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【第1392回】 東奔西走+『罪の声』『水族館の殺人』『モンスターマザー』感想メモ(2016年9月5日)
- 6:00起床。昨夜の帰り道に新神戸駅のGourmet Cityで買ったライ麦入り食パンの残りと,砂肝野菜しめじ炒めで朝食。コーヒーを淹れてから出勤。今日は会議やら何やら,いろいろな公務で六甲台と名谷を行ったり来たりせねばならない。
- 保健学で1つ会議に出てから暫く研究室で待機し,午後は六甲へ。その仕事が終わったら空が暗くなっていたので,神戸駅廻りで直帰した。
- 最近読み了えたがメモしそびれていた小説として,『罪の声』と『水族館の殺人』はそれぞれまったく毛色が違うが,どちらも良く出来ていた。とくに,『罪の声』は傑作と言っていい。エビデンスが揃っているわけではないから小説の形にしたのだろうが,ほとんどルポのようにグリコ・森永事件(ギンガ・萬堂事件ということになっているが)の裏側を綿密に取材したのであろうリアリティと,情景描写と心理描写の切なさが素晴らしかった。
- ルポとしては,『モンスターマザー』も読み了えた。母親は学校におけるいじめ自殺であると主張し,学校は母親による虐待が原因の自殺であると主張した,高校1年生の自殺を巡る謎を解き明かそうとしたルポである。こうやって時系列で両側から描かれると,確かに本書に書かれていることの方が真実に近いのだろうと納得するけれども,鎌田慧氏のような現場を大事にするライターでさえ,知り合いの人権派弁護士からわかりやすい構図をまず吹き込まれると,裏を取らずに(取ろうとしたが係争中であることを楯にとって取材拒否されたとご本人は言っているそうだが)信じてしまうという認知バイアスが恐ろしいと思った。本書を読んで疑問に感じたのは,第一に,なぜ学校側は診断書を書いた精神科医を裁判に証人喚問しなかったのかという点である。希死念慮ありなら診断書を書いて終わりなどということはありえず,入院させるとか投薬などの治療をしなくてはいけないはずなのに,本書では医師がそれをしなかったように描かれている。もちろん守秘義務があるにしても,直接本人を診察したのかどうかくらいは答えさせてもいいのではないだろうか。それ以上に,最初の診断書が出てきた時点で,学校側はセカンドオピニオンを取るように母親に要求すべきだったのではないか。途中から母親の言動がエスカレートして虚言癖と妄想が顕著になったあたりで,これは児童相談所が子供を隔離して保護すべき案件だろうと思いながら読み進めていたら,案の定,実際にそういう動きをしていた矢先に自殺という最悪な事態が起こってしまったと書かれていた。児童相談所には強い権限があるので,もっと早く決断していれば,高校1年生の自殺は防げたのではないかと考えると,残念でならない。遅くとも以前にも児童相談所に保護を求められたことがあったことを知っている警察官が今回の事態に遭遇した時点で,手引きにも書かれている24条通報をして精神保健指定医2名の診察を母子ともに受けさせることができたのではなかろうか。裁判では学校側が勝ったという結末なのにすっきりしないのは,適切に手を打っていれば最悪の事態は防げたかもしれないと思ってしまうからだろうなあ。もちろん当事者としてプレッシャーに曝される中では,それは難しいことなのだろうが。
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