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個別メモ
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【第1885回】 また月曜が来て一日講義(2011年5月30日)
- 日曜はやはり台風のため野球大会は1週間延期となった。その分,一日中家事をしていた。夕方,娘が中学の図書館から借りてきた『もしドラ』を読み了えて,面白かったから読めというので,1時間半くらいで読んだ。高校野球での「イノベーション」に関しては『ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様』の方が(まあ,あちらは女性が出場できるようにルールが変わったという大きな架空設定があるけれども,進学校の野球部で一芸に秀でた部員たちの個性を生かすというところは共通)頷ける部分が多かったけれども,この小説のキモはそこではないのでいいのだろう。例えば,ノーアウト一塁での送りバントをしないということならセイバーメトリクス的に正しい戦略だが,送りバントを一切しないという戦略は合理的でない。ボール球を一切投げないというのも,読まれてしまったら強豪校相手には通用しないのではなかろうか(たぶんカットできるだろうから,カットで粘ってコントロールミスを待つことができそうだ)。物語の構造として,ラブコメ要素のない『なれる!SE』シリーズというか,素人が勉強しながら「真摯に」困難に立ち向かうことによって,周りを巻き込んで問題を解決していくストーリーは,ある意味王道であり,そこに「泣かせ」がうまく組み合わせられていたことと,「勉強する」ネタがドラッカーのマネジメントである点がうまくハマって売れたのだと思う。娘がどこまでマネジメントを理解したのかは不明だが,それでも面白がって読ませてしまうのだから,ある意味,大した本だ。
- R実践活用勉強会でのPCAの2回目はいい実行例が見つからないのでテキストができない(日本語で考え方について丁寧に解説された文書は見つけたが)。まあ,いいデータさえあれば,その場でやってみせるだけでもいけるかもしれないが。
- 月曜は分厚い雲に覆われた空が暗かったけれども,霧雨程度だったので自転車で長野駅へ行けた。偶然,かつての少年野球指導者仲間のSさんと乗り合わせた。大変お忙しいようだ。今日はいつもより新幹線が混んでいて,途中から3人掛けの真ん中の席に他の乗客が来た(Sさんは東京まで行くので窓際でなくてはならないし,ぼくは高崎で降りるので通路側でなくてはならない)ため,あまり話はできなかったが,昨日の飲み会の話は羨ましかった。
- 妻から電話が入り,向かいの家のご主人が亡くなられたとのこと。ご高齢であり,去年くらいから入退院を繰り返していらしたようだが,いつもニコニコしていらした。惜しい方を亡くした。
- 乗換え時間30秒の伊勢崎行きにはタッチの差で乗れなかったので,次の水上行きに乗って新前橋で降り,バスで大学へ。時折強い雨になるため,自転車は無理だと判断したのは正解だったと思う。大学病院前が渋滞状態だったので,創世中等教育学校前で降りて歩いた。これも正解だった。今日は月曜なので9:50から一日中公衆衛生学の講義とR実践活用勉強会で疲れそうだ。
- 1コマ目は背景説明に時間がかかりすぎて,最後は時間が足りなかった。それでも5分延長してしまった。
- 3コマ目も時間が足りず,細かい話は全部省かざるを得なかったけれども,最初にそう断っておいたので,まあ良かろう。これまでになく疫学の考え方のエッセンスを伝えることができたように思うのが,ひとりよがりでなければいいのだが。
- 特別講義は例によって流石であった。その後,R実践活用勉強会はpcaの2回目で,前回と同じ題材をRcmdrで処理して説明を加えた後,今朝見つけた日本語テキストの事例を使ってもう一度やってみせたら,概ね納得してくれたようだった。
- 朝倉書店から,3年以上かかって漸く出版できた,『人間の生態学』ISBN 978-4-254-17146-4(Amazon | bk1 | e-hon)が執筆者献本ということで1部届いた。書店への配本が水曜で,店頭に並ぶのは木曜の予定とのこと。409pp.と分厚いので,税別6,400円とかなりの値段がするのがネックで,誰にでも買ってくださいとお薦めするわけにはいかないのだが,方法論と理論的背景と実践が書かれた人類生態学のテキストとして,ぼくも執筆者の一人として力を入れて作った本なので,図書館くらいには入って欲しいと思う。学会誌などで書評をしてくださる方には献本されるらしいが,献本された本は書評をしないというポリシーの方もいらっしゃるから,なかなか難しいところだ。しかし,書評を書いていただけるかどうかは別として,森山和道さんの評価は聞いてみたい気がする。かつて森山さんからインタビューを受けた時点で存在していた,東大出版会の鈴木継美・大塚柳太郎・柏崎浩『人類生態学』や,その絶版後,暫く経った2002年に同じく東大出版会から出た,大塚柳太郎・河辺俊雄・高坂宏一・渡辺知保・阿部卓『人類生態学』ISBN 4-13-052300-7(Amazon | bk1)が教科書的で,例えば後者では,生態系の中の人間→人間の生存と健康→人口からみた人間→環境問題と人間,と話題が進み,その中を3つか4つのトピックに区切ることによって15回の講義に使いやすいように作られていた反面,各トピックのつながりが若干つかみにくいことと,ビビッドな研究のダイナミクスにはあまり紙幅が割かれていない(まあ全体のボリュームからいっても仕方ないのだが)ために,人類生態学の面白さがわかりにくいと言われた記憶がある。だから,「人間の生態学とはいかなる科学か」と題して,人類生態学研究方法の3つの柱であるフィールドワーク,ラボワーク,モデル研究について論じた後,「人間の生態を構成する要素」と題して,time allocation,人口分析,化学物質,食物と栄養,バイオマーカー,健康問題という,人間=生態系への代表的な切り口からの研究方法と知見を紹介し,「人間の生態学の成果」として,パプアニューギニア,中国海南島,バングラデシュ,ケニア,インドネシアにおいて東大人類生態のメンバーが実際にやってきた研究成果をまとめ,最後に「人間の生態学の課題」と題して,環境問題との接点,保健学への応用,都市の生態学という,今後の大きな展開が期待される領域への展望を示すという構成をとることによって,おそらく以前の教科書よりも人類生態学という学問の面白さをわかってもらいやすい(と思う)『人間の生態学』はどう読まれるかを知りたいのだ。とりあえず私費で献本しよう。
- なお,この本のタイトルが『人類生態学』でなくて『人間の生態学』になっている理由は,確か朝倉書店の強い意向だったと思う。「はじめに」にも,「人間の生態学は,人間生態学・人類生態学ともよばれ,英語ではhuman ecologyという語がこれに対応する」と書かれている通り,内容はまったく同じである。疑問に思う方がいるかもしれないので念のため書いておく。
- 人口学会の年会費をみずほダイレクトから振り込んでから帰途に就く。
- 長野まで眠って帰ったが,あまりに疲れきっていて,長野駅から自宅まで自転車で帰るのもつらく,途中のセブンイレブンで一休みしてRed Bullを買って飲み,何とか辿り着けた。
- 愛知県知事の節電指示だが,冷房設置や電気代負担がPTAによるのが実態というのもさることながら,学校環境衛生基準(学校保健安全法第6条により文部科学省が定めているもの)によると,教室等の環境は,温度は10℃〜30℃,湿度は30%〜80%が望ましいとされていることに明白に反するので,もし実施したら文科省から改善命令がくるのではないだろうか。
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