Top

個別メモ

Latest update on 2012年3月5日 (月) at 10:54:46.

【第2121回】 家事三昧の日曜が過ぎると(2012年2月19〜20日)

Black Rain
また月曜がやってきた。日曜は早朝から妻が仕事に行ってしまったので,洗濯を3回やり,昼食と夕食を作って片付けるなどしていたら,ほぼ家事で一日が終わってしまった。ただし,19:30頃から22:00頃までは自分のことをする時間がとれたので,随分前に買ったまま放置していたBlack RainのBlu-rayディスクをvaio-saにセットして,視聴しながら書類仕事をした。これは吹き替えでは妙味が味わえないと思う。日本語と英語が両方わかって初めて楽しめる場所も多々ある。あまりにスラング混じりで興奮して喋られるとわからないという場面など,高倉健さんの英語台詞にリアリティがあった。Black Rainを語る若山富三郎さんの英語台詞も重みを感じたし,最後の方で主人公のNY市警刑事が謎めいたクラブのホステスに"Thank you for you choosing a side."って言っていたと思うが(あまり自信はないが),格好いい使える言い回しだと思った。ターミネーターの"Trust me"は圧倒的な力を持っていないと使えないが,これなら心が折れない限り誰でも使えるし,協力者としては嬉しいんじゃないだろうか。……というわけで,途中から引き込まれてしまったので,書類仕事は今ひとつ進まなかった。
長寿記録について
/.Jの「長寿記録、114歳限界説」というエントリだが,その説は以前読むか聴くかした覚えがある。TuljapurkarだったかGavrilov and Gavrilovaだったか,Olshanskyだったか,堀内四郎さん(稲葉寿[編著](2007)現代人口学の射程,ミネルヴァ書房に寄稿された第6章「老化と寿命の人口学」は面白かった)だったか,Wilmothだったか忘れたが,誰だったかなあと探していたら,年齢の絶対値が違うが,田沼靖一(2002)『ヒトはどうして老いるのか――老化・寿命の科学』ちくま新書,ISBN 4-480-05981-4(Amazon | bk1)に,近い話が書かれていた。p.35から引用する。

一方,生物種によって最も長く生きられる期間がおよそ決まっていますが,それを「最大寿命」と呼んでいます。ヒトの場合,平均寿命が医療水準の向上や衣食住の改善によって延びても,最大寿命はほとんど延びていないのです。せいぜい一二〇歳程度が限界のようです(図1-7)。つまり,最大寿命は遺伝的に決まっていて,遺伝子操作や再生医療を施さないかぎりは最大寿命が延びることはないと考えてもよさそうです。どのようにして寿命が動物種固有に決まっているのか,最近少しずつわかってきています。このことについては第4章で述べることにします。


同書でも上の引用部分に続けて触れられていたが,白澤卓二(2002)『老化時計:寿命遺伝子の発見』,中公新書ラクレやJeune B and Vaupel JW [Eds.] (1999) "Validation of Exceptional Longevity", Odene Univ. Pressなど多くの書物に書かれているところでは,出生年の確からしさが相当程度に確かめられている最高死亡年齢としては,1997年に亡くなったフランス人女性,ジャンヌ・カルマンさんが享年122歳だったそうだから,少なくともrigidに114歳で切ることに意味はなさそうだ。ただし,Jeune and Vaupel本に対してGavrilovが指摘しているように,122歳が正しいと考えた場合に弱いのは,その次に確からしいと考えられている長寿記録が117歳であることが腑に落ちない点だ。死亡年齢の分布が極値分布に従うと考えても,118-121歳で死亡した人が見つかりそうなものだが,それがないことが,カルマンさんの死亡年齢の信頼性に影を落としている。なお,長寿記録とか最大寿命とか言われている値は,学生の頃習った成人保健学では,特性最高年齢と呼ばれていたものに収束すると考えられていた。特性最高年齢は,Charnov (1992) "Life History Invariants", Oxford University Pressなどアロメトリーではωとして定式化されているが,いずれにせよ,その種が生物学的に到達しうる最高年齢を意味する。
最大寿命ではなく平均寿命についてみると,/.Jのスレッドでも誰かが触れているように,通常,寿命の延長は乳幼児や若年層の死亡率低下が主な理由であって,高齢者の死亡率低下は頭打ちであるため,生存曲線は,高齢まで1に近い状態で進み超高齢で急激に0に向かって落ちていくという形に近づいていく。このことを明確に示した論文が,Kannisto Vが2000年にDemographic Researchに発表した,死亡の集中(年齢別死亡率の「矩形化」)であった。とてもクリアな論文なので参考になると思う。
ちなみに,Wilmothは2009年12月22日に聴きに行った『長寿革命』シンポジウムで,スウェーデンの信頼できる長期統計資料から,毎年の死亡最高年齢(Maximum Age at Death)を1860年から2000年過ぎまでプロットしてトレンドを解析し(このプレゼン資料の33枚目を参照),女性の方が男性より上だけれども,男女ともまだ頭打ちになっていないどころか,1970年辺りから傾きが急になっていて,死亡最高年齢の伸びが頭打ちになる可能性は当面なさそうだと主張していた(つまり,少なくとも当分の間は,この値が収束するようなωはないだろうということだ)。Wilmothがいう死亡最高年齢も,practicalには上述の最大寿命と同じものになるだろう。114歳上限説は,少なくとも,このWilmothの説を否定するだけの新しい知見が出たのでもなければ,あまり意味がない説だと思う。
R実践活用勉強会
2週間ぶりに実施した。『Rで学ぶベイズ統計学入門』の2.4をやったのだが,正誤表に載っていないミスと,最新版での実行結果のわずかな違いを見つけた。ミスは,p.25の1 - pbeta(0.5, a+s, b+f)の結果に0が1つ多いということで,実行結果のわずかな違いとは,beta.select()関数の結果が,R-2.14.1とLearnBayes-2.12では,[1] 3.26 7.18ではなくて,[1] 3.26 7.19となるということであった。beta.select()の中身を見ると,1e-04とか100とかいった区切り数字がでてくるから,その辺りがバージョンによって違うのかもしれない。次回は来週月曜で,2.5をやる予定。

前【2120】(今日も雪かき(2012年2月18日) ) ▲次【2122】(旅に出る夜(2012年2月21日) ) ●Top

Read/Write COMMENTS

Notice to cite or link here | [TOP PAGE]