全学の1年〜4年を対象とした基礎教養科目。生活科学部生活環境学科1年を対象とする「基礎統計学」を兼ねる。後期,F204
補講期間と試験期間の調整の都合上,暫くの間15回目として予定していた補講ができなくなり,その内容は14回目に組み込むことにしたので,シラバス通りに,講義14回で,2月5日に試験を実施することになった。注意されたい。
およそ世の中のすべての現象は不確実性,予測不可能性を含んでいる。とくに人間が絡む現象はそうである。しかし,予測能力がきわめて大きいことはヒトという動物の特徴であり(そう,リチャード・ドーキンスも語っている通り),我々は不確実ながらも先の見通しを立てて,何とかうまく生きていこうと考えざるを得ない。
では,どうやって見通しを立てればいいのだろうか? 不確実で不安定な現象でも,数多く集めれば,何らかの法則性が見えてくることがある。この,法則性を見出す(検証を含む)方法論が統計学である。本講義では,統計学の考え方の基礎を説明しながら,実際に多くのデータを集めて分析する技術の初歩を解説することを目的とする。
講義中に計算を要することがあるので,関数電卓,PDA,ノートパソコンなどを持参されたい。関数電卓は(台数が限られているが)貸与可能である。
この講義資料のコピー等の扱いは,基本的にGFDL(GNU Free Documentation License; 非公式日本語訳)に準ずる。なお,PDF文書の表示や印刷にはAdobe ReaderまたはAcrobat Readerが利用できる。
2002年度は膨大な講義資料を印刷して配布したが,それを元にして加筆訂正した本が出版されるので,それをテキストとする。出版前の草稿は,stat.pdf(2003年6月16日作成,pdf形式,約919 KB,170ページ)として公開している。6月時点までの情報しか入っていないとか,索引がついていないとか,多少体裁が美しくないといった欠点はあるが,参考にはなるかと思う。本の書誌情報は以下の通り。
中澤 港:「Rによる統計解析の基礎」ピアソン・エデュケーション,2003年10月15日初版第1刷,A5判,183pp.,ISBN4-89471-757-3,1,800円
統計学の参考書や教科書は数多くあるが,以下のものをお薦めする。
◆統計的な「ものの考え方」について,古典的な例や身近な例から,かなり高度な話題まで幅広く取り上げ,切れ味のよい解説を加えた名著である。
◆モデルベースの解析をするために,統計モデルがどういう意味をもつのか,その当てはめはどのように評価すべきか,ということを基礎から丁寧に解説している本であり,初学者にも薦められると思う。
◆自分でパッケージを使って統計解析をするときに気をつけなくてはいけないポイントを要領よくまとめた本。論文を読むときに,そこで使われている手法のどういう点に注意して結果を読み取らなくてはいけないか,ということもわかる。
◆統計解析をやり始めた大学院生などが陥りやすい罠,統計結果を読むときに間違いやすい点などを対話形式の軽妙な調子で書いた本であり,とっつきやすいと思う。
◆方法の羅列やパッケージの出力の見方に終始する多変量解析の解説書が多い中で,この本は多変量解析の意味を丁寧に,しかも数式は必要最小限しか使わずに解説した良書である。
◆統計学を本気で学びたい人は,この本を理解することから入るとよいと思う。腰を据えてかからないと制覇できない高い山であるが,統計学に対する理解の次元が変わる。
1回につき1点の出席点の他,ペーパーテストによる期末試験を行う。ペーパーテストといっても,統計学は自分で使えることが大事なので,暗記能力を試すものではなく,ノート,配布資料,電卓(暗算能力を問うわけでもないので)を持ち込み可で試験を行う。電卓を持っていない場合は貸与する。試験日時は時間割表の通り,2004年2月5日(木)16:10-17:40とする。なお,再試験は行わないので注意されたい。
成績は素点に出席点を加えて計算したところ,受験者全員が合格であった。分布を下図に示す。だいたい予想通りだった。
授業評価の結果は,以下の通りである。もう少し基礎だけを教える方がいいのかもしれないが,それでは卒業研究などで実際に統計処理をするときに困ると思うので,たぶん補完的に実習を組み合わせるべきなのだろうと思う(時間が2倍かかるわけだが)。
評価項目 | 回答人数 | ||||
---|---|---|---|---|---|
講義内容の難度 | 難しすぎる 35 | やや難しい 13 | ふつう 0 | やや易しい 0 | 易しすぎる 0 |
講義内容の量 | 多すぎる 16 | やや多い 23 | ふつう 9 | やや少ない 0 | 少なすぎる 0 |
説明の速さ | 速すぎる 12 | やや速い 17 | ふつう 18 | やや遅い 0 | 遅すぎる 1 |
板書の読み易さ | 読みにくい 6 | ふつう 27 | 読みやすい 11 | ||
液晶プロジェクタ表示 | 読みにくい 10 | ふつう 27 | 読みやすい 11 | ||
配布資料の読み易さ | 読みにくい 7 | ふつう 28 | 読みやすい 13 |
フリーコメントは下記のとおり。ご協力に感謝する。資料の字が小さかったのは紙資源を節約するためなので,もし全員がノートパソコンをもっているような環境で,それがLAN接続されていれば回避できるはずである。実用的な統計学教育には,本当はそういう環境が必要だと思う。
Correspondence to: minato@ypu.jp.