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個別メモ
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【第168回】 日本生態学会関東地区会(2004年12月12日)
- 2日目となると妙にハイになってしまうが,ほぼ徹夜。9:30に研究室を出て前橋へ。高崎から大宮までの新幹線は無茶苦茶混んでいて立っているのも辛く,眠ろうという目論見がもろくも潰えた。
- 東京駅から横浜経由で三ツ沢上町下車,15分歩いて横浜国立大学に着いた。今日の会の内容は生態学会の会報(?)に載せるために1月末くらいに締め切りで原稿化しなくてはいけないと聞く。ちょうど形にしておきたいなあと思っていたところだったので,これはちょうどいい。自分のところ以外は,全部エディタにメモを打ち込みながら聞いていたので,ほぼ再現できるのだが,まあ,ちゃんと会報で出るなら,そちらを参照してもらった方がいいと思うので,ここでは概要と気になったことのメモだけ公開しておこう(発表のために読んだ本の書評も書きたいところだが,それはまた後日。書評といえば,かつて東大のサーバに作った書評掲示板は,このところずっと放置−見てはいるけれど書いてないという意味で−しているのだが,いまのところ非常勤講師をしているので稼動させておいて貰えているけれども永遠に置いていていいとも思えないので,何とかしなくてはならないだろうなぁ)。
- 13:00に,日本生態学会関東地区会として,「日本の人口問題−保全生態学からの提言−」シンポジウムが始まった。開始時の聴衆は50人くらいだったか。まずは小池文人さんの趣旨説明から。死亡を計算していないのであれだと減少速度が急すぎると思うのだが,まあ概念図みたいなものだし,趣旨としてはわかるからいいのだろう。次は長谷川眞理子さんの殺人を進化心理学的に分析した話。いろいろ知らなかったことがあって,とくに現在の日本は,世界中他には見られないのだけれども若い男性による殺人が少ない(年齢別殺人者出現割合のパタンをみると中高年の方がやや上がっているくらいで,ほぼフラットに近い)という話は面白かった。2つ気になったことがあって,1つは分析データには戦争が入っていないということだが,パプアニューギニアやソロモン諸島の首狩り時代のことを考えたら,葛藤解決の手段としての戦争と殺人の線引きはしにくいと思った。もう1つは,たしかHeadland TのフィリピンのAgtaの論文で,酒に酔って中年男性が殺人をすることが多くて人口減少しているというのがあったと思うが,あの集団では殺人者出現割合のピークは若年でなくて,中高年にあったのではなかろうか。とすると,理性を失わせる道具としての酒(を飲む機会の多さ)(とアルコール耐性)が殺人についてかなり影響しそうな気がするから,裁判記録を分析するならそこも調べたら面白いんじゃないだろうか。そこまでしなくても,季節性とか分析したら,忘年会シーズンと花見・送別会・歓迎会シーズンに殺人のピークがあるかもしれないと想像されるんだが,どうだろう。酒を飲む行動って進化心理学的にはどう説明されているんだろう?
- 2人目の発表者は神戸大でCOE研究員をされている田中貴宏さんで,横浜市と川崎市の区別統計データを使って,主成分得点として地域自然度と精神不健康度と身体不健康度を出して,自然度と不健康度の間に負の相関があったという地域相関研究。たしかにデータとしては負の相関があるようにみえるしきれいに整理されていて面白かったのだが,解釈はもっと慎重にしたほうがいいんじゃないかと強く思われたので,手を上げてコメントしてしまった。最終的な目的に対して分析枠組みと統計手法が合っていないような気がしたことはともかくとして,精神保健相談件数を地域人口で割った値を精神不健康度を計算する変数の1つにするのはまずいんじゃなかろうか。熱心に精神保健活動をしていて窓口が利用しやすい地域ほど相談件数が多いというのは,公衆衛生的な常識からするとありがちなことなので(キャンペーンをすると大抵なんでも報告件数が激増するから),不健康度を示すというよりは,保健行政活動のアクティビティを示すことに他ならず,とすると都市部で高いのは当たり前になってしまう。じゃあどうするかといったら,実地に調査をするしかないんだろう,では困るとすると,せめて質問紙調査でCES-Dみたいなものをやった報告書とか論文がいくつかあるだろうから,メタアナリシスをしたらいいかも? でも全部の区については集まらないか?
- 3人目は自分で,このところずっとやっていたレビューワークなので別に新味はないのだが,これだけいろいろな分野で言われている少子化に関する仮説をまとめたものは他にないように思うので,聞いてくださった方は損はしなかったんじゃないかと思う(趣旨に添うものだったかどうかは微妙だが,関連する要因を全部考えるというのは生態学的発想だからということで許していただこう)。嶋田正和さんからのコメントに対して,数学モデルとして整理するとうまく整理できるかもしれないけれどできていません,と答えたら(もしかすると後で尋ねられたのは,もっともgeneralなモデルを先に作っておいて,このモデルはここを特殊化したという形で整理するといいというヒントだったのかもしれないけれど,このときは気づかなかった),長谷川眞理子さんが生活史戦略の視点で整理したらうまく整理できるんではという素晴らしいsuggestionをくださったのに,コメントの別の部分に対して返事をしてしまって議論が違う方向に行ってしまったのだけれど,家に帰ってから思い出してみると,生活史戦略の視点でこれらの仮説を整理しなおすというのは,実にうまいやり方だと思われたので,原稿では最後にそういうまとめをつけてみようと思う(数学モデルとしてまとめ直すのは難しいけれども,生活史戦略で整理することは比較的容易にできそうな気がする)。
- 他の議論も面白かったし,交通費と謝金までいただいて,こんなに自分のためにもなってしまっては申し訳ない気がするのだが,大変にありがたい会であった。主催してくださった小池さんと,この会のスピーカーとしてぼくを小池さんにご紹介くださった松田裕之さんには心より御礼申し上げたい(松田さんから,緊張していたのかとご心配いただいたけれども,緊張していたというよりも,ともかく疲れ果てていて体力の限界に近かった)。いろいろな方と名刺交換してから帰途に着いたわけだが,バスが渋滞で遅れたので東海道本線で乗ろうと思っていた電車には乗れなかったり,けれども東京駅で信号故障のために新幹線が何本も詰まっていて,発車予定時刻を10分以上過ぎていたのに,当初乗ろうと思っていた,あさま527号がまだ停車中だったり,とまったく予定通りにはいかない復路であった。新幹線は異様に混んでいたが,何とか座れたので,佐久平までずっと眠って過ごし,佐久平から長野までもぼーっとしていた。
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