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個別メモ
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【第1021回】 オセアニア学会一日目(2008年3月27日)
- 7:00,予定より1時間早く大阪バスターミナルに着いた。最寄りのJRの駅は難波駅で,奈良線の終点らしかった。1駅だけ乗って大阪環状線に乗り換え,大阪から神戸線に乗り換えて明石に着いた。明石銀座はずらっと魚屋が並んでいて活気があったが,ファミレスのようなものはなく,喫茶店でモーニングを食べた。その後明石港まで歩いて昼の弁当を買ってから,たこフェリーに乗って淡路島に向かった。到着した港のすぐ隣がオセアニア学会の会場で,とても便利だと思った。会場は保健センターなのだが非常に新しくきれいな建物で,会議室もちょうどいい規模だった。床の電源が使えないという難点はあったが,それくらいは我慢しよう。
- 弁当を食べて暫くすると今年のオセアニア学会年次大会が始まった。最初の演題はPNGアンデップの話だった。以下メモ。//砂金採りがかなり早く入った(1930年代)。教育水準が高く金銭的にも豊か。開発による森林伐採もあったが,その後WWFが入って自然保護の大切さを説いた。アンデップはこれらに積極的にかかわった。人材と資金があったので可能だった。今,彼らが取り組んでいるのは,WMA (Wildlife Management Area)。保護区申請の段階で住民の意思によることが必須。区域も規則も住民主導で決める制度。WMAではコンセンサス形成を徹底的に行っていた。保護区の境界線を引くことの問題:一本の線で「内」と「外」を分けるのは無理。土地利用を巡って隣の民族(マナンブなど)と争いが起こる。WMAによって,土地意識が変化した。「土地を利用する」から「土地を所有する」へ。習慣的にはクランのメンバーとその親族が土地を利用している。けれどもWMA設定は土地所有者を必要とする。住民意識の中で,計画者と一般の人との間には温度差がある。しかし会議をすると全会一致でWMA設定となる。理由は,資源を守るため(とくに他の民族や企業から資源を守るため)。住民は戦術的にWMAという制度を利用している。//うーん,コモンズではないのか? 実際の生物多様性はどうなったのか?
- 質疑:マライタの場合も線で所有でなく,点で(パッチ状に)所有が決まっていて,線引きは難しい,というコメント。まあそうだろう。どの動物を守るか?→(食料として必要以上の動物捕獲禁止,オオギバト保護,魚の網目は大きく,魚毒漁禁止,必要以上の森林伐採禁止//これは,野生生物保護としてはとくに有効なものではないと思うが……)金は別。自然保護区を作ることで自分たちの土地を明確に示すため。
- 2つ目の演題は「月経小屋の消滅:パプアニューギニア・アベラム社会の居住空間の分析から」PNGで女性研究者が調査することだけでも凄い。家屋様式と身の置き所の関連という話。アベラム語には夫婦を中心とする「家族」単位が反映された空間を表す言葉がない。各夫婦に属する建物のまとまりが認められるがそれを総称する言葉がない。調理・食事と女性と子供の就寝用の建物(ランガ),男性の休息と就寝の場所(クワンガ:過去の民族誌に登場しない。新しい?),月経小屋(カルバニィガ)がある。性の禁忌として,9月〜3月の儀礼用ヤムイモ栽培期間には,性行為をもつとヤムイモが大きく育たないという話があるために年長の男性は熱心に禁忌を守っていた。男性も4月から8月はランガで休むことはある。月経中の女性はランガに入ってはいけないし,料理をしてはいけない,広場に近づいてはいけないなど,様々な禁忌があった。2000年代になると,就寝の場所がクワンガに集中しつつある。クワンガには部屋割りがある。月経中の女性はヤム以外にもすべての畑と貯蔵庫,ランガには入ってはいけないが,クワンガには入れる(禁忌を維持したままで)。ヤムの贈与儀礼が廃れた。ヤム栽培期間にも夫婦が就寝をともにするケースが出てきた。キリスト教の影響? しかし,キリスト教と言ったって宗派によっていろいろ違うと思うが。
- 3つ目の演題は自分なので省略。その後の演題もメモは省略。それにしても今回のように個々の発表の持ち時間が30分あると,質疑応答にも余裕が取れていい。
- 夜の宴会では飲みすぎ食べすぎ。2度目の風呂に入った後は疲れ果てて眠ってしまった。後で聞いたところでは,散会は4:00だったとか。それにしてもタフな人たちだ。
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