枕草子 (My Favorite Things)
【第432回】 多くは語るまい(2000年11月20日)
- 今回の長崎行きを一言でまとめると,やることがチグハグだったということになる。往路,13:10に研究室を出て御徒町まで歩き,品川で乗り換えたらちょうど出るところだった快速特急に乗れて,ノンストップで京急蒲田に着き,ちょうど待っていた各駅停車に乗り継いで羽田空港に着いたのは14:15だったか。長崎行きの飛行機が出るのは15:30なので1時間以上を待合室で潰すことになった。だから余裕があったので,荷物の中身くらい確認すれば良かったのだが,いつも使っている自転車の携帯用空気ボンベがバッグに入れっぱなしだったのを忘れていて,荷物検査で見つかって注意されてしまった。180円で買ったものだし残りがほとんどないので,没収されるのは一向に構わないが,うっかりしていて他人様に迷惑をかけるというのはとても気まずい。
- 長崎行きの飛行機は32番ゲートとかいうところからバスに乗って暫く行ったところから出発するのだった。30番台のゲートは他のゲートのあるフロアから階段を下りたところにあり,待合いの人々も心なしか活気に乏しいような気がして,何やら物寂しい感じがしてくるのだった。予定通りの時刻に出発したのだが,到着は5分ほど遅れたのだろうか,ともかく荷物を全部手荷物にしていて,最大限急いだにもかかわらず,17:45のバスにしか乗れなかった。このバスがどういうわけか(たぶん渋滞だったのか)トロトロ走るので,大橋というバス停に着いたのは18:30頃で,そこから歩いてパークサイドホテルに着いたのは18:45頃だったか。ちょうど階段から下りてきた人が熱帯医学関係の知人だったので話を聞いてみたら,ちょうどこの日パークサイドホテルで長崎大学の熱帯医学研究所とベトナムだったかフィリピンだったかの医学研究交流関係のパーティがあったのだそうだ。出ませんかと誘われたが(冗談だったかもしれないが),19:00頃からシンポジストで食事に行くという話だったのでお断りした。ところが,鍵が半回ししてさらにちょっと右に捻りながら押さないと開かないというものだったので,部屋に入るのもちょっと苦労したというのはさておき,部屋で待っていても連絡が来ないのだ。vaioを開いてファイルに記録しておいたメールの文章を読み直してみたらロビーに集合という話だったので,慌ててロビーに降りたが誰もいず,フロントで聞いてみても伝言もないのだった。もしかすると何か予定が変わったのかと思い,ロビーの公衆電話からメールを読もうとvaioを抱えて行き,テレフォンカードを買ってアクセスしたのだが,実はぼくのnewebのアカウントは日本テレコムの全国一律アクセス番号で,NTT料金はかからないため(クレジットカードから自動引き落とし),テレフォンカードはいらないのだった。無駄な買い物をしてしまったことになるが,これもチグハグさの一例であろう。暫く待ってみたが,どうも行き損ねたらしいと思われたので,近所のラーメン屋でラーメン定食500円を食べた。これがこの値段からは信じられないほど美味で,水もおいしかったので救われた。
- 部屋に戻って発表準備を続けたが,なんとなく気分が乗らず,というか集中できず,英文を足したり引いたりしているうちに午前2時になり,これはまずいと慌てて眠り,6:30に起きてシャワーを浴びて朝食をとった。朝食の時に会った他のシンポジストの方に聞いた話では,前夜は18:30頃出発してしまったのだそうだ。
- 朝8:50から夕方16:00までシンポジウムで,その後18:00前までrefreshmentという親睦会のようなもの。結局前夜まで原稿をいじくっていたのが悪い方にでて,緊張していたからということもあるが,自分の発表はどこまで喋ったかわからなくなったり時間超過したりという最悪の状況に陥った。Discussionはまともにできたし,ぼくが得るものは非常に多かったのだが,提供したものが少なかった(というか混乱していた)ので反省しきりである。親睦会のときにいろいろな方からお叱りをいただいたが,まだ見放されていないというのはありがたいことだ。今度こそ,口頭発表の方法をきちんと詰めて考えよう,と強く決意した。これをすぐ忘れるから,いつまでたっても口頭発表が進歩しないのだが,今回は,OHPやスライドの細部や印字の仕上がりを大切にしなくてはいけない,とか時間を守らねばいけない,とか,長く喋るようなことはOHPに予め書いておくべきである(今回は枚数制限があったわけではないのだし),とかいった具体的なアドバイスをくださった方もいて,つくづく口頭発表における準備の方法を考え直さなくてはいけないと思ったので,今度こそは忘れないと思う。
- その後,長崎大学に勤務している学部時代の同級生がフランス料理をおごってくれて,いろいろ楽しく話をした。ぼくがいろいろな方にお叱りをいただいたこともあり,慰めてくれるのは非常にありがたかったし,隠れ家のようなフランス料理店が実に美味で(ワインも実に美味だったのだが,飲み過ぎて足が立たなくなりそうだったのでちょっと残してしまったのが心残りというか,申し訳ない気分である),本当に嬉しかった。やはりもつべきものは友達とは良く言ったものだと思う。
- 朝は6:00にチェックアウトして大橋のバス停まで歩いた。空港行きのリムジンバスを待っていた間は寒く,バスの中は暑くて参った。しかも,新500円玉が機械では両替できないので,運転手さんに旧500円玉と替えて貰うのに手間取り,後の人に迷惑をかけてしまった。今度の荷物検査には何の問題もなかったが,その後折角待合いロビーに羽田空港から京急・JR乗り継ぎの切符が買える自販機があったのに,10000円札しか手元になくて使えなかった,とか,羽田に着いて紙袋にANAの通販カタログと,今朝ホテルで貰った新聞をつっこんだら,袋が破れてしまった,とか,ダメダメな状態が続くのだった。羽田着は予定時刻より10分も早く,たぶんここで走れば9:45発の京急蒲田行き各駅停車に間に合ったのだと思うが袋を気にしながら歩いていたら,タッチの差で各駅停車は出てしまった後だった。成田空港行きの快速特急が9:55に出たので,品川に着いたのが10:12頃。すぐに山手線に乗れば良かったのだが,それを2本やり過ごして10:22発京浜東北線の快速を待ったのが失敗だった。結局快速は一度も先行した山手線を抜くことなく上野に着いてしまった。それが10:39だったので,ホームを駆け抜けて階段を駆け下り,新幹線改札を飛ぶようにすり抜け,エスカレータをも駆け下りて,やっとぎりぎりで上野発10:42の臨時列車あさま543号に飛び乗ったところである。今回のチグハグさの総仕上げといえようか。
- いつもはこんなにチグハグではないと思うのだが,まあ多くは語るまい。さてミーティング準備でもするかと思っている今,新幹線は軽井沢に着いたところである。反省するためとはいえ,こんなメモなど書いていないでとっととミーティング準備をしてれば良かったのかもしれない。やはりチグハグである。
- 娘の迎えは12:45頃になり,延長保育料は80円で済んだ。娘とともに帰宅後,米をといで炊くとか,洗濯物を取り込むとか。息子の帰宅後,手足にまとわりついてくる子どもたちを抱えたりしながら夕食の準備,といっても,妻が作っておいてくれたカレーを温めてさっき炊いたご飯にかけただけだが。夜は風呂を沸かして子どもたちと入浴し,残り湯を使って洗濯するよう洗濯機のスイッチをいれて就寝。息子の運動着など,洗っておかないと月曜に間に合わないのだ。日曜日,朝飯は納豆かけご飯で済ませ,脱水が終わっている洗濯物を干し,9:30から息子に宿題をさせた。宿題に限らず,何かをさせるなんてことはできればやりたくないのだが,まあ1年生のうちくらいは監督するのも必要かもしれない。息子が遊びに行った後,娘のパズル作りの相手などしながら家事を進め,昼過ぎにラーメンを作って昼食とした。これではあまりに食事に手を抜きすぎているような気がしたので,冷凍庫に見つけた骨付き鶏肉を冷蔵庫に移して解凍しておいて,昼過ぎから娘を連れて「ひまわり公園」という交通公園に行った帰りにイトーヨーカドーでクリームシチューの素を買い,晩飯はクリームシチューとご飯にした。妻は20:15頃研究会から帰ってきたのだが,これから交替して東京に行っても疲れていて何もできなそうな気がしたので,朝早く出かけることにした。結果,翌朝目が覚めたら5:00を過ぎていて,いろいろしていたら始発には間に合わない時間になってしまい,6:43発あさま502号に乗っている。
- 多くは語るまいとか言いながら,こんなに書いていては格好悪いなあ。
- ミーティングのハンドアウトを作る際のメモ。pdfファイルから直接切り貼りをするには,Photoshopを使うと一番きれいにできる。まずAcrobatで「抽出」を使って図表の載っているページを1ページずつ切り出し,それをPhotoshopに読み込み(ラスタライズの解像度を聞いてくるので300 dpiにした),必要な部分を選んでトリミングしてからtiffとして保存すればよい。プリントしてからスキャンするのと美しさはどっこいだが,直接法の方が手軽だ。
- そういえば,Gatewayからカラープリンタへの出力設定,ありがとう>萩原君。しかし,どうしてドライバファイルがおかしくなっていたのだろうか?
- ミーティング直前に昼食をとった。渡辺助教授と梅崎助手は海外出張中で,大塚教授も会議で席を外したために,司会をしながら発表もすることになった。ぼくの前の発表は,台湾の高濃度の砒素が検出される井戸水がある地域とそれに隣接するコントロール地域で,blackfoot diseaseの患者の尿と髪の毛と爪をサンプルとしていろいろな化学形態の砒素を測定し,無機の砒素が高いという話だったようだが,不明確な点が多かった。Summaryにはこの20年間,井戸水の使用は止めているのに生体試料に砒素が出つづけているとか書いてあるのに,本文にはその記載がないようだし,毛髪サンプルと爪サンプルでのMMAAとTMAが検出限界以下だったというが検出限界が明記されていないようだし,毛髪サンプルと爪サンプルの無機砒素が相関していたからそれらは曝露指標として使えるとかいう論理展開がされているが,たいした相関ではないし,どちらもsurrogateなのだから論理的に弱いし,等々,腑に落ちない点が多かった。
- ぼくが紹介したのは先日ここに書いたTuljapurkar論文だが,Himes論文のパラメータ推計方法がダミー変数をたくさん使った重回帰分析なのに対して,Tuljapurkar論文は特異値分解を使っていた。確率論的な予測の正規乱数の分散が定数なのか,それとも個々の国の年次変化の平均値zの標準誤差かなにかを使っているのかも本文に書かれていなかったが,それ以外は概ねクリアに説明できたと思う。もしTuljapurkarたちの予測が正しければ,日本人の平均寿命は2050年には90歳という途轍もない高水準に達することになり,老人保健施設や介護保険などの福祉行政は大きな問題に直面することになるのだが,果たして行政はそこまで対応する能力(あるいは視点)をもっているのだろうか,と考えると不安を禁じ得ない。
- 帰りは21:30発あさま535号。大雨のため,上野駅まで歩いたらコートがずぶぬれになった。上野駅までは偶々萩原君と同道したので,考えてみればタクシーに乗れば良かったのかもしれない。タクシーに乗れば息子の小学校のバザーに出す文庫本も持ち帰れたし,などと悔やんでみても後の祭りである。どうもこのところ頭の働きが鈍くなっているような気がしないでもない。老化には早いと思うのだが。
- 帰って食事をしながらテレビをつけたら,野党席に水をかけたとか,100%勝てるとか賛成するとか公言していたのに土壇場になって側近の「大将なんだから自重して」という褒め殺しのようなやり口に折れて会議を欠席した(要は派閥の仲間の動向が第一で,選挙民のことなど二の次なのが露呈されたってことだ)とか,国会が例によってくだらん,やくざの抗争まがいの雰囲気になっていた。重要法案を通さなくてはいけないから今は内閣不信任など問うべきではないなんていう与党側の主張も(だいたい,重要法案というなら闇雲に成立を急ぐのではなくて議論を尽くして欲しいものだが),本末転倒というか,三権分立の理念がわかっていない小学生以前の議論だと思う。立法の都合で行政に信を問えないというなら,誰が行政に信を問うのか? 行政は毎日行われているわけだから,国民の75%が支持しないという内閣は即刻総辞職しなくてはいけないという加藤氏の主張は,まったく正しかったのに。
- 国民の代表がやる会議なんだから,会議の見本を見せてくれないかな。叶わぬ夢なのだろうか?
- 語りすぎ。
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