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個別メモ
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【第1072回】 また雨(2008年6月3日)
- 5:30起床。雨なので×。6:30に家を出て長野電鉄の駅に向かったのだが,ちょうど上り電車が出てしまったところで20分待ちになってしまった上,小雨になってきたので,いったん家に帰って自転車で長野駅へ。往路あさま510号。あと3分早く家を出れば506号に乗れたんだが……。軽井沢では土砂降り。これはもう梅雨なのか?
- 実は東海・関東甲信・近畿は昨日梅雨入りしたらしい。この天気ではクールビズどころではないな。
- Demographic ResearchからのAlertで,科学論文誌における統計学的有意性の書き方についてのReflexionが載っている(Hoem J (2008) The reporting of statistical significance in scientific journals. Demographic Research, 18-15: 437-442.)というので,久々にDemographic Researchのサイトを見たら,5月末に出た号は『新人口論』のCohenが世界人口について書いた論文だった。面白そうだ。HoemのReflexion(日本語で言うと,省察か?)は,(1)経験的な発見の科学的重要性は統計学的有意性ではなくて,その発見がどれだけ理論の発展に貢献するかに依存する,(2)統計学的有意性の尺度は誤解を生むかもしれない,(3)標準的なp値は統計学的な有意性の指標としては精度が不十分な場合もある(*の数で示しては内容が貧弱になる),(4)カテゴリ変数を独立変数とした回帰において,どのカテゴリを基準に取るかは統計ソフトに委ねず分析者の関心に基づいて適切に決めるべき,(5)サンプルサイズが小さいときはp値が大きくなりやすいし,サンプルサイズが大きいときはp値が小さくなりやすいので,サンプルサイズによらず常に有意水準を0.05にしてはいけない,と主張し,Rothmanも同じようなことをEpidemiologyで言っているぞ,というもの。内容的には当たり前といえば当たり前のことなんだが,Demographic Researchがこれを載せた意味は小さくないかもしれない。
- 疫学勉強会はスクリーニングの続きで,測定値が連続量のときにどうやってカットオフを決めるべきかという話。テクニカルにROCに行ってしまわずに,偽陽性と偽陰性の相対的な重要性に基づいて決めるべきという主張。なるほどとは思うが,かなり政策的な意思決定にならざるを得ない点に注意すべきであろう。スクリーニングは確かにそういうものだが。
- 最終バスで前橋に出て,復路あさま555号。池内了『疑似科学入門』岩波新書,ISBN 978-4-00-431131-7(Amazon | bk1 | e-hon)を読了。疑似科学を第一種(オカルト・超常現象系。血液型性格判断など),第二種(科学のフリをした非科学。水伝など),第三種(複雑系に対する極論)に区分し,それぞれ問題の所在を整理し,対処を提案するもの。あまり説明が丁寧ではないところも多く,一般の人にとっての「入門」書としての適格性には疑問符がつくところもある(ただし,巻末に文献リストも載っているので,それを読めば補完できるからいいのかもしれない)。けれども,複雑系で簡単には解の出ない問題(環境問題とか地震学とか)に対する全肯定または全否定の極論を第三種疑似科学として位置づけたところが本書の特徴であり,その点こそが,著者自身が疑似科学への対処を試みたという意味で,本書に「入門」というタイトルをつけさせたらしい(あとがきに,そんなようなことが書かれていたと記憶している)。武田邦彦本とか池田清彦・養老孟司『ほんとうの環境問題』新潮社,ISBN 978-4-10-423104-1(Amazon | bk1 | e-hon)を想定しているように思われる批判として,部分的には正しいことを言っていても,それがさも問題の全体であるかのように言い切ってしまう態度は疑似科学だと論じていて共感した。疫学の重要性を論じているのも良いし,第三種疑似科学への対処としては,簡単に結論を出さずに,事実に基づいて,常に見直しをしながらフェイルセーフな対策をとっていくことしかないというような主張をしていて,これも同意する。池内さんはきっと,川端君のルポ『クジラを捕って,考えた』『動物園にできること』『オランウータンに森を返す日』『緑のマンハッタン』などを読んだら高く評価するだろう。そういうわけで,本書はいい本なのだが,いくつか気になった点もあった。まず,疫学の説明におけるconfoundingsの訳として「混乱要因」と書かれていると思うのだが,「攪乱要因」または「交絡要因」という専門用語があるので,その正確な定義とともに用語説明をしておいてほしかった。次に「二重盲見法」は,「二重盲検法」の変換ミスである。他にもいくつかあったが,面倒なのでとりあえず今日はここまで。
- 家に帰ってみると,来月東京で行われる結婚披露パーティの招待状がオランダから届いていた。新郎新婦とも日本人なんだが,数式が載っていて英語で説明が付されていたので,実に「らしい」といえば「らしい」のだけれども笑ってしまった。
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