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社会調査第10回
「非数値データの扱い方」(2001年6月21日)
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最終更新:
2001年7月26日 木曜日 18時34分
講義概要
- 家系図
- 人類学ではとくにそうだが,社会がどのように構造化されているのか,それが経済的,政治的,儀礼的にどのように機能しているのかを知るには,ユニットとしての家族の把握と,親族関係の把握は基本。
- 図示の方法は,W.H.R.リヴァーズ「系図法」1910年初版に始まる。最小限の関係の組み合わせで聞き取り。
- 今日の親族図の基本:血族と姻族,擬制的親族(養子など)を含む。男が△,女が○。死者は斜線を入れる。記載の中心(EGO)を塗りつぶし。結婚は=。離婚はそこに斜線を入れる。定位核家族と生殖核家族は実線と点線の○で囲んで区別。目的によって名前や生年月日を入れる。
- 社会的地図
- 調査で得られた複数の情報を集約して図示するもの。
- (例1)集落の各戸を示す地図の上に,同族,隣組,葬式組などを書き込んでいく
- (例2)地域社会の地図上に非行の頻度を書き入れ,関連施設との関係をみる
- (例3)農地改革前の耕地所有面積と現在の経営耕地面積をそれぞれカテゴリ化してクロス表をつくり,そこに戸数ではなく,各世帯番号を組合加入とか本家筋といった情報とともに書き込む
フォロー
- 折半法と信頼性の例示としては3つの質問があったが,増やせば信頼性は上がるか?
- もちろんそういう場合もあります。ただ,一般に項目を増やせば信頼性が上がるとは限りません(研究分野によっては,項目を増やすと信頼性が上がるのが普通な分野もあります。例えば,池田央「調査と測定」(新曜社),1980を参照)。
- 前回の例では,むしろ,回答を4段階でなく10段階のスケールにすれば,多少信頼性が上がったかもしれません。
- 「自然への親近感を聞き取りたい場合の信頼性が高いと思われる尺度は?」という質問もありましたが,これだという決定版はわかっていないと思います。
- クロンバックとスピアマンが一致しないときは?
- 計算が間違っているので計算をし直してみましょう。前回の説明で使った数値計算を含むPDFファイルを作ってみましたので,参照してください。なお,クロンバックのαの数値計算結果が小さくなりすぎていたのは,森岡清志「ガイドブック社会調査」(日本評論社)に掲載されている式が間違っていたからであることがわかりました(上記PDFファイルでは直っています)。間違った式であることに気づかずに説明して申し訳ありませんでした。通常は統計パッケージの結果を使い,手計算などしないので,式の間違いに気づかなかったのです。
- 家系図だと思っていたのが実は親族図だったことがわかった。家系図って?
- 親族図の方が多少概念が広いのですが,ほぼ同じものです
- 他の講義で地図のことをやったので,GISは自分でも有効利用できそうだと思った。
- 誤解があると困るので言っておくと,社会的地図はGISだけではありません。もちろん,GISソフトは社会的地図を作るのに利用できますが,空間配置情報をまったく含まない社会的地図もあります。
- 社会的地図を作るのに参考になるWEBサイトは?
- とてつもなく高価な世界標準のGISソフトでArcInfoというものがありますが,その機能のごく一部を無料で使えるようにしたArcExplorer Jというソフトがパスコ社のサイトから入手できます。緯度経度ごとに複数の情報をもった正確な地図が見られます。