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[1] ノロウイルス(2005年1月14日:文責=中澤 港)

竹内君の日記で取り上げられていたように,Yahoo!ニュースの記事(産経新聞らしい)は,ノロウイルス感染が今年急増したような印象を与えます。しかし,本当に増えているのでしょうか?

少なくとも,これら2つの理由で,検査数が増えた可能性があります。しかも,ノロウイルスの検査法は,一昨年末に新しい方法に変わって検出感度が上がったかもしれません。つまり,確定した患者数の増加は,本当に患者が増えたのではなく,これまで見逃されていた患者が患者としてわかっただけという可能性があります(以上が竹内君の日記にコメントした二重のバイアスの意味です)。

でも,もっと問題なのは,産経新聞の記事には経年的な患者数の動向がないので,本当に「増えた」のかどうかが判断できない点です。患者数動向データは厚生労働省のサイトにあるノロウイルス食中毒の予防に関するQ&Aをみると,平成12年以降は毎年7000人から8000人の患者数で推移していますし,感染症情報センターのウイルス検出状況・集計表に掲載されている胃腸炎&アデノウイルス(リンク先はGIF画像)で前年同期と比較しても,決して増えてはいません。

以上を考えますと,産経の記事に代表されるメディアの取り上げ方は,集団死亡という1つのアウトブレイクの社会的インパクトが大きかったことからニュースバリューがあると判断して,本当は急増したわけでもないのに集中的に取り上げているだけと判断するのが適当ではないかと思います。

念のために言っておきますが,ノロウイルス原因に限らず,もちろん食中毒の集団発生は避けるべきものですから,施設等では,十分な手洗いと汚物と清潔なものの分別,食品に汚物が触れないようにする,鮮度管理を十分にする,胃腸が弱いとか高齢で免疫が弱っているなどハイリスクの人はできるだけ十分な加熱調理をした食品を食べるようにするといった,一般的な対策はした方がいいことはいうまでもありません。