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個別メモ
Latest update on 2012年3月5日 (月) at 10:54:46.
【第1750回】 体力回復(2010年12月15日)
- 5:55に「スマトラ警備隊」の爆音で起床。コンピュータを起動したら毎月定例のWindows Updateの通知が来ていた。今月は数が多く,30 MB以上あった。油揚げとカブの味噌汁を作って,昨夜磨いでタイマーセットしておいた米が炊けていたものと野沢菜の新漬け(というのだろうか,ともかく今年採れた野沢菜を簡易漬け物容器のようなもので昆布と一緒に醤油漬けにしたもの……と思う。妻が短大の学生と一緒に畑で収穫してきて漬けたものなので詳細はわからないが美味い)とともに食べて朝食とした。食事が終わった時にはWindows Updateも終わっていたが,再起動しなくてはならなかった。
- 曇天で雪の予報も出ているが自転車で長野駅へ行き,往路あさま510号。何度も書いているように12月4日からの新ダイヤだと高崎の乗継ぎ待ち時間が13分もあるので,くまざわ書店に寄ってしまうのは必定である。12日日曜から,改札とくまざわ書店の間がE-siteという食品街になって新規オープンしたのだが,さすがにここは9:00開店なので寄らずに済む。くまざわ書店では,今日発売の話題作,齋藤智裕『KAGEROU』ポプラ社,ISBN 978-4-591-12245-7(Amazon | bk1 | e-hon)と,『このミス』の2011年版と,大森望責任編集『NOVA 3』河出文庫,ISBN 978-4-309-41055-5(Amazon | bk1 | e-hon)を購入。両毛線では『KAGEROU』を読み始めた。字が大きいので,このサイズと厚さからすると,中編といえようか。起承転結の起に当たる部分だけ読んだ感じだと,「世にも奇妙な物語」みたいな導入だが,ここからどう展開するのだろう,と興味を掻き立てる。少なくともケータイ小説などに比べたら,ずっとちゃんとした小説になっていると感じた。短いので,たぶん昼食時に読了しそうだ。
- 群馬は素晴らしく晴れている。風が強いのが困りものだが,新前橋から自転車で大学へ。ともかく今日はまず,査読を終わらせる。
- 午前中一杯かかって査読レポート書きを終わらせ,メールに添付して送った。とりあえず食事に行ってこよう。午後は日本人口学会の広報委員長の仕事,日本オセアニア学会の情報化担当理事の仕事,疫学セミナーの準備,人類生態本の校正,金曜の講義準備を,この順番で,行けるところまでやる予定。
- 昼食を食べつつ,予定通り『KAGEROU』を読了。うーん,途中までは悪くなかったんだが,「生」について語る展開を作りだすためとはいえ,ご都合主義が過ぎて,夢落ちにするのかと思ってしまったほどだった。もっと納得のいく展開にしても,同じシチュエーションと語りにつなげることはできたと思う。ラノベだったらご都合主義も許せるのだが,ラノベではない体裁をとっているので,もう少し辻褄を合わせてくれないと(もっとも,ラノベだったら別の意味で読者サービスが必要だから,この作品はラノベにも成り得ないが)。あと,最後の章(Reportの1つ前)は,本作品を台無しにしているので削除すべきだったと思う。「生」とか「個」について語る作品としては,これを読むくらいなら,瀬名秀明『パラサイト・イブ』か箒木蓬生『臓器農場』か篠田節子「子羊」(『ゆがんだ闇』所収)でも読んだ方がいい。『パラサイト・イブ』も最後はスラップスティック風にストーリーが壊れてしまうが,ここまでひどくはなかったし,構想も展開も理系的な迫真感あるラボ描写も,ホラー大賞を受賞したデビュー作として納得がいくレベルの画期的な作品だった。残念ながら,『KAGEROU』には,そういうプラスワンを感じなかった。文章は悪くないので,著者が本気でプロの作家として生きていくつもりなら頑張ってもらいたいが,正直,この著者でなかったなら大賞受賞作にはならなかったんじゃなかろうか。大森望の最速(?)レビューは,本作を「脱力系ドタバタコメディ」と評していて,確かにコメディとしてならこの展開も「あり」かもしれないが(そう考えると,最後の章も必然性があるのかも),それにしては笑えなかった。もしかすると舞台か映画でなら,演じ方次第では笑えるのかもしれないし,笑える部分で水準を超えれば,「生」についてのテーマ設定が生きてくるので,チャップリン映画が,おもろそうてやがてかなしき気こそすれ(追記:これは芭蕉の鵜飼いの句の捩りで,どこかで使われていた表現を借りたが出典は忘れた),という意味で傑作であるように,傑作になりうるかもしれないのだが。
- ふぅ。日本人口学会の第63回大会アナウンスの形式修正に予想外に時間がかかってしまい,終わったのが15:30過ぎだった。次のオセアニア学会仕事は途中までやってから暫く待ち時間がかかるので,その間に疫学セミナーの準備を進める。
- 18:20頃に研究室を出て,自転車で県民文化会館へ。准講会の事務のMさんが市民合唱団に入っていて,第九演奏会に招待してくださった(しかもSS席であった。ありがとうございました>Mさん)ので,聴きに行ったのだ。演目はタンホイザーの祝典行進曲と,もちろんベートーヴェンの交響曲第九番合唱付きであった。これまで第九の第三楽章は地味な印象をもっていたが,実はいろいろと工夫が凝らされた楽章だったのだと気付いた。クライマックスの第四楽章は,Mさんがアルトパートにいらしたので,初めてアルトの声に注目して聴いてみたら,普通に聞くと目立つソプラノの陰になって印象に残らないのだが,意外に良かった。しかしソリストの華はやはりテナーとソプラノだなあ。バリトンの方の声もよく響くし,そもそも独唱の最初はバリトンなのだけれども,テナー独唱の旋律が好きなのと,ソプラノの人間を超越したような超高音域の音の響きと伸びには圧倒される。最後のすべての音が絡まりながら歓喜に向かって高まっていくところも良かった。やはりCDとは違う,生の音ならではの良さがあると思った。終了後,車は無茶苦茶に混んでいて出るのが大変そうだったが,自転車はスルッと抜け出すことができ,新前橋に出てほとんど待ち時間なく高崎行きに乗れたのはラッキーであった。復路あさま549号。
- 帰宅後,Amazonで『KAGEROU』の読者レビューの数と内容がとんでもないことになっていることに気付いた。レビュー数の新記録ではなかろうか。内容は,2chが引っ越してきたような,縦読み斜め読みで遊んでいるものも多く,いわゆる「祭り」状態になっているのだと思うし,「レビュー」になっているものは数えるほどしかないが。なお,昼間書いた感想に補足しておくと,もしコメディであるならば,主人公のキャラが立っていないのが弱点なのだと思う。映像ならば俳優の力でキャラを立てることができるから,この弱点が解消されるかもしれない。どっちつかずの難解さを乗り越えるためには,モダンタイムスの頃のチャップリンが主人公を演じてくれたらいいのかもしれない。
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