Top
個別メモ
Latest update on 2012年3月5日 (月) at 10:54:46.
【第1390回】 申請書完成(2009年8月3日)
- 土曜は練習,日曜は大会(7-0で初戦敗退だったが)で,帰宅後にBSデジタルをつけたらジャパンカップ決勝で日米戦をやっていたので日本代表を応援したりと(西山のヒット1本に抑えられてしまったが,あれだけ上背のある投手が豪快なフォームで投げ込んできたら打ちにくかろう),ソフトボールに忙しい週末だった。土日どちらも途中で雨に降られて辛かった。洗濯とか握り飯作りとか家事とか娘の夏の宿題の自由研究の指導とかも(水中の小さな生き物という単元をやっていることから,いろいろな微生物を観察するというテーマにして,USB顕微鏡でいろいろ見ている。なかなかピント合わせもスライド準備も難しいのだが,コケの中にクマムシらしきやつがいたのは嬉しかった)忙しかった。土曜の夜にはびんずるという長野市のお祭りがあって花火が上がっていたが,とてもそこに行こうなんて余力はなかった。
- 月曜は6:10起床。またもや雨だったので自転車を諦め,長野電鉄で長野駅へ。往路あさま510号は意外に混んでいた。今日は申請書を完成させたい。群馬は晴れていたので,新前橋から自転車で大学に行くだけで汗だくになった。着替えを忘れたのが悔やまれる。
- /.Jのスレッドで,弱毒化原虫を蚊に媒介させる実験があった。まだNEJMの原文は読んでいないが,何か新しい工夫があったのだろうか。これまで蚊に取り込ませるワクチンとしてはtransmission blocking vaccineが主流だったと思うが,これはヒトに打っておいて,蚊が生殖母体を吸入したとしても,それと一緒に取り込まれたtransmission blocking vaccineが,生殖母体が接合してオオキネートになるのを阻止したり,あるいはオオキネートが蚊のmidgutに付着してオオシストとなって成長するのを防いだり,またあるいはオオシストから出てきたスポロゾイトが蚊の唾液腺に蓄積されるのを防いだりすることによって,原虫の伝播を阻止するのが目的であった。しかしたぶん今回のものは,吸血されたヒトに免疫をつけるという話らしいので,弱毒化原虫の生殖母体を作って,それを蚊に吸わせ,蚊の体内で接合してオオキネート,オオシスト,スポロゾイトとなって唾液腺に溜まった段階で,その蚊にヒトの血を吸わせ,ヒトの体内に弱毒スポロゾイトが入り込んで肝臓でも増えて(肝臓に入り込む前にトラップするような免疫をつけるのは時間が短すぎて,余程大量にスポロゾイトを注入しないとたぶん不可能だと思うので)赤血球に入り込む段階で赤血球に入り込めずに免疫系にトラップされるようにするというようなメカニズムなのだろう。これはかなり難しい「弱毒化」だと思う。メロゾイトが赤血球に入り込めないようにするという変異をピンポイントで起こすことが可能なのだろうか? それにしても,人体実験で免疫がついたことを確認したのだとすると,いまだにそれで倫理審査を通ったことが驚異だ。まあ,想像するだけでは埒があかないので,原文を読んでみなくてはなるまい。
- で,原文(Roestenberg M, McCall M, et al. 2009: "Protection against a malaria challenge by sporozoite inoculation." NEJM, 361: 468-77.)を読んでみたらタレコミが間違っていて,(実は/.Jでも既にy.tambeさんが指摘されていて,ストーリー自体が訂正されていたが)「弱毒化」ではなく,普通のP.f.のクロロキン(CQ)感受性があるNF54という系統をそのまま使い,但し3ヶ月はCQを服用しつつ吸血させ(実験群はNF54をもつ蚊に,対照群はマラリア原虫をもたない蚊に,但し蚊の感染状態は蚊を扱うテクニシャンしか知らず,ボランティアは自分がどちらの群に割り当てられたかはわからないようにして),その後,どちらのボランティアもCQ服用を止めてNF54をもつ蚊に吸血させてみると,実験群では原虫濃度が上がらなかったが,対照群では原虫濃度が上がった,というストーリーだった。それならそれほど不思議ではない。流行地では何度もマラリア原虫に感染するとだんだん免疫ができていくことは昔から指摘されてきたので,この実験のキモは月1回ずつ3回の感染で,CQによって赤血球に入ったところで原虫を叩いて(多くの抗マラリア薬はこの段階でしか効かない)症状はマイルドにしか出ないようにしながらも,同じ系統の原虫に対しては免疫がつくことを実証したという点にあるのだろう。素直に考えると,流行地に行ったときは,最初の3ヶ月だけクロロキンを予防内服しながら,蚊に普通に吸血されておけば免疫がついて,クロロキンをやめても大丈夫ということになる。しかし,もちろん,熱帯熱マラリア流行地では複数の系統が同時に流行している(multistrain)ことが多いわけだから,この手はそのまま使えないだろうし,(y.tambeさんも指摘されているように)クロロキン耐性原虫が広まっているわけだからメフロキンとかアーテミシニンとかコアーテムとかで同じようなことが可能なのかを調べなくてはいけないし,そもそもが他の系統の原虫でも成り立つのかはわからないわけだから,現実のマラリア対策がこれで解決というわけにはいかない。なお,倫理面については,この実験はオランダのRadboud大学で行われたもので,てっきり危険を伴う(ように思われる)人体実験だからどこかの軍で行われたのかと思ったが,本当にボランティア対象だったようなのは意外だった。
- 11:00から実験ミーティングがあり,その後教室ミーティングもあった。来週はほぼ夏休みモードという感じ?
- 今日はR実践活用勉強会でオッズ比を扱わねばならないのだが,英文テキストを探していて,ちょうど良さそうなものが見つかった。これは,BMJのStatistics Notes(このリンク先はタフツ大学のDallal GEが作成したもので,同氏が書かれた"The Little Handbook of Statistical Practice"というオンラインテキストの最後に紹介されている)というシリーズの中に入っていて,著者らは,オッズ比の解釈の難しい場合とかロジスティック回帰についてもその枠でレビューするよ,と最後に述べているのだけれども,まだ載っていないようなのが残念だった。
- 17:30から18:20まででR実践活用勉強会は無事に終わった。解析の内容よりも,集計済みのクロス表から個人データを再構成するスクリプトの方が難しかったかも。来週と再来週は夏休みということで,次回は8月24日の予定。院生の統計相談に答えた後,教室webサイト更新とオセアニア学会仕事をして,メール送受信を済ませたら,20:00を過ぎていた。
- 復路あさま549号から長野電鉄への乗り継ぎはスムーズにできて,22:40頃帰宅。
▼前【1389】(データ入力,いやもとい,申請書作成とか(2009年7月31日)
) ▲次【1391】(いろいろ(2009年8月4日)
) ●Top
△Read/Write COMMENTS
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]