オセアニア学 (Oceanic Studies)
このページはまだ作成途中です。This page is mostly under construction.
Sorry, this page is mostly written in Japanese.
オセアニアを対象とした地域研究がオセアニア学である。オセアニアに生きる人々を理解しようとする上で,周辺住民や,歴史性,地域特異性を抜きにしては片手落ちなので,ヒト個体群の生存の包括的理解を目指す人類生態学は,地域研究的な側面をも当然もつのである。
アフリカ研究もそうだが,地域研究の宿命としてmulti-disciplinaryであり,内容はきわめて多岐にわたり,概観するのさえ困難である。日本オセアニア学会が15周年記念事業として出した「講座オセアニア」3部作(東京大学出版会)を参照していただくと,日本におけるオセアニア学の現在を概観できるようになっているが,それとて海外の研究まで網羅したわけではない。
1. オセアニアの定義
上記日本オセアニア学会の3部作の「島嶼に生きる」の「はしがき」の説明がすっきりしているので紹介しておく。
古代ギリシャでは,地球は平らで大地のまわりに大洋が広がり,そのはるか東では海も切れてしまい,あとは魑魅魍魎が棲む「オケアノス」の世界が広がっていると信じられていた。オケアノスにも人間が居住していることが西欧社会に知られるようになったのは,せいぜい500年ほど前のことであり,オセアニアという語は「人間の住むオケアノス」という意味で作られた。現在,地理学用語として用いられるオセアニアは,ウォーレス線の東に位置するオーストラリア,メラネシア,ミクロネシア,ポリネシアをさしている。居住する人びとの系譜をたどれば,オセアニアはアジアの島嶼部とは区分できず連続した空間でもある。
ここでポリネシアと呼ばれるのが,ハワイ諸島,イースター島,ニュージーランドを結ぶ,途轍もなく広い三角形の地域であり,小さな島々が点在していて,私見ではもっともオセアニアらしいオセアニアである。地球上に人類が拡散していって,最後に到達した地域でもある。なお,日本オセアニア学会ではもう少し広い範囲もオセアニア研究に含めていいことになっていて,日本の伊豆七島の研究が報告されたこともあるし,インドネシア,フィリピンなどアジア島嶼部はもちろんのこと,インドネシア起源の人々が移住した海洋世界だからということでマダガスカルの研究も入れていいという話もあった。
2. オセアニア学のいろいろ
- 考古学的アプローチ: これはラピタ式土器の研究が代表的と思う。(未完)
- 言語学的アプローチ: オセアニアに住む人々は,言語学的にはオーストロネシア語を話す人々(AN)と非オーストロネシア語を話す人々(NAN),及びオーストラリア諸語を話す人々に分けられる。
オーストロネシア語は,古くはマラヨ・ポリネシア語と呼ばれていたもので,ポリネシア,ミクロネシア,ニューギニア島の北海岸,メラネシア島嶼部の他,インドネシア,フィリピン,台湾,マレー半島,マダガスカルの言葉を含み,これだけ広い範囲に分布しているにも関わらず,共通性が高い。これは,これらの人々が,約4000年前に大航海をしてこれらの地域に広がっていき,ラピタ文化複合を作り上げた人たちの末裔であることを示している。
他の2つのグループは,人口規模の小さいたくさんの言語族からなり,言語間の多様性が大きい。これはこの人たちがかなり古くから互いに隔離されて生存してきたことを示唆する。まとめてオーストラロ・メラネシアンと呼ばれるが,オーストラリア原住民と,ニューギニア島の大部分の住民を含む。彼らは5万年以上前に移住してきたことが,遺伝的な研究と考古学的な研究から明らかになっている。
- 地理学的アプローチ: 火山島と造礁サンゴ島と陸島の違いとか。(未完)
- 政治学的アプローチ: MIRAB社会とかの話。(未完)
- 遺伝学的アプローチ: 集団遺伝学による集団間の遺伝的近縁度とか。KirkやSearjeantsonの研究の紹介。(未完)
- 医学的アプローチ: オセアニア特有の問題いろいろ。クールーなど。(未完)
- 包括的アプローチ: 最終的にはここを目指しているわけである。異なる分野の何人かのチームで,同じ地域を研究することになるが,有機的に関連づけたまとめは難しい。Bayliss-SmithチームとかFriedlaenderチームとかOhtsukaチームとかの研究例がある。
推薦文献
- 大塚柳太郎,片山一道,印東道子[編](1993)オセアニア(1)島嶼に生きる,東京大学出版会,3090円: ぼくも1章担当しているが,この巻は,どちらかといえば自然科学的な内容が多い。
- 須藤健一,秋道智彌,崎山 理[編](1993)オセアニア(2)伝統に生きる,東京大学出版会,3090円: 文化人類学,言語学がメイン。
- 清水昭俊,吉岡政徳[編](1993)オセアニア(3)近代に生きる,東京大学出版会,3090円: これは社会学,政治学など,今日のオセアニアに生きる人々の実像に迫ろうとするものである。
- 大塚柳太郎[編](1995)モンゴロイドの地球[2]南太平洋との出会い,東京大学出版会,2600円+税: 数年前に赤澤威さんを代表として行われた科研費重点領域研究「先史モンゴロイド」の最終報告の一環として出されたもの。上に述べたように,アジアとオセアニアの境界はないようなものであり,少なくともオーストロネシアンについてはモンゴロイドのオセアニアへの拡散に間違いないので,オセアニアの巻もでているわけである。大掴みにするのに向いている。
研究と教育のページに戻る
Back to Research and Education
(C) Minato Nakazawa, 1998. このページの最終更新は,
に行われました。
このテキストを著作権者の許可なく転載することを禁じます(出典を明記した引用は可)。ご意見、ご質問は、著者まで電子メールでお願いします。