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個別メモ
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【第1941回】 パズル(2011年7月28日)
- 今朝の信毎も1面と3面に県短4大化記事が載っていた。以前から何度か書いているように,長野県は人口ピラミッドの20〜24歳だけが極端に凹んでいて,4年制大学が足りないことは明白なので,4大化は当然かと思う。新聞記事を読む限り,提言は抽象的なお題目と松大への配慮しか感じられず,具体的な詰めはこれからかと思われた。県短は妻の勤務先であり,毎日忙しそうにしているが,自分はとくにかかわりがないので,今日の往路新幹線では,勝手に構想を考えてみたい。
- 大事なことは卒業生のニーズがあることと,学生を呼べるかどうかだと思うので,どこにでもあるような国際文化学部みたいなものではダメだと思う。その意味で,提言はセンスがない。また,ぼくの出身は東京大学医学部保健学科なわけだが,自分がいた当時は改組後なので主に理科二類から進学する普通の学科だったが,その前身は,別枠入試で,看護指導者養成のために作られた衛生看護学科である。これまで日本の看護の世界を牛耳ってきたのは衛生看護学科出身の人たちだが,保健学科への連続性を保っていたために,保健学科看護コース出身の人たちへのバトンタッチがスムーズにいっているようである(それがいいか悪いかは別として)。何が言いたいかというと,ドラスティックな改組のときにも,卒業生の力を生かすためには,連続性は大事にした方がいいということである。その意味でも,松大に配慮したことが明白な,栄養士養成課程を考え直すとかいう提言はナンセンスだと思う。
- 以上を踏まえて妄想すると,大学名は普通に長野県立大学とすればいいと思う。山口など多くの都道府県のように,きっと略称は「けんだい」となるだろう。これまでの略称「けんたん」との連続性からいっても,大学名に変な縛りを入れない方がいいと思う。
- これまでとの連続性を生かし,これから進学してくる高校生にとって魅力があり,卒業生の雇用主にとってもニーズがあるような学部構成はどうしたらいいか。一つは,長野県選出の議員であり文部科学大臣までやった小坂氏が中心となって提案して成立した食育基本法の精神を栄養士養成課程と結び付けることである。健康増進法のおかげで管理栄養士はニーズがあるので,短大では取得できない管理栄養士をとれるコースを作ることは雇用ニーズに直結するが,この際,もっと真正面から栄養学を総合的に学べる場を作ってしまうのはどうだろうか。既存の栄養学系の研究室は,どんどん分子生物学的な研究にはまりこんでタコ壺化してしまい,ヒトにとっての栄養というものを総合的に捉える視点が不足している。しかし栄養は流通や生産や文化まで含めた総合的な食の問題なので,実はこの総合的視点こそが重要であることは論をまたない(海外にはいくらでもFood and Nutritionの学部はあるが,日本では女子栄養大だけなので,男性が栄養学をやろうと思ったら,農学部か医学部の片隅でやるしかないし,扱える側面がそれぞれ限定される)。だから,例えば「食環境学部」をつくって,たぶんもうじき群大の教育学部を退官される年齢ではないかと思う高橋久仁子先生に学部長になっていただいてはいかがか。高橋先生は長野県ご出身だったはずなので,お願いしたらお引き受けいただけるのではなかろうか。食の安全についてのリテラシーなども大切なので,教授陣の中に松永さんとか畝山さんをヘッドハントしてもいいかもしれない。
- 幼児教育は少子化が進む中で幼稚園と保育園の一元化,アレルギー疾患の増加,小児科医の不足,早期教育の過熱,いまだに解決しない虐待の問題など,さまざまな社会変容が起こりつつあるという現状を踏まえ,たんに保育とかの枠を超えて「子ども学」の確立をぶち上げたらどうだろうか。もちろん,保育士に対する社会的ニーズは相変わらず高いわけだが,総合的に子どものことをわかっている保育士を養成できたら社会的評価は高まると思うのだ。あるいは,母親への教育まで視野に入れ,例えば子どもへの影響が強いと言われる放射性物質などのリスクをどう考え,どう対処したらいいのかというリスク学とくっつけても面白い。産総研から一応退職したはずの中西準子さんを引っ張ってきたら目玉になるだろう。学長を兼任してもらっても面白かろう。リスク管理,リスク評価,リスクコミュニケーションのすべてを,子どもの保育・教育にフォーカスしてやったら,意味のあるアウトカムが出てくるだろう。
- 国際文化はありふれていて,どこの大学でも卒業生の就職が無くて苦労しているところなので,ここでお薦めなのは人口学を柱にすることだ。日本には正面から人口学を掲げた研究施設が日大人口研と国立社人研しかないのだが,海外では人口学研究はかなりメジャーだし,大学院や研究所でも人口学と人類学のdual degreeプログラムなども普通に取れたりする。経済にしても福祉にしても,実は人口学的な知見に基づいた将来予測を根幹に据えないと的を外すのは見えている(だから右肩上がり経済の継続なんていう幻想に囚われた年金制度を作ってしまったのだしそれが容認されてしまったという側面は確実にあると思う)。ここはひとつ,国際人口学部を立ち上げてくれないだろうか。アジア(中東は別の方がいいかも),ヨーロッパ,アメリカ,アフリカ,オセアニアの地域別と人口政策,人口経済,生物人口,数理人口などの分野別を組み合わせて系か専攻をつくればいい。この構想ならいくらでも発展させられるがなあ。
- ここまで書いたところで高崎に着いたので止める。
- これまで全然結びついていなかったが,最近,水電池としての広告を目にする,ナカバヤシのNoPoPoって,マグネシウム電池なんだな。よくあるご質問でもマグネシウムを含むことは明かしているから,秘密にしているわけでもないんだろうけれど,積極的にマグネシウム電池としては売りこんでいないようで,気付かなかった。タイミング的にこのXを使ったものの実用化だったらいいなあと思ったが,実はNoPoPo自体は日本協能電子の商品として2008年には売られていて,マグネシウム電池であることも明かされていたから,最近目にするようになったのは,ナカバヤシがOEM展開を始めたから文具系の販路でメジャーになってきたということだろう。まあそうだとしても,東工大の矢部孝教授が描くマグネシウム循環社会が,また一歩近づいたかもしれないのは喜ばしい。ちなみに,空気マグネシウム電池自体は群馬県の中学の理科の先生で授業に取り入れた方もいらっしゃる。構造も動作原理もシンプルで,その辺も素晴らしいところだ。
- 今日はオープンラボの最終回だったが,結局志望者は3人のみ。公衆衛生に来た人はゼロであった。これだったら,少なくとも全体集会への出席は徒労感が強いし不要なのではないか。地域保健実習学生と論文チュートリアル学生と統計相談あり。19:20頃に疲れたので帰途に就いた。雨だったので自転車は大学に放置し,病院前からバスに乗った。帰ってから人口学会仕事と査読をせねば。講義準備は明日だな。
- 巨星墜つ(この表現を使う人,多そうだけど)。まだ新作を書いてほしかったな。『果しなき流れの果に』『継ぐのは誰か?』はもちろん衝撃だったのだが,中編(短編?)では,「静寂の通路」と「青ひげと鬼」も強く印象に残っている。
- 今年の日本熱帯医学会と日本国際保健医療学会連合大会は東京大学で開催される(大会長は北先生)ので,行きたいのはやまやまなのだが,日程が沖縄で開催される日本人類学会と完全にかぶっていて,先に日本人類学会シンポジウムで喋ることになってしまっているので行けない。不運としかいいようがない。
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