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【第288回】 相変わらず体調不良だが会議会議の一日になる予定(2013年3月6日)
- 6:00に「Rock U」で起床。いくら何でも,もう食べ尽くさないと傷みそうだから,シーフードカレーの残りを温めて全部食べた。多すぎ。
- メールを開くと,海外から,fmsbライブラリのCronbachAlpha関数は欠損値対応していないのかという問い合わせがあった。残念ながら対応していないので,現状ではデータをこの関数に渡す前に欠損値を除去しておくしかないが,psychライブラリのalpha関数ではna.rmというオプションがあって,ペアワイズの欠損値除去によってクロンバックのα係数を計算してくれるし,na.rmはデフォルトでTRUEなのでそちらを使えばうまくいくだろうと返事。何でもかんでも自前で実装しなくても,もっといい実装があればそれを使えるのがバザール方式のいいところだと思う。もっとも,他のパッケージに依存する関数を書いてしまうと,それらのバージョンアップや仕様変更に合わせて書き換えねばならないことも生じるので,面倒くさがりな自分は,そういう関数は書かないようにしているが。RcmdrやEZRみたいな統合GUI環境を提供するパッケージはそういうわけにもいかないからメンテが大変だろうなあと思う。本当にProf. John Foxや神田先生には頭が下がる。
- 今日はいろいろ会議がある予定。
- 昨日のクローズアップ現代『沖縄、元長寿の島で何が起きているのか!?』の録画を見た。鈴木信名誉教授の談話の最後「65歳以下の人は年齢が下がるほど死亡率が高くなることが問題」は不正確で(もちろん言い間違いだと思うが),正しくは「35歳から65歳までの男性では若い年齢層ほど死亡率の全国平均との差が大きくなる」だ。愛知学院大公衆衛生の渡邉智之さんの分析手法は一瞬しか出なかったので良くわからないが,この番組のストーリーである「食生活の変化→子供の頃からの脂肪摂取増加→心疾患や脳血管疾患などの循環器疾患増加→寿命の延びの抑制」に対して決定的に重要なポイントなので,もっと詳しく説明して欲しかった。右の図は数日前に作ったものの再掲だけれども,このレーダーチャートで見る限り,沖縄において,心疾患や脳血管疾患の損失余命への寄与が他の都道府県に比べてとくに大きいようには見えない。渡邉さんの分析は,ちらっと見えたワークシートから察するに,おそらく,経時的にみると循環器系疾患(と書かれているからには死因大分類[厚生労働省のpdfを参照]ベースでの分析であろう)による死亡率の全国との差が,他の死因による死亡率の全国との差に比べて相対的に大きくなってきているということを意味しているのだろうが,もし標準化していないとすると,絶対値の大きさが効いてしまっている可能性があると思う。もっというと,長野県の特徴をみれば明らかなように,そもそも脳血管疾患と心疾患を区別せずに分析している時点でミスリーディングになる可能性がある。平成22年都道府県別生命表データにおいて,沖縄における損失余命が他都道府県よりも大きい死因が肝疾患,糖尿病,自殺であることは,右のグラフを見れば明らかなので,「沖縄男性が30位,女性が3位に順位が下がった」ことの説明としては,数日前に考察したように,「(社会不安→)失業・飲酒→自殺,肝疾患」というストーリーの方が蓋然性が高いように思う(これをきちんと解明するには,久山町やこもいせレベルのコホート研究が必要になるので大変だけれども,ある程度は5年ごとの集団レベルのデータを使った地域相関研究でもいけそうな気がする)。等々力さんが番組で語っていた50年前からの食生活の変化というのは,一面の事実には違いないが,それが原因だとすると,若い年齢層ほど全国平均との差が大きいというデータと合わないのではないか? 次に出てきた,沖縄の人は半分が肥満という話も変だと思う。全国では3人に1人が肥満というデータの提示からすると,BMIが25以上の過体重の人を肥満に含めているわけだが,暫く前にこの鵯記でも書いたように過体重と肥満ではリスクが異なることはいまや常識なので不適切(健康日本21サイトで,日本人は欧米人に比べて少しの肥満でもリスクが上がると書いているが,そんなにはっきりしたエビデンスはないし,少なくとも過体重の部分についてはリスクは上がらないことが,日本人でも小金井研究など多くの研究でわかっている)。横断研究での脂肪摂取割合のデータから,縦断的な推論をするのも不適切。米国の研究で高脂肪食摂取者におけるD2受容体減少の話を説明しているが,米国と日本では脂質摂取量がまったく違うから,この話が沖縄に適用できるのかどうか? デンマークで高脂肪食品に高い税金を掛けることによって脂肪摂取を減らそうという主旨で導入された脂肪税は,成果が上がらず1年で廃止されたという映像が流れたが,1年で廃止というあまりに急速な政策変更は,成果が上がらないというよりも,予想外のデメリットがあったことをうかがわせるが,どうだろう? 番組の最後の方で,希望として,保健師の方が,地域ボランティアや保健師が頑張って特定健診受診率を上げ,全員に保健指導をすることを目指しているということと,高齢者医療費低下,糖尿病重症者減少を関連づけて,手応えがあると感じていると語っていたが,健診受診率を上げれば,確かに糖尿病の二次予防は進むから,重症者減少と高齢者医療費低下には寄与するだろうけれども,落ち着いて考えてみると,番組の最初に出てきた,35歳〜65歳の死亡率が全国平均より高くて危ない! という話と直接関係しないことは明らか。子供たちの食育からというアプローチは,片田敏孝さんが防災教育でやってきたことと似ているから有効かもしれないが,注意しなければいけないのは,食育に食材の選定から調理,後片付けまで含められるのかどうかということだ。防災ならば,子供自身の判断で率先避難者になることができるが,食育の場合は,いくら学校給食を伝統食にしても,食べるだけではそれが家庭に広まらない(もちろん,味覚と視覚が伝統食に慣れるという体験学習的な意味はあるが)。総じていえば,脂肪摂取の増加という,暫く前から厚生労働省を中心に問題視され続けている減少への警鐘を鳴らすためのストーリーの中に,沖縄の平均寿命が短くなってきたという話を都合良く取り込んだだけの番組であるように思われた。面白い映像もあったから,見て良かったのだけれども,一般視聴者は鵜呑みにしないように気をつけて欲しい。もしぼくが考えたように,社会不安を背景として失業と飲酒が増え,それが自殺や肝疾患,糖尿病に影響しているのだとしたら,米軍基地を沖縄に押しつけていることや偏った産業構造の問題を避けて通ることができない。むしろ社会疫学的にそういうアプローチをしている人はいないのだろうか?
- もはや沖縄は「長寿県」と呼べないのか?というブログ記事で知ったが,ぼくがここで指摘したことは,沖縄タイムス3/1で崎間敦先生が既に指摘されていた。そうだよなあ。
- 東京都の感染症サーベイランスで最近5年間の風疹患者数をみると(動的に生成される? グラフ画像へのリンク),去年の半ばからだらだらと流行が続いていて,最近outbreakしたという感じ。
- 去年1年分の花粉が今週1週間で飛ぶという予報が出ていて恐ろしい。ぼくは眼の症状が一番ひどいので,頻回に眼を洗っているのだけれども,それでも集中力が続かない。いや,これは老化かもしれないが。
- GSICSの院生の1人が4月からオーストラリアに1年留学するので,その壮行会で三宮へ。東急ハンズの近くの店だったが,料理は質も量も十分に良かった。壮行会のついでという感じで話をしていて,新しい研究プロジェクト参画が決まった。久々に焼酎お湯割りと梅酒のロックを飲んでしまったせいか,少しく酔った。阪神前からの直通終バスで帰宅するまで,ほぼ眠っていたし,家に辿り着いても着替えて歯磨きだけしたところで倒れるように眠った。
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