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【第819回】 改稿作業をしながらDDTについて考える(2007年6月5日)
- 5:30起床。娘は日曜に一日中練習しただけでなく,昨日もこども原始村のイベントで飯盒炊爨などがあったので筋肉痛が残っていて,起きたけれども気合いが入らない様子。それではあまり朝練の効果がないので小学校には行かず,庭で素振りをした。まあ小学生にしてはいいスイングをしていると思うんだが,もう少し腰の回転をうまく使えると飛距離が伸びるんだがな。強打者が溜めたエネルギーを一気に放出する,あのバシュッという感じのスイングができる小学生がいたら凄いと思う。どう指導したらいいのかわからないが,とりあえず下半身強化は必要だろうから,やはり走りこみか?
- 出発にちょっと手間取ったので,往路あさま512号。今日も昨日の続きで改稿作業をする予定。
- 久々に更新されたのに文句をつけるのも何だが,今日の中西準子さんの雑感には賛同しかねる。Environmental Health Perspectivesに2002年に載ったレビュー論文(もっと新しいのを探したんだが2004年に出たサルディーニャ島でのDDT作業者の疫学研究1つしか見つからなかったし,当該研究は影響を過小評価する可能性があると思われた)には,「IARCは2Bと分類しているけれどもその後発がん性が高まるという疫学研究がいくつもある」という内容が書かれていたので,毒性に関しても「DDT使用と人健康影響との間にはほぼ関係がないことが分かってきた」というのは(たとえWHO文書の引用だとしても),断定的に書き過ぎではないかと思う。一般の方は,オーマイニュースに載っている中西さんとは正反対の意見も参照すべきだろう。
- 毒性の話を別にしても,少なくともソロモン諸島の主要ハマダラカであり屋内繋留性がなく早晩屋外吸血性という特性をもつAn. farauti No.1にはIRSはまったく効かない(当然のことだが)。殺虫剤含浸蚊帳の方がまだ有効である。それに,DDTはあまり効かなくなったから使われなくなって,原虫の薬剤耐性の問題と併せて,WHOの戦略が根絶から制御へと変化したというのがマラリア対策の大筋の流れだと思う。そこを外すのはまずい。また,中西さんの文中,「1980年代初期までWHOは熱心にIRSの普及に努めてきた」というのが本当だとすると,中西さんが示している図で,東南アジアのマラリアが1966-1976年に激増しているのは,時期的に言ってDDTを使わなくなったこととは関係ないことになる。症例報告数のデータということは,保健医療統計が整備されてきたことを反映しているだけという可能性は少なくない。
- 仮にDDTを使うにしても有効な地域に絞って丁寧に戦略を練って使うべきだし,これまでも全面禁止だったわけではなくてIRSが有効なアフリカでは使われてきたはずだから,要はこれまで通りということだ。昨年9月のWHO発表が,オーマイニュースの記事が指摘するように,古知新博士がぶち上げたプロパガンダであるという可能性は否定できない。また,熱帯熱マラリアの罹患数が年間5億1500万というのは(三日熱や四日熱も併せるともっと多いということ!)Snow RWらの2005年のNature論文で初めて言われたことで,WHOは2000年に似たような
推計推定値を出しているが,推計推定方法が明らかに過大(少なくともアフリカ以外では)という批判もあり,マラリア数理モデルを研究していた自分の実感からしても,信頼性はやや疑問である。中西さん,もう少し慎重に書いた方がいいんじゃないだろうか。(「推計」は,人口学でpopulation estimationするときに伝統的に使われる用語なので,つい使ってしまったが,疫学では使わないので訂正した>西浦さんのツッコミに感謝)
- 『Rによる保健医療データ解析演習(仮)』の改訂と索引付けは今日も1章分しか進まなかったが2ページ増えた。Gearyの正規性の検定のコードが,これまで片側検定になっていたことが発覚した。考えてみれば当然,両側検定でなければならない。慌てて修正した。
- 復路あさま551+553号で長野に着き,自転車で家に帰った直後,土砂降りとなった。終電じゃなくてよかった。
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