山口県立大学 | 看護学部 | サイトトップ | Software Tips | RについてのTips
R-1.8.0リリースノート粗訳
このページは,2003年10月に公開されたR-1.8.0の,リリースノートを適当に訳して注をつけたものである。
最終更新:
2003年 10月 27日 (月曜日) 15時15分
MacOSでの変更点
- このリリースから,Macintosh用にはMacOS X上でのみ稼動する1つのRのポートしかなくなった。(「Carbon」ポートは継続されなくなった。「Darwin」ポートは新しいバージョンの一部となった。)現在のバージョンは,コマンドラインアプリケーションとしても,「Aqua」のコンソールアプリケーションとしても稼動する。「Quartz」デバイスquartz()があり,ソースとバイナリパッケージのダウンロードとインストールはAquaコンソールからサポートされる。MacOS XでビルドされたCRANとBioCのパッケージには,日々アップデートされるバイナリ版がある。
ユーザから見える変更点
- glm.control()のデフォルト値は,epsilon=1e-8, maxit=25と,よりタイトになった。これによって,やや遅いけれども,より正確な結果が得られるだろう。
- sub, gsub, grep, regexpr, chartr, tolower, toupper, substr, substring, abbreviate, strsplitが,今やNA以外の欠損値を扱えるようになった。
- 名前空間(name space)への参照を含むデータを保存しても,もはやロードのときにその名前空間が利用できなくなることについての警告はしない。
- Unix系のシステムでは,割り込み信号が発生すると,信号ハンドラからlongjmpを呼び出すのではなくて,定期的にチェックされるフラグをセットするようになった。これは,Windowsの動作と同様のものである。これによって割り込みに対する反応が減り,システムを首尾一貫していない状態に残すようなやり方での割り込み計算によるバグが防がれる。これはまたシステムコールの数を減らすので,プラットフォームによっては計算速度が速くなったり,Mosixのようなシステムと組み合わせて,Rがより使いやすくなることがある。
言語仕様の変更点
- エラーと警告のハンドリングが,柔軟な条件ハンドリングメカニズムと合うように修正された。「tryCatch」と「signalCondition」についてのオンライン文書を参照。これらの新しい仕掛けを使わないコードは影響を受けない。
- 名前空間の内部変数にアクセスするために,三重コロン演算子を使うことができる(すなわち,a:::bは,名前空間aにおける内部変数bの値である)。
- 統語的でない変数名は,`このように`バックチック(`という記号のこと)の間に挟むことによって特定できるようになった。deparse()コードはこの変換とともに非統語的名前(それが表現式の中に演算子として出現するときには)を出力するように変更された。これは,「backtick」引数によってコントロールされる。この引数はデフォルトでは,複雑な表現式については真で,単純なシンボルについては偽である。そのおかげで,既存のコードの邪魔になることは最小限に留められるはずである。
- 式中の変数はバックチックで挟むことによって共通のモデル当てはめ関数として使うことができる。terms.formula()は,「term.labels」属性に非統語的名前を(バックチックによって)引用するものである。[注:termsオブジェクトを使うそれ以外のコードは,統語的名前を期待し,かつ/あるいは,引用された名前を受け付けない。新機能が使われていなければ,そういうコードもまだ動くだろう。]
新機能
- 新しい関数bquote()は,LISPのバッククォートと同様,部分置換をする。
- capture.output()はfile引数と任意の結びつきを取れる。
- contr.poly()は,多項式の基底集合として使うための新しいscores引数をもつようになった。
- cor()は,これまでずっとcor.test()がそうだったのと同様,新しい引数method=c("pearson","spearman","kendall")をもつようになった。2つの順位ベースの尺度は,3通りの欠損値の扱い方すべてについて動作する。
- 新しいユーティリティ関数cov2corは,分散共分散行列を相関係数行列に変換する。
- cut.POSIXt()では,これまでseq.POSIXt()へのby引数に許されてきたのと同様,breaks引数により一般的な間隔を設定できる。
- data()は今やenvir引数をもつ。
- det()は常にLU分解とLAPACKを使うようになった。det()へのmethod引数はもはや何の効果ももたない。
- dev.control()はinhibit(禁止)とenable(動作可能)を受けつける。(要望リストPR#3424)
- *, -, /は,difftimeオブジェクトに対してより一般的に動作するようになった。今ではdiff()でも扱える。
- dt(*, ncp=V)が実装された。Claus Ekstroemに感謝。
- dump()はファイルの中で必要なところだけオブジェクト名をくくりだす。
- あるpromiseのeval()はそのpromiseを強制する。
- file.path()は,少なくとも1つの長さゼロの引数が与えられると,空の文字列ベクトルを返すようになった。
- format()とprint()は,不正なデータフレームであっても,,警告を出しながら何とか扱おうとする。
- format.info()はformat.default()とのアナロジーにおいて,nsmallも動作する。
- gamma(n)は,ほんのちょっとだが,nが11:50の範囲の整数値のとき,これまでよりも精度の高い値になった。
- ?とhelp()は,より多くの引用符無しの引数を受け付けるようになった。例えばNULLとか。
- ?演算子は,今ではS4の方法で問い合わせを行う文書のための新しい書式をもつ。オンライン文書を参照。
- filled.contour()にframe.plot=axes(==TRUE)という新しい引数ができた。
- grep()とregexor()にfixed=TRUEという引数ができた。エスケープ文字列にマッチしてしまうのを避けるため。
- grep(x, ..., value=TRUE)はxの名前を保存する。
- hist.POSIXt()はhist.default()に引数を受け渡すことができるようになった。
- legend()とsymbols()はxy.coords()を利用するようになり,より広い範囲の座標指定を受け入れるようになった。
- ロードされたDLLに対してdyn.unload()を呼び出して整頓するためのlibrary.dynam.unload()関数が追加された。この関数は,DLLをもつ名前空間において,すべての標準パッケージについて,それらの名前空間がアンロードされるときに呼び出される。
- lm(singular.ok=FALSE)が実装された。
- 空のlm()とglm()が標準コードによって処理されるようになった。lm.nullクラスとglm.nullクラスを扱うメソッドはない。ゼロ次の当てはめが一貫性のある形でなされる。
- make.names()が改良され,新しい補助的な関数としてmake.unique()ができた。(Tom Minkaによって寄付されたコードに基づいていて,.Internalの関数に変換された。)とくに,make.names()は,今ではドットで始まる名前を妥当なものだと認識し,予約語は妥当ではないと認識する。
- methods()は,ユーザからは見えない関数にアスタリスクをつけるprintメソッドをもつようになった。methods(class="foo")は,見えない関数もリストし,一致する汎用関数があることをチェックする。(中澤注:example(methods)の結果を見れば,methodsが何をするものかわかると思う)
- model.matrix()は式のrhsからの反応を除くと警告を発する。これが起こることはそのヘルプページにも記載されている。
- locator()とidentify()を使っている間のビープ音確認を制御するために新しいオプションlocatorBellができた。
- options("scipen")は,数値を固定小数点表示するか指数表示するかを,ある程度ユーザが制御できるようにする(David Brahmの貢献による)。(中澤注:R-Announceに流れたメールではoption("scipen")となっていたが,明らかにtypoである。helpによると,scipenは整数値で指定し,数値を固定小数点表示か指数表示かを決めるときのペナルティとして使われる。正方向だと固定小数点表示されやすくなり,負方向だと指数表示されやすくなる)
- plot.formula()がhorizontal=TRUEでも有効になり,箱ヒゲ図を描くときでも正しく動作するようになった(要望リストPR#1207)。ソースコードが,これまでよりも遥かに簡素で正しいものになった。
- polygon()とrect()は,density<0またはNAのとき(中澤注:領域描画の密度が負または欠損のとき),(by colour)(色によって)塗りつぶしたいのだと解釈する。これによって塗りつぶしと影つけを一度の呼び出し(例えばlegend()からの)に混在させることができる。
- lm, glm, mlm, lqsクラスに対するpredict()メソッドは,na.action引数をとる。この引数は,newdataにおける欠損値をどのように処理するかを制御するものである(そしてデフォルトはNAである)。[これまでは,getOption("na.action")の値が使われ,デフォルトではたとえna.excludeに設定されていても欠損値をもつケースは計算から排除されていた。]
- print.summary.glm()は,print.summary.lm()と同じやり方で,排除された係数をレポートする。つまり,両方とも,係数の表でNAとして示される。
- print.table()は新しい引数zero.printをもつようになった。このことはドキュメントにも書いてある。
- rank(x,na.list="keep")とすると,NAがxの中で保存される。ties.method引数を使うと,タイ(同順位のもの)があったときに平均を取るのではない順位を使うように指定できる。
- read.table()のas.is引数は文字列でありうる。すなわちカラムは変換されない。
- rep()は一般的な関数となった。デフォルトでは,POSIXctとPOSIXltの2つの方法がある。効率のため,ベースライブラリのコードは,可能なところではrep()よりもむしろrep.int()を使うようになっている。
- 表現式の繰り返し評価と結果の収集のための新しい関数replicate()ができた。これは,シミュレーション目的でsapply()を共用するためのラッパーである。
- rev()は汎用の関数になった。デフォルト値とdendrogramメソッドをもつようになった。(中澤注:library(mva)をやってから,methods(class="dendrogram")とすると,ユーザからは見えない関数としてrev.dendrogramがあることがわかる)
- serialize()とunserialize()関数は,低レベルな並直列変換による連結へのインターフェースである。(中澤注:help(serialize)によると,実験的なもので,将来名前が変わるかもしれないとのこと。何らかのRのオブジェクトをserialize()によって連結にし,unserialize()によって連結からオブジェクトを引き出すことができるらしいが,何の役に立つのかよくわからない)
- socketSelect()は複数のソケットでの待ちを許可する。
- sort(method="quick", decreasing=TRUE)が実装された。(中澤コメント:降順のクイックソートは今まで実装されていなかったのか?)
- sort.list()は「quick」メソッドをもつ。sort(method="quick",index.return=TRUE)へのラッパーである。「radix」メソッド(中澤注:基数ソートだろう;少数の整数についてはきわめて高速な方法である)ももつ。デフォルトの「shell」メソッドは,多くの同順位をもつ長いベクトルに対しては,より高速に動作する。
- stripchart()は,log,add,at引数をもつようになった。
- strsplit(x, *)は,names()を保存するようになったが,文字列でないxに対しては動作しなくなった(以前はnames(x)を破壊して,as.character(x)を使っていた)。
- textConnection()は,連結の出力と一緒に使うためのlocal引数をもつようになった。local=TRUEは,その変数が,呼び出し元のフレームに割り付けられている出力を含むことを意味する。
- UseMethod()を2つ以上の引数をもたせて使うと警告を発するようになった(R-lang.texiがもう長い間そうすると主張してきたように)。
- 小さいスケッチ(ヴィネット)を表示したり,リストするための,新しい関数vignette()。(中澤注:example(vignette)としてみたところ,multcompライブラリに,Rmcというヴィネットを含むオブジェクトがあると表示されるが,multcompライブラリはmvtnormライブラリをダウンロードしないと使えない。まずinstall.packages("mvtnorm")としてCRANからmvtnormをダウンロードしてから,library(multcomp)し,vignette("Rmc",package="multcomp")とすると,Adobe Readerが起動して多重比較についてのpdfドキュメントが表示された。なるほど,そういうことだったのか。)
- which.min()とwhich.max()が名前を保存するようになった。
- xy.coords()は,POSIXtオブジェクトをPOSIXctに強制変換する。plot.POSIXlt()プロットに行などが付け加えられることを許可する。
- .Machineは新しいエントリsizeof.pointerをもつ。
- .Random.seedはユーザのワークスペースでのみ探索され,保存される。以前はサーチパスにおいてその名前の変数が見つかった最初の場所のものが使われていた。
- データフレームの添字が合理化された。
- 単一の引数を使うと,drop引数が無視される(警告が出る)。これまでdropを使ったときはリストでやるような添字が禁止されていた。
- adf$name <- valueという付値は,valueの長さが正しいかどうかチェックするようになった(中澤注:違う長さのベクトルを付値しようとしたら,エラーが出てできなかった。これまでもそうだったように思うが?)。必要な回数繰り返す(?)。
- adf[j] <- valueとadf[[j]] <- valueは文字列ベクトルをファクター(中澤注:因子水準のみをもつ変数。カテゴリ変数と思えばよい)に変換しなかったが,adf[,j] <- valueはしていた。今やどれもしなくなったし,リスト型のvalueがデータフレームに強制変換される(それによって文字列要素がファクターに強制変換される)こともなくなった。
- 全体の値の置き換えが繰り返されるときは,正しい回数の値が生成される。これはいつもなされる(するときもしないときもあるというのではなく)。
- リストの値の置き換えはNULL要素を含むことができる。
- データフレームのサブセットを作っても,もはやカラム名が二重に作られることはない。
- drop=TRUEを使ってサブセットを作っても,次元や行列やデータフレームのカラムを時々落とすようなことはなくなった。(?)
- カラムの一部分を置き換えてもアトリビュートが剥き出しにならない。(中澤注:例えばxというデータフレームがあったとして,attributes(x)とすると見えるデータ構造があるのだが,カラムの部分置き換えではそれが影響されないという意味だろうか?)
- 置き換え操作で追加されるカラムには,常に名前がつく。適切なら(置き換えに使われた)リスト変数の名前を使う。
- as.data.frame.list()は,check.rowsのようなリスト名に対処しなかったし,このようなカラム名をもつデータフレームをフォーマットしたりプリントしたりしなかったが,今ではするようになった。
- 行の名前の抽出は,いまなお他にない名前を作り出すが,それが統語的な名前であることを強制しない。
- adf[x] <- list()は,xが長さゼロだと失敗した。(?)
- dimnamesをファクターに設定すると,Sがするのと同様に,文字列に強制変換されるようになった。(以前のバージョンのRでは,内部コードを使っていた)
- リストの強制変換が失敗したときは,意味のあるエラーメッセージが与えられるようになった。
- NULLに[[ ]]を追加すると,もし1つ以上の要素が追加されたならば,リストが生成される(Sがするように)。
- 新しいコマンドライン引数--argsは,それ以降のコマンドライン引数をスキップさせる(が,後の処理のためにcommandArgs()には記録される)。
- S4の汎用関数とメソッドの取り込みは,汎用関数をより自己充足的なものに修正してきたし(例えばapply型の操作で使えること),潜在的には高速化してきた(?)。
- データエディタはもはや65535行までという制限がなくなった。また,多くのカラムがあるときの動作がかなり高速になった。
- スタンドアロンのRmathは,リクエスト通りにget_seed関数をもつようになった(PR#3160)。
- GCタイミングはgc.time()が初めて呼ばれるまで有効にならない。gc.time(FALSE)を呼ぶことで無効化できる。これはガベージコレクションを高速化し,プラットフォームによってはシステムコールを減らすことにもなる。
標準パッケージ
- 新しいパッケージmle。これは最尤推定のためのシンプルなパッケージである。尤度のプロファイリングと,それに基づいた近似的な信頼区間を計算する。よいふるまいをする尤度関数が仮定されていて,漸近理論が適用できることを正しく判断するのはユーザの責任である。このパッケージはS4のメソッドとクラスに基づいている。
- mvaパッケージの変更。
- factanal()はこれまでprintメソッドの中で計算されてきた検定統計量とP値(有意確率)を返すようになった。
- heatmap()はより多くの引数をとるようになった。その一部はWolfgang HuberとAndy Liawのおかげだ。
- plclust()の引数としてunitとhminが実装された。
- prcomp()は今や複素数の行列を受け入れる。その出力には(実数の場合)biplot()メソッドがある。
- dendrogramsはちょっとだけよりよい説明文がついた。これまでtext属性で動いていたメソッドはlabelになった。新しいrev()メソッドがdendrogramsにも使える。
- plot.dendrogram()は明示的なframe.plot引数をもっている。デフォルトは偽(frame.plot=FALSE)である(デフォルトがTRUEである暗黙のものに取って代わった)。(中澤注:example(plot.dendrogram)とすると,その高機能さと美しさに感動する。)
- tcltkパッケージの変更点。
- このパッケージは今や1つの名前空間にある。取り除くには,unloadNamespace("tcltk")を使う必要がある。
- Tclへのインターフェースは,文字列表現を構築することによるのでなく,Tclオブジェクトのベクトルを介してTclコマンドを評価することによって,より効果的になされるようになった。
- Tcl配列へのインターフェースが導入された。
- as.tclObj()はdrop引数を得た。長さ1のベクトルの曖昧さを解決するために。
- toolsパッケージの変更点。
- ファイルを検査しリストすること,ファイルパスを操作すること,及び区切られたパターンマッチをすることのためのユーティリティがexportされた。
- checkAssignFuns(),checkDocArgs(),checkMethods()関数は,それぞれ,checkReplaceFuns(),checkDocFiles(),checkS3methodsに名前が変わった。動作内容をよりよく表すためである。
- R自体が¥usageセクションのマークアップを分析するのに使われるようになった。このことによって,とくに,置換関数あるいはS3置換メソッドが無視されなくなった。
- checkDocFiles()は¥usageセクションでなくて¥argumentセクションで与えられた引数についても「余計に記述された」かどうか決定するようになった。
- checkDocStyle()とcheckS3Methods()は内部のS3汎用関数とS3グループ汎用関数についても認識する。
- S4クラスとメソッドはQCテストに含まれている。定義されているが記述されていないクラスやメソッドについて,警告がundoc()から発せられることになる。デフォルトのメソッドは自動的に非汎用関数から生成されるが,これは記述される必要はない。
- 新しい(実験的な)関数codocClasses()とcodocData()は,S4クラスとデータセットについて,ソースコードとドキュメントの一貫性をチェックするためのものである。
- tsパッケージの変更点。
- arima.sim()は,一貫性のない順序の指定についてチェックするようになった(PR#3495でリクエストされたので。この点は,以前はチェックしないと記述されていた)。
- decompose()は新しい引数filterをもつ。
- HoltWinters()は新しい引数optim.startとoptim.controlをもち,適合した値について,これまでより多くの構成要素を返すようになった。プロットメソッド(中澤注:res <- HoltWinters()としてからplot(res)としたときに呼ばれるメソッド。library(ts)をやってからmethods(class="HoltWinters")とすればplot.HoltWinters*とアスタリスクがついていることからわかるが,ユーザからは見えない)がylimの設定を許可するようになった。
- plot.ts()は新しい引数ncをもつ。ncはカラム数を制御する(デフォルトはplot.mtsの古い振る舞いと同じである)。
- StructTS()は時系列の最初の値が欠損であることを許可する(最初の方がNAである間は取り除いた方がいいけれども)。(PR#3990)
パッケージの使い方
- library()はpos引数をもつようになった。posはそのパッケージがどこに付けられるかを制御する(デフォルトではpos=2で,これまでの動作と同じである)。
- require()はトップレベルの環境(典型的には.GlobalEnv)で必要とされるパッケージのリストを保持するようになった。2つの機能がこれを利用する。detach()はあるパッケージがattachされたパッケージで必要なのにdetachされていると警告を発する。セーブされたイメージとともにインストールされたパッケージは,メインソースと同じく.Firstでrequire()を使う必要がない。
- 名前空間をもつパッケージは--saveを使ってインストールすることができる。
- S4クラスとメソッドをもつパッケージは,セーブされたイメージありでもなしでも動作すべきである(効率のためにはセーブされたイメージがなお推奨される)。setMethod()などがwhere引数のデフォルトを呼ぶように書くことによって(?)topenv()関数とsys.source()関数も,それぞれ改変された。オンラインヘルプを参照のこと。
- ユーザはDESCRIPTIONファイルでパッケージのRソースディレクトリでのファイルの照合を指定することができる。
ドキュメントの変更点
- Rドキュメント記述フォーマットの変更点。
- 新しい論理マークアップコマンド:テキストの強調(¥strong),引用(¥sQuoteと¥dQuote),S4メソッドの使用(¥S4method),特定種類のテキスト(¥acronym,¥cite,¥command,¥dfn,¥env,¥kbd,¥option,¥pkg,¥samp,¥var)を指示するため。
- 予めマークアップされたテキストブロック(別のセクション内の¥exampleのように)のための新しいマークアップ¥preformatted。(Greg Warnesによって寄付されたコードに基づいている)
- help.search()によって使われる概念インデックスのエントリ用の新しいマークアップ¥concept。
- RdconvはS3メソッドの使用法を示す¥method{GENERIC}{CLASS}という特別なマークアップから,コメン内でクラスの情報を提供する,より情報量の多い出力を生成する。
- ¥dontrunセクションは,変換後のヘルプページのユーザ可読バージョンでのコメントの中で新しくマークされる。
- ¥dontshowは,¥testonlyよりも好ましい名前である。
インストールの変更点
- 少なくとも1.1.4(1.1.3からバージョンアップされた)が外部に見つからない限り,ソース内のzlibコードが使用される。
- 回帰チェック(?)は正確にパスされなければならない。それが推奨されるパッケージ(あるとは仮定できない)に依存していない限り。
- target make check-allは,R CMDチェックをすべての推奨されるパッケージについて実行する(たんにそれらの例を実行するのではない)。
- 動的ライブラリをビルドするための新しいマクロDYLIB_*ができた。動的なRmathライブラリ(かつては共有オブジェクトとしてビルドされていた)を作成するのに使用する。
- もしシステム関数loglpが見つかれば,その正確さがテストされる。不適当ならば,src/nmathにある,それを置き換える関数がRloglpに名前の再マッピングをして使われる(OpenBSD/NetBSDでは明らかに必要)。
C言語レベルでの変更点
- 新しくインストールされたヘッダファイルR_ext/Parse.hは,拡張を書くときにR_ParseVectorが呼び出されるのを許す(以前のバージョンの,エクスポートされなかったParse.hで使われていたのとはインターフェースが変わっていることに注意されたい。また,このインターフェースは,変わらないでいることを保証されない)。
- ヘッダR_ext/Mathlib.hは除去された。R 1.2.0でRmath.hで置き換えられたものである。
- PREXPRは2つのマクロで置き換えられた。表現(expression)を得るためのPREXPRとevalで使うためのコードを得るためのPRCODEである。マクロBODY_EXPRがclosureとともに使うために付け加えられた。バイトコンパイルされたbodyをもつclosure1つに対して,マクロBODY_EXPRはコンパイルされた表現を返す。もしbodyがバイトコンパイルされていなければ,bodyそのものが返される。これは,バイトコンパイルをサポートするためである。
- バイトコンパイルされたコードを実行するための内部サポートが追加された。バイトコンパイルされたコードを生成するためのコンパイラは別に利用できるようになる予定であり,将来のRのリリースの一部となるはずである。
- popen()とsystem()へのUnix系システムコールが発生したときは,Cライブラリ関数は,R_popenとR_systemを経由するようになった。Mac OS Xでは,これらはライブラリコール周りのSIGALRM割り込みを一時中断する(PR#1140関連)。
ユーティリティの変更点
- R CMD checkは,パッケージメインテナとして"ORPHANED"を許可する。パッケージメインテナは,公式にパッケージを孤立化することができるようになった。すなわち,そのパッケージの維持管理を止めることができる。
- R CMD INSTALL(Unixのみ)は,いまや「安全」である。もしあるパッケージをインストールしようとする試みが失敗したら,残骸は除去される。もしそのパッケージが既にインストールされていたら,古いバージョンが復元される。
- R CMD buildは,ありそうな(廃止された)データとDCFフォーマットのヴィネットインデックスを排除する(このことによってまた,それ以上それらをリビルドしなくなる)
- R CMD checkは,ファイル名が,ファイルシステム及びサポートされたOSプラットフォームを通して正しい(有効)かどうかを検査する。データセットとS4クラスについては,コードとドキュメントの一貫性をチェックするためのサポートがいくらかある。¥usageセクションの置き換え関数とS3メソッドはもはや無視されない。
- R CMD Rdindexは除去された。
推奨しないか機能停止した点
- 付値演算子"_"は除去された。
- printNoClass()は機能しなくなった。
- クラシックな(OS X以外の)Mac OSポートはもはやサポートされない。ソースからもそれ用のファイルは除去された。
- parse()の既に推奨されなかったwhite引数が除去された。
- pacf/plot.mts()メソッドは,機能的にはpacf.default/plot.ts()に入ったので,除去された。
- print.coefmat()はprintCoefmat()の方が好ましいので推奨されない。(これらは,na.printのデフォルトが""から"NA"に変った点と,すべての係数が欠損であるようなゼロ次のケースの扱いがうまくなったことを除けば同一である)
- codes()とcodes<-()は推奨されない。ほとんどすべての使われ方が,実際の動作を誤解しているので。
- 複数の引数をもつreturn()の呼び出しの使用は推奨されない。代わりに(名前付きの)1つのリストを使うべきである。
- (1.2.0で置き換えられた)anovalist.lmは,推奨されない。
- POSIX[cl]tオブジェクトのための-とOpsメソッドは除去された。1.3.0以降,POSIXtメソッドを使うようになっている。
- glm.fit.null(),lm.fit.null(),lm.wfit.null()は推奨されない。
- "lm.null"クラスと"glm.null"クラスは推奨されない。これらのためのメソッドはすべて除去された。
- weights.lm()メソッドは,weights.default()のコピーだが,除去された。
- print.atomic()は推奨されない。
- 古いバージョンとの互換性を保つためのエントリポイントRf_loglpは,スタンドアロンのRmathでは除去された。
バグフィックス
リンクと引用について
Correspondence to: minato@ypu.jp.