Latest update on 2018年3月7日 (水) at 15:42:47.
【第1357回】 東京日帰り出張をして川端裕人『青い海の宇宙港 春夏篇』を買った翌日に試験問題作り(2016年7月23-24日)
- 土曜は9時少し前に家を出て三宮経由で神戸空港から羽田へ。モノレールで浜松町,JRで東京駅と乗り継いで八重洲地下街へ。やえす初藤で西京焼の定食を食べてからブックセンターを覗いてみたら,川端裕人『青い海の宇宙港 春夏篇』早川書房,ISBN 978-4-15-209629-6(Amazon | honto | e-hon)のサイン本が入口そばの平台の上に並んでいたのが目に入ったので買ってしまった。長年の友人でありながら川端君のサインは初めて見たと思うが,これはそうと知っていなければサインとわからないなあ。しかし「宙へ」という花押みたいな印は格好良い。内容は,種子島がモデルであることが丸わかりだが何故か「多根島」という仮名になっている島を舞台にして,その濃密な亜熱帯の自然を丁寧に描きつつ,JAXAがモデルであることが丸わかりなJSAという団体のエンジニアなのに広報担当として島にいる若干屈折した青年や,山村留学みたいな形で「宇宙遊学」中の小学生たち(北海道から来た宇宙マニアと東京から来た生き物好きという6年生少年2人と,フランス帰りでウィンドサーフィンが上手い5年生少女ら),地元の快活6年生少女とJSAで働いているその従姉,物語の主要視点の語り手でもある生き物好き少年の里親となった川漁師夫妻,少年少女が通う小学校の一癖ありそうな校長や歴女担任教師といった人たちがいろいろな思惑をもって動きつつ,その世界線の交点でロケットが打ち上がったり,秘密基地での事件が起こったり,「鯉くみ」があったり,精霊みたいなモノが出てきたり,黒砂糖を燃料とした模型ロケットを作って,「宇宙観光協会」主催の「ロケコン」に参加してみたり,ウミガメの産卵があったり,と例によって盛りだくさんな物語である。本書は「春夏篇」なので,おそらく「秋冬篇」で宇宙遊学が完結するまでの1年間を描くのであろうし,後半にクライマックスがあるのだと思うが,丁寧に描かれる自然描写が大変良く,こんな時期に読むと南の島に行きたくて堪らなくなるのであった。小学校長が唱える「ガッカチチウ」という謎の(物語の中でちゃんと説明されているが)スローガンは,『川の名前』辺りから通奏低音のように川端作品に流れている思想が色濃く出ている部分で,ぼくはこの世界観には強く共感する。なお,たいした問題ではないが,一つだけ誤植を見つけたのでメモしておく(p.154「世界中に人口衛星の……」は「世界中に人工衛星の……」の誤植だろう)。
- 公衆衛生学会の編集委員会が始まるまで1時間ほど,八重洲地下街の東京駅から最も離れた端にあるTULLY'sコーヒーで仕事。土日は全面禁煙なのが良かった。編集委員会は,初めて八重洲地下街にある会議室で実施され,若干コンピュータトラブルがあったが無事に終わった。丸の内側に歩いて,とある店で暑気払い会をしたが,ぼくは神戸行きSkyMark最終便に乗るため1時間ほどで抜けた。往路と逆ルートで羽田に行き,予定通りにSkyMark神戸行き最終便で神戸空港へ。貿易センター前から終バス1本前で帰宅。疲れたのでそのまま眠ってしまった。
- 日曜は6:00起床。洗濯機を回しながら,冷凍ロールキャベツと鶏胸肉と冷凍ブロッコリーを麺汁で煮込みつつ素麺を茹で,素麺の湯を切ってから煮込み汁をかけて朝食にした。明日の環境・食品・産業衛生学の期末試験問題を作るために出勤。昼飯は名谷駅コンビニのサンドイッチを買った。
- 試験問題を完成させて印刷を済ませたら19:30になってしまい,直通終バスの時刻を過ぎた。仕方ないので湊川公園廻りで帰宅する。
- 復路バスでも『青い海の宇宙港 春夏篇』の続きを読み進めて読了。話はどんどん展開し,語り手の駆君を含む限られた人にだけ見える白影というくだりは雲の一族を思わせるし,川端君の小説デビュー作だった『夏のロケット』の舞台となった世界との関連を匂わせるエピソードも出てくるし,『てのひらの中の宇宙』や『星と半月の海』を思い出させる哀しいエピソードも出てくるし,果ては小松英一郎さんとの共著『宇宙の始まり、そして終わり』で語られていたマイクロ波による宇宙背景放射観測の話まで出てくるなど,ある意味,これまでの川端君のフィクション・ノンフィクションを通じた作品世界の集大成のような気がした(もっとも,疫学も恐竜もネット犯罪も金融工学もソングラインも声優も数学もサッカーも動物園も出てこないから,もちろん完全な集大成とはいえないのだが……しかし,こうやって並べてみると,改めて川端作品の多様さには驚く)。実は『秋冬篇』も8月上旬には発売されるとのことなので,続きを読むのが楽しみだ。
- ドラゴンズはナゴドに帰ってもスワローズに弱くて,泥沼の3連敗。バレンティン選手が空振り後に片手を離して振り下ろしたバットに頭部を直撃されて,防護ヘルメットを被っていたのに流血して病院に搬送された杉山捕手が心配。ルール化は難しいかもしれないが(follow-through interferenceとして,空振り後の場合に限ってボールデッドになるだけ),何らかの対処は必要と思う。日本だけでなくMLBでもさんざん事故が起こっているのだし,ワンバウンドのボールを逸らさないように止めに行った捕手はほぼ避けられないのだから,遠くに飛ばす上で多少不都合だとしても,follow-throughで片手を放して捕手に当たったら打者は危険行為退場にしても良いくらいだと思う(片手を放さなくてもホームランを打てる打者はたくさんいるのだし)。コリジオンルールより重要だろう。
- 表紙が魅力的なので衝動買いしてしまったJazz Japanを眺めていたら,山中千尋さんが新作でメロディを重視したという話はなるほどと思ったが,聴いてみたい新作情報が多数掲載されていて物欲に襲われた。Kandace Springsの『Soul Eyes』,Emaの『Respirar』,pdの『usagi to neko』,Somethiing Newの『Talking on the Beach』は,とりあえず試聴してみたい。
- 「今でしょ」の林修氏の博識ぶりを見せつける番組「初耳学」で,UVカット加工していない衣類で,もっともUVカットに有効なのは黄色というネタが披露されていて(「初耳」認定された),皮膚科医の石川先生がコメントしていたが,染料専門家のコメントが欲しかった。目に見える色としては「黄色」と総称される色でも,含まれている化学物質によって紫外吸収/反射の特性は違うんじゃないかと思って調べたら,黄色9と黄色59では大きく違うというデータがあった。同じ論文で,黄色は高い明度(L*)で有効と書かれていて,「同じ明度なら」黄色のSPF値が最も高いと書かれていたが,それってあまり実用上の意味が無い比較だし,たぶん番組を見た人は誤解したんじゃないかなあ。
△Read/Write COMMENTS
▼前【1356】(論文相談とか(2016年7月22日)
) ▲次【1358】(期末試験とミーティング(2016年7月25日)
) ●Top
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]