10月25日(月曜日)は,3ヶ月ぶりに教室ミーティングの発表担当であった。が,投稿論文の準備などにかまけていてミーティングに時間をかけることができず,土曜日の時点でも何を発表するか未定だった。子どもたちが日曜は遊ぼうよというので日曜の昼間は近所の公園などでボール投げをしたり鬼ごっこをしたりと他愛もなく遊び,その後,泊まるつもりで大学に来たのである。もちろん,着いたのが夕方6時過ぎであるから,徹夜する予定だった。
大学に泊まるときは近所の店で夕食をとるわけだが,本郷界隈は日曜日に開いている店が少ない。赤門付近だと,やまもとラーメンか,カフェテラス本郷(略称:カフェホン)か,バンビか栄寿司くらいしか選択肢がないのである。この日は大学院生の萩原君と一緒に,カフェホンへ行ってシーズンメニューのビーフじゅうじゅう焼きライス付きを食べてきた。萩原君は,彼のWEB日記(コンピュータ室の一日)にも書いてあるように,オムライスの大盛りを頼んで,加齢を実感したようであった。このときカフェホンのWEBサイトが開かれているのを知って見てみたのだが,Javaが重いのはさておき,飲食店のWEBサイトとしてはまったく正しいあり方だと思って感心した。メニューがわかるのもいいし,クーポンがあるのもいい。本郷界隈をうろつくようになって13年以上になるが,学生の頃はよく食べられたなあ,と思い返すと感動するような大量の「大盛り」がカフェホンの特長(単なる特徴でなくadvantageと思う)である。味付けは濃目だがなかなかおいしく,わりと贔屓にしているのだ。激しく腹が減っているとき,本郷界隈で食事をしたかったら,行ってみられるとよい。
結局,一晩かけて在外研究員として半年参加していたPSUのグループが出した論文を読んだ。女性の出生力が加齢とともに低下する原因は何か? ということをバングラデシュの女性700人以上を対象に,9ヶ月間の前向き調査をして探った研究である。図表無しで説明するのは困難なので結論だけいうと,低下の原因は早期胎児死亡が増加してゆくことであり,その原因としては染色体異常が加齢とともに増加することが大きい,ということである。染色体異常の増加は,女性の卵巣内で卵原細胞が長い間分裂休止期にあることで染色体の損傷が蓄積してゆくためと示唆している。この研究のポイントは,自然出生に近い集団での大量のデータをとったことと,低下のメカニズムを探るために,近成要因モデルによる要因分解に基づいて生物学的に妥当な数学モデル(場合分けがたくさんあってきわめて複雑なハザードモデル)をたて,パラメータを最尤推定したというところだ。モデルの妥当性検証がまだ完全ではないが,生物人口学的にはエポックメイキングな研究と思う。
O'Connor, Kathleen A., Darryl J. Holman, and James W. Wood (1998) Declining fecundity and ovarian ageing in natural fertility populations. Maturitas (The European Menopause Journal), 20: 127-136.
さて,ミーティングでの紹介といえば,読むだけではいかんので,ハンドアウトを作らねばならないのだった。これまでにも何度か書いてきたように,イメージスキャナを使ってabstractと図表をグレースケールで読みとり,トーンカーブを変更してから2値化してPNG形式で保存したものをWordに貼り付け,論文の構造や図表にない情報を補足して作るわけだが,手元のマシンをWindows2000β3にしてしまったので,スキャナを使うのがやや面倒なのだ。何が問題かというと,ASPI32ドライバである。Windows2000用のASPI32ドライバにはいくつかの種類があるのだが,スキャナが使えるドライバでは,CD-R焼きソフトであるWinCDR4.0fが使えないし,WinCDRが使えるドライバではスキャナがエラーを起こすのだ。WinCDRが使えるドライバの方が日付が新しく(1999年7月13日,ver1.04)高機能なようだが,スキャナ側が対応していない機能を呼んでしまうのか,Device not readyのエラーが出てしまうので仕方ない。もっとも,新しいドライバはJukka Poikolainen Softwareというところが作っていてWNASPI32.DLL単体しかなく,他のASPIファイルは全てAdaptec提供のver4.57なので,やや無理矢理使っているところがあるのは否めない。まあ,当面はC:\WINDOWS\SYSTEM32ディレクトリに一々コピーをしながら使うしかあるまい。
ハンドアウトが概ねできたのが夜明けであった。すばらしい青空が,遠くまで広がっている。窓を開け,朝の空気を吸い込むと,徹夜明けで朦朧とした頭も,心なしかすっきりとしてくるのだった。こういうときは,紅茶に限る。Sikkim Temi Lot SM/26 FTGFOP1を7グラムほどガラスポットに入れ,沸騰させた湯を500 mLばかり注いで2分ほど待つと,馥郁たる香気を漂わせた淡紅色の飲み物ができあがる。カップにその液体を注ぐとともに立ち上る香りを吸い込みながら,口にちょっとだけ含み舌の上で転がしてみると,何とも言えぬ澄んだ味が口腔に広がってくる。至福の瞬間といえようか。
ミーティングは夕方であり,終了後も他の仕事をしたので,帰りは終電となった。さすがに疲れ果てて,帰りだけではなく,火曜日の朝の上り新幹線でまでも泥のように眠りこけていた。もう若くはないな,と感じるのは,こういうときである。