーソナルカップ)を利用している
- 米は無洗米を利用している(米を購入している人の場合)(無洗米の利点は,[2186]とぎ汁という水との混合状態になる前に肌ぬかを分離できるので効率がよい,[2188]新しい居住環境で古い文化を引きずる必要はない)
- どうしてもマイカーが必要な人は、(より燃費の良い)軽のマニュアル車に乗る
- (車の)エアコンを使わない
- 使っていない時、パソコンをOFFする/スタンバイ状態orディスプレイオフにする(注:[2187] Windowsでは起動時間やスタンバイからの復帰に時間がかかって面倒なのでOSを変えるという手もある。[2192] 事情でOSが変えられないなら,省電力型のハードウェアを使うという選択もある。)
- 会社の中でエレベーターを使わず、階段でフロアを移動する
- クーラーの設定温度をできるだけ高めにしている
- クーラーのフィルターは冷房効率を維持できる頻度で掃除している
- 主食は圧力鍋で玄米を炊いている(とぐ必要がない)(圧力鍋でなくても,水を増やしてちょっと時間をかければ普通の炊飯器でも炊ける)
- 煮込み料理にはシャトルシェフのような保温鍋(普通の鍋でも、中身を加熱した状態でバスタオル等に包んで発泡スチロールの箱に入れ蓋をすればOK;新聞紙+発泡スチロールでも可)を使ってガス使用時間を減らしている
- 下水道が整備されているか,収集されたゴミはどのように処理されているかなど,自分の住んでいる環境条件について知ろうと心がけている(態度を問う)
- 次のうち知らない項目はいくつありますか? (1)自宅の排水が下水道につながっているか浄化槽か垂れ流しか,(2)自宅のある自治体で何種類の資源ごみを回収しているか,(3)回収された資源ごみの再生ルート,(4)自宅での電力使用量(知識を問う。この場合のみ「いつも」から「まったく」ではなく,知らない件数でレイティングする)
- 再生品を使っている
- 節水を心がけている
- ごみの分別をしっかりしている
- 水を汚さないようにしている
- 自動車通勤は控えめにしている
- 環境に配慮した商品を使っている
- 過剰包装を断っている
- エアコンは省エネ性能の高いものにしている
- 水まきは雨水をためて使い,緑を増やしている
- 電車やバスを使っている
- 近い距離は自転車や徒歩による「ワンランクダウン」運動をしている
- ペットボトルをリサイクルしている
- リターナブルびんを利用している
- 液体洗剤など,2度目からは詰め替え商品を利用している
- こまめにスイッチを切っている(寝る前はコンセントを抜いている)
- エネルギーダイエットノートなど環境家計簿を使っている
- 無駄なものは買わないようにしている
- 家庭電化製品は省エネ型や節水型のものを購入する(☆☆)
- 低公害車や低燃費車,小型車を購入する(☆☆)
- 断熱材やペアガラスを効果的に使用するなど,エネルギー効率のよい保温構造にする(☆)
- 通風を取り入れ,日照を利用する(☆)
- 太陽熱利用設備及び太陽光発電設備を導入する(☆)
- 宅地内において,生物の生息環境に配慮した緑化に努める(☆☆)
- 夏期の冷房温度は28℃程度に,冬期の暖房温度は20℃程度に保つ(☆☆☆)
- 冷蔵庫にものを詰めすぎない。ドア開閉の回数や時間を減らす(☆☆☆)
- 人のいない部屋を消灯する。自然採光を利用する。(☆☆☆)
- 待機電力を消費するテレビ,ビデオなどは,使用しないときに電源プラグをコンセントから抜く(☆☆☆)
- 天気の良い日は乾燥機(洗濯用・布団用)を使わない(☆☆☆)
- ブラインドやカーテンを活用する(☆☆☆)
- できるかぎり車を使わず,徒歩や自転車で用事を済ませる(☆☆☆)
- 駐・停車時にエンジンを切るアイドリングストップを励行する(☆☆☆)
- 急発進・急加速を控える(☆☆☆)
- マイカー通勤を控え,電車やバスを利用する(☆☆☆)
- 近所への外出や買い物には,自転車の利用か徒歩を心がける(☆☆☆)
- レジャーには,電車やバスを利用するよう心がける(☆☆☆)
評価に必要な他のチェック項目
(出典)[2179]
- あなたが住んでいるのは、都市か地方か?
- あなたが住んでいるのはマンションか一戸建てか?
- あなたの住んでいる地域は、通勤・通院・お買い物に公共交通機関を使用できるか?
- 何ワットの電力を消費しているのか?
- 車を所有している場合、ガソリンの消費量は何Lか?
- あなたの家は下水道に接続されているのか(接続されているのなら、米のとぎ汁は捨てても良い)
- あなたの住んでいる街のゴミ処理・リサイクルのシステムは?
上述のとおり,努力目標を聞くとか,行動だけでなく,態度や知識を問う項目を作ればカバーできるかもしれない,という議論になってきつつある(2000年8月3日現在)。
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