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個別メモ
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【第1619回】 講義資料づくりと査読の日(2010年6月24日)
- 5:20起床。往路あさま510号で,那須正幹『ぼくらは海へ』文春文庫,ISBN 978-4-16-777369-4(Amazon | bk1 | e-hon)を読了。この作品の素晴らしさは,あさのあつこが解説で「毒」とか「タブー」とか表現している展開そのものよりも,現実世界にはそういう展開もありうるのだという不確実性を描き切ったところにあると思う。世界は予定調和ではなく,ちょっとした偶然によって,ほんの一瞬前まで確実だと信じ切っていたことが完全に瓦解してしまったりもするということを知り,その衝撃を乗り越えるために(何らかの意味で)努力し,内面的に成長することによって,子供は大人になれる。そうでなくて逃避し続けていると,いつまでも子供のままであり,それが一時期モラトリアムとかピーターパン・シンドロームという社会病理として扱われたのだと思う。しかし逃げ切れれば,それはそれでありかもしれない,というラストシーンであり,その可能性への希望が「ズッコケ」シリーズにつながったのではなかろうか? (まあ,「ズッコケ」シリーズはあんまり読んでいなくて,テレビドラマからの印象なので,ここは外しているかもしれないが)さらに,那須はこの作品を群像劇として描くことで,少年期の終わりの多様な現実を見事に表現したと思うし,その中でもっとも特徴がない少年のモノローグを最後にもってくることによって,逃避への憧れをもちつつも,普通は社会化しなくてはいけないよね,という現実に不承不承ながらも納得していく,多くの一般読者が共有する経験を想起させた。また,湊かなえ『告白』の中学1年生があまりにも愚かでカリカチュアライズされていたのに比べると,この作品の小学6年生の実在感は圧倒的であった。児童文学好きなら必読の作品と思った。なお,ネット上にもこの作品を論じているものは多く,ここなどは質・量ともに圧倒された。
- 昨夜で豆が尽きたので,新前橋から大学へ自転車で向かう途中で珈琲問屋に寄り,エメラルドマウンテンを400グラム,ハイローストにしてもらった。県庁で会議の予定だったのが無くなったので,今日は夕方のセミナーまで,講義資料づくりと某査読ができるはず。
- パブーというe-pubシステムの宣伝メールが届いた。これ,複数人での編集という機能がつくのなら,仕上がりさえきれいにできれば,学会誌出版に使えるようにならないだろうか。いまのところ利用料金は無料らしいし。無料公開もできるようなので,とりあえず独自にたくさん作って公開している講義資料とかで試してみてもいいかもしれない。
- 総務省統計局の統計制度について紹介するページが更新されたらしい。とくに2番目の公的統計の利用拡大については注目すべき。先日の人口学会で質問して答えが得られなかった,3次元のクロス集計をしないと答えが得られない問題などは,オーダーメイド集計を依頼すればよいのかもしれない。作業1時間あたり5,900円を払わねばらないというのは高いような気もするが(まあ,見積もりを貰ってから研究費申請をすればいいのかもしれないけれども,自腹で払うには少々高い),高等教育目的でも対応してもらえるのはありがたい。この場合「教育内容が公表されること」が条件となっているのは,どの程度まで公表されることが求められているのかが曖昧ではあるが,興味深い点だと思う。
- Amazonから本が2冊届いた。Vynnycky E, White RG (2010) "an introduction to INFECTIOUS DISEASE MODELLING", Oxford Univ. Press, ISBN 978-0-19-856576-5(Amazon | bk1 | e-hon)と,Mitchell AJ, Coyne JC (2010) "Screening for depression in clinical practice", Oxford Univ. Press, ISBN 978-0-19-538019-4(Amazon | bk1 | e-hon)である。前者はたしかユトレヒトの天才が推薦していたと記憶しているが,感染症数理モデルに関心をもった学生と一緒に読むのに好適なように思われるし,後者は教室の仕事でうつ質問紙を作っているので,いいreferenceになりそうだ。しかし,明らかに読むより買う量の方が多いなあ。
- 教室セミナーは化学物質のリスク管理の国際基準と日本へのimplementationの話。呼吸器と皮膚へのアレルギー反応についてだけでも10人くらいの人が関わって調べているという話だったから,全体だと物凄い人数でやっているのだろう。
- 肩が凝っているので早めに帰ることにして19:50頃に自転車で研究室を出た。バスで前橋に行く方法だと549号にしか乗れないのだが,自転車だと547号に余裕をもって乗れた。
- 帰宅後,Googleで"SPARC Japan"を検索してみたら,「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」というサイトのレポートは,ぼくの昨日のメモより詳しく,見やすかった。ぼくの隣に座っていた方も物凄い勢いでPCのキーボードを叩いていらしたので,もしかするとご本人なのかもしれない。
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