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書評:旦部幸博『珈琲の世界史』講談社現代新書

更新:2018年5月18日

書誌情報

書評

メールなどでは何度かやりとりしている(随分前に喫茶MLのオフ会で一度だけ直接お会いしたことがあると思う)旦部さんがブルーバックスの『コーヒーの科学』を書いた副産物として生まれた本。歴史上の固有名詞は苦手なのだが,世界各国の歴史上の人や事件が珈琲という横糸で繋がるのが大変面白くエキサイティングだった。

エチオピア南西部がコーヒーノキの原産地であろうという話から,現在のような飲み物としてのコーヒーの起源がイエメンの「コーヒーのカフワ」で,これがエチオピアやソマリアでの嗜好品であるカートの葉を囓る習慣からの代替品であったろうという展開など意外だったがなるほどと思った。第二次ウィーン包囲のときのコルシツキーの逸話が後世の創作らしいがブルーボトル・コーヒーがそれにちなんで名付けられたとか,フランス革命のきっかけとなった演説がカフェのテラスから行われたとか,市民が議論をする空間としてのカフェやコーヒーハウスの役割とかナポレオンの大陸封鎖が玉突き的にコーヒー消費に与えた影響とか,どの話も大変面白かったし,栽培地の拡大と国際政治の関係の話も面白かったし,スペシャルティコーヒーとか最近のゲイシャの話なども流れが良くわかった。

なお,巻末の文献リストは充実しているが,海外文献と海外翻訳がファーストネームのアルファベット順(普通はファミリーネームのアルファベット順)なのがちょっと珍しい。


【2018年5月18日,2017年12月29日の鵯記より採録】


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