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【第1894回】 人口学会準備と北関東医学編集委員会と教室セミナー(2011年6月9日)
- 昨日に引き続き人口学会準備が最優先なのだが,15:30から北関東医学会の編集委員会に出なくてはならず,17:30からは教室セミナーもある。時間を無駄にしないようにしなくては。
- dagboekで知ったが,西田利貞さんが一昨日亡くなった(リンク先は朝日新聞サイト)そうだ。まだ若かったのになあ。日本が野生チンパンジー研究において世界をリードしてきたことについて,西田さんが果たした役割は計り知れない。東大人類生態にも大塚さんを訪ねて来られたことが何度かあり,その時の上品な語り口は何となく記憶に残っている。惜しい方をなくした。
- とよだで昼食を食べつつ,ジョージ・オーウェル(著)川端康雄(訳)『動物農場 おとぎばなし』岩波文庫,ISBN 978-4-00-322624-7(Amazon | bk1 | e-hon)を読了。1945年に出版された本編に加え,「付録1 出版の自由」「付録2 ウクライナ語版のための序文」と訳者による詳細な解説が書かれていた。解説を読むまでもなく,これがスターリニズムを皮肉った諷刺寓話であることは明白だが(最初の革命において指導的役割をはたした3頭のブタのうち,スノーボールがトロツキーであることは知らなくても,メージャーがレーニンでナポレオンがスターリンであることは誰でもわかる),支配階級となったブタの醜悪さの描写がきわめて印象的な作品であった。ナポレオンが犬を飼った時点で階級が生まれ,スターリニズムへの転換点となったという仕掛けも優れているが,それ以上に第10章での展開には唖然とした。オーウェルは寓話作者として天才じゃないだろうか。なお,2つの付録を読むまでは,戦時中の英国のインテリゲンチャの間でソ連批判がタブーになっていたことは意識していなかったので,オーウェルがこの作品を書いた切迫した動機は,付録によって初めて理解できた。その意味で,この岩波文庫版はいい出版物だと思う。それにしても,1903年生まれのオーウェルが亡くなったのは1950年だったから,ちょうど今のぼくと同じくらいのときか。彼がもしこんなに早世しなかったら,もっと多くの傑作を書いてくれただろうにと残念に思う。また,訳者による解説の中で,「ディストピアのことばづかい」は,それだけでも読む価値がある鋭い指摘だと思った。ここで紹介されているオーウェルの「政治と英語」という文章は現代にも通用する鋭さをもっていると思うが,「婉曲法と論点回避と,もうろうたる曖昧性」を排し,直裁簡明な言語によって明確に考えることが重要だというのは,政治の悪化の一面に過ぎなくて,小泉政治がもたらしたような,極度に単純化したスローガン的言い切りの氾濫もまた政治の悪化であろうし,『動物農場』にはその両面が表れているので,ぼくはオーウェルの才能はエッセイストとして以上に,小説家として物凄く優れていたと考える。
- 北関東医学会の編集委員会は無事に終了。編集プロセスにドラスティックな変化が起こるには至らなかった。まあ,慌てることでもないからいいんじゃないだろうか。
- その後は20:00過ぎまで人口学会準備をした。時々メールの返事を打ちながらだったので,それほど効率は良くなかったが,何とか間に合うんじゃないだろうか。でも,本当は今夜徹夜でもして,仕上げてしまうべきかもしれない。
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