枕草子 (My Favorite Things)
【第233回】 口入れ屋?(2000年1月31日)
- 土日は例によって子どもと遊んで過ごしたわけだが,日曜日,仮面ライダークウガを見た後で(子どもの頃,本郷猛にわくわくしていた世代をも視聴者層として考えているような,結構凝った作りだった),ひまわり公園まで行ったら臨時に休みだったのには娘ががっかりしてしまい,図書館で紙芝居をいくつも読んであげるはめになってしまった。
- 今朝のあさま502号の混み方は異常だった。長野駅で,3人掛けの真ん中しか空いていなかった上,上田でも大勢乗ってきたのである。この土日を利用して観光にきた人が多かったということか。通路もいっぱいだったので,上野駅で降りるのにも難儀した。
- 今日は予定が立て込んでいて,本の返却のために味の素まで行かねばならないし,締め切りがいくつもあるし,ミーティングはあるし,タスクスケジューリングに混乱をきたしそうな気がする。しかも,長野は雪になるという予報だから,研究室に泊まってしまおうか?
- などとつらつら考えながら上野公園内を研究室に向かっていたところ,後ろから突然声をかけられた。
- 「おい,にいさん,仕事してる?」「は?」何のことやらわからず振り返ってみると,自転車に跨った50歳くらいに見える男が,眠そうな目つきでこちらを見ているではないか。呆気にとられていると,男はなおも,「働いてるのかい?」というのである。
- ぼくは,ははあ,これは噂に聞く上野公園の口入れ屋かな,と思いながらも,自分がホームレスの人と間違えられたことに半ば驚き,半ば腹を立てて「ええ」と強く答えた。すると男は,「そうかい」と簡単に去っていっていき,次に歩いてきた男性にまた声をかけるのであった。ぼくにしても,次に歩いてきた人にしても,そんなに汚れた格好をしているわけじゃあなかったんだが,背広にネクタイというわけでもなかったのが誤解を生んだのか?
- しかし,この男,口入れ屋としては駆け出しに違いない。なぜなら,ぼくが声をかけられたのは,上野の山の上なのだが,以前書いたように朝になるとホームレスの人たちは,池の方に屯しているのである。今日などは天気が良かったので,ひなたぼっこをしながら何やらわからないが真剣そうに話をしている人や,公衆便所で身体を拭いている人がずらーっと並んでいたのだ。そっちに目をつけずに,山の上なんかで人あさりをしていたのが,彼が駆け出しであろうと推察する根拠である。
- もっとも,池のまわりで話をしている人たちは,完璧に世を捨て去っていて,口入れ話なんかにはもはや乗らないのかもしれないが。
- あ,ちなみに口入れ屋とは,日雇い仕事などを紹介する手配師のようなことをする人のことである。水木楊「東京独立共和国」(文藝春秋)に,日本から独立した近未来の東京で,東京生まれでない主人公が外国人として職を失ってしまうという設定があり,不法就労の手配師を紹介された主人公が上野にやってくるくだりがあるのだが,上野という舞台であってみれば,やはり口入れ屋と呼びたいところだ。戦前には東北地方からの労働力を受け入れる窓口として,上野駅周辺には口入れ屋が軒を並べていたそうだから。
- 味の素には昼食がてら自転車で行って来たが,本郷から京橋まで往復1時間半というのは,ママチャリにしてはまあまあのペースだろう。
- 生理学の試験日程が決まらず往生した。駒場の学生と編入生で日程が合わないというのは,カリキュラムの構造的な問題である。4月に試験というのは,決して合理的ではない。といって,2回やるわけにもいかない。こちらの試験週間くらい,駒場は空けるべきではないのか? それができないなら,2年4学期は駒場と本郷を行ったり来たりするという制度を止めて欲しい。語学なんて1年半でいいじゃん。どうせ,役に立たせるには相当な自助努力が必要なんだから。
- ミーティングは,人口学のレポート課題を作っていたこともあって後半しか出られなかったが,1994年のAm. J. Clin. Nutr.に載った論文で,6人のボランティアに植物エストロゲンを食物から摂取させた場合の,月経周期の変化をみたものの紹介。細かいところが今ひとつわからないが,つっこめば面白くなる可能性はある話。もっとも,1994年には現象レベルでよかったのかもしれないが,今年だったらリジェクトされているだろう。著者たちはフォローアップしていないのだろうか?
- 帰りは終電。大宮から座れた。長野は星空。天気予報では雪だったんだけどなあ。
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