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【第1621回】 2017年も半年過ぎた日は東京で人類生態学研究会・同窓会(2017年7月1日)
- 6:00前に目が覚めたのでシャワーを浴びてからホテル2階の食堂へ。まるで昔の日立のメインフレームのスクリーンエディタみたいな名前だが,部屋も広くて清潔で豪華で,食堂のバイキング形式の朝食メニューも大変豪華だった。何かのイベントで混んでいて高いと聞いたが,この内容なら約1万5000円の宿泊費も仕方ないかもしれない。
- 9:00のフライトに乗るため,7:20になったのでチェックアウトせねば。
- 羽田から本郷三丁目に着いたら12:00で,うどんを食べてから会場に行ったらちょうどいい時刻だった。
- 13:05から人類生態学研究会開始。以下メモ(間違いがあるかも)。
- 最初の発表はM3の岩上君。カレンでのフィールドワーク。背景は微量栄養素の話。タイでは鉄欠乏やVit.A欠乏の子供が多いという先行研究。カレンは主に農村部に住む。Tienboon and Wangpakapattanawong, 2007によると63%の子供が重度のVit.A欠乏(血清レチノールが0.7マイクロモル/L)。取り残された子供の問題も。今回食事調査した。目的は2つ。微量栄養素と主要栄養素の摂取状況の把握とその要因。FFQの開発。Kre Kii村Tak県(カレン族はタイとミャンマーの国境付近に広がって住んでいるので,その1つということ)。斜面に家を建てて道沿いに住んでいる感じ。人口は登録人口554,現在人口363。焼畑米作と水田耕作,玄米で730 kgくらいの収穫。鶏と豚を飼育。教員,国立公園管理者,村の役員が公務員。出稼ぎ労働も多い。現金収入(中央値)は46,000 THB/Y(日本円でいうと年収14万円くらい)。宗教は90%が仏教。水は山からパイプで引いているが浄水はしていない。55%の世帯が太陽光パネル(配布された)をもっている。熱源は薪か石炭,一部ガス。食事調査の内容は連続3日間の秤量を雨季2ヶ月と乾季1ヶ月に1回ずつ。雨季が12世帯40人(何世帯かいなくなってしまったので乾季にもできたのは8世帯28人)。タニタのKD-192で秤量。調理後に秤量。成分表はASEAN Food Composition Table (Mahidol Univ. 2014)。一部日本と米国の成分表を利用。学校給食も量りに行った。ご飯は銘々皿。おかずは中央に配置して各人がとっていくスタイル。学校給食はアルミ製?にみえる,ご飯とおかず3品が載る皿に配膳される。子供は11歳までしか村にいない。12歳より上は外の学校に行ってしまうため。基本情報の表。成人の栄養摂取の表。BMRで割ったり体重で割ったりして比較したが差(性差と乾季・雨季の差)はなかった(エネルギー1000kcal当たりでなく?→一部の栄養素についてはそれもやったそうだ)。子供は微量栄養素のなかに摂取の性差がみられた(女児が少ない)。たんぱく質RDA比は1を超えているが女児<男児。鉄摂取のRDA比は乾季の方が良く,雨季は1未満の子も多かった(どちらも女児<男児)。亜鉛も同様。Vit.AのRDA比は乾季も雨季も1未満の子が多かった(症状は?)。子供のエネルギー摂取やたんぱく摂取はかなり(14〜32%)給食由来。雨季が終わる頃米を収穫するので,乾季はそれを売った金があるので魚より高価な豚肉を買って食べることができる。鉄,亜鉛,Vit.Aも給食の寄与は大きい。Vit.Aは卵と牛乳から取れる部分が大きい。雨季は川が増えるので魚をとってくることが増える。食事調査はMahidol Univ.との共同研究。FFQ作成もそこへの貢献のためやった。たんぱく,鉄,亜鉛,Vit.A摂取の90%をカバーするように32食品群を選んだ。乾季はゴマペーストがよく食べられていた。両面印刷の(片面がFFQ,裏がInstruction)FFQを開発した。ポーションサイズをモデルで選んで摂取頻度を尋ねる形式。現在英語からタイ語への翻訳をMahidol Univ.の共同研究者に依頼中。
- 質疑。二元配置したら? →分布の正規性が良くないのでやらなかった。海産魚は買える。店が5つある。2回とも測った人だけを対象にして反復測定分散分析するのが筋だと思う。トウガラシは? 子供は食べてない。Vit.A源としてのNoYuKaDoとかPaBuDoなどは野菜の現地名。ナマズは基本的に買ってくる。野菜は森からとってくるが,肉や魚は買ってくる。
- 2人目は小西さん。人口学会の発表とかなり重なっている内容。6人との共同研究。岡山理科大のDr. Keiko Shimizuが尿中ホルモン測定した。見かけの受胎確率はO'Connerのグラフが受け入れられている。現代の欧米データでは少し受胎確率低下は遅れるという報告が多い。日本人についてはあまりデータがない。Time To Pregnancy (TTP)はArai et al., 1989とArakawa et al., 2005が報告しているが,どちらも打ち切りデータが入っていない(対象が妊婦または子供を産んだ人のみ)。目的が違う研究なので仕方ないが,受胎確率への年齢の影響を見る上では致命的。(1)Moriki et al., 2015は日本は既婚者の性交頻度が低いことを示している。(2)日本は世界で最もART使用が多いこともわかっている(Dyer et al. 2016)。日本はART成功率が7%,他国の平均は20%。(3)アジア人は白人よりART成功率が低い(Armstrong and Plowden, 2012)。日本人は欧米より受胎確率が低いかも? Research Questionは,日本人の年齢別受胎確率のパタンを明らかにすることと,それに影響を与える要因としてovulation, intercourse, fetal loss, daily fecundabilityに要因分解すること。前者がネット調査で後ろ向きにTTPを求めた「TTP study」,後者が「Baby-machi study」で,前向きに今妊娠しようとしている女性を調査。Daily fecundabilityはまだ分析中。ベビ待ちは初回なので若い女性(20-34歳)しか対象に入っていないため,年齢との関係は分析できない。TTPでは,Historically prospective design (Juul et al., 2000)を用いた。3つのグループに分けた。20-44歳女性が対象。楽天リサーチ登録者を対象にして2016年の4-5月に調査(有料)。264,799人がスクリーニング参加。12,517人が参加同意。6,752人が適格。そこからさらにいろいろの条件で適格者を絞っていき,1,324人のデータを分析。まだ妊娠していないC群が比較的高齢。かつ4割はART経験あり。コックス回帰でTTPを分析。年齢効果あり。33-35歳では1年までに妊娠する累積確率は53%。欧米先行研究よりは受胎確率が低そう。理由は第一子だけを分析対象にしたこと(第二子以降はTTPが短い),不妊のカップルを含んでいること,セレクションバイアス,等々。スマホアプリで広告し12万人が見たが80人が参加。採血と生体計測,最大24週までフォローアップ。毎週質問紙調査(オンライン)。自分で家で検査できる妊娠検査薬と排卵日検査薬を送り,自分で検査して報告して貰った。20人は毎日尿を保存してもらい,凍結して送ってもらって,ラボでPdGとE1G(妊娠すると上昇する)を測定→自己検査と合っていたことを確認済。ロジスティック回帰で受胎の有無を分析。説明変数は膣内射精ありの性交(intercourse)と無しの性交(sex)。BMIはノーマルな人に比べ18.5未満の人の方が妊娠確率が高かった。避妊を止めてからの期間とBMIの散布図。関連無し。排卵日5日前と1日前のintercourseと,6日前以前のsexが有意に妊娠確率を上げたという結果であった。5日前と1日前だけ効いているという結果は先行研究と異なる。今後さらに詳しく分析する予定。受胎確率の異質性の要因を今後調べる予定。
- 質疑。オキシトシンを介している? TPP研究の方で感度分析は? 第2子は入れられる?→そもそも質問してない。ネット調査の代表性の問題はどれくらい?→出産年齢とパリティの分布は全国データとわりと似ている。異質性はWeinsteinみたいなものを想定している?→その通り。やってみたらいい。欧米人といっても違いがあるのでは(ハワイ在住でも3つくらいに分けると結構違っている)?→とりあげた先行研究に見られるパタンはだいたい同じようなものと考えている。ベビ待ち調査は高学歴の人が多い。謝礼は説明会に来るだけで3000円など。
- 3人目は梅崎さん。PNG高地人の低タンパク適応:腸内細菌叢の役割に着目して,という内容。背景は人類の人口増加が産業革命以降急増したこと。昔の適応の多様性(現在の格差とは別に)。自給自足社会の栄養研究は現代栄養学の常識が当てはまらないことが多い。Galvin 1992 AJHBはマサイは6割以上が乳製品からエネルギー摂取。栄養学者は調査法が間違っていると批判するが,べたっと張り付いて調査していて見逃しはないと確信していてもエネルギー摂取が少なかったりする。PNG高地のフリは芋と豚しか食べてないのに筋肉質。小進化としての倹約遺伝子とか乳糖耐性遺伝子とか。人類が拡散するにつれてアフリカにはなかった食べ物に適応する必要があった。そこで出てくるのが腸内細菌。NatureやScienceに載ったtwin studyからブーム。PNG高地の低タンパクについての研究の流れはある。小石先生がやってから20年後に新しい技術で分析してみようという。4集団比較。ゴロカ,フリ,コンビオと今回新しく伝統的な1集団レバニを対象にした。この人たちは低タンパク適応していて昔ながらの腸内細菌が維持されているだろうという仮説。genusレベルで組成を比べると違いそうだがよくわからない。腸内細菌組成の主座標分析(主成分分析のbiplotとはどう違う?→多次元尺度構成法の1つで,ユークリッド距離でないものも使えるのだそうだ)。タンパク摂取量が多い集団では減っている細菌種があることがわかった。いまあるデータベースに登録されていない細菌かもしれない。対象者241人。腸内細菌叢解析はいろいろ出るが解釈が難しい。本当にタンパク欠乏か? 個人レベルのタンパク摂取評価のため,PNGの人のタンパク摂取推定のためのFFQを作りvalidationもした。集団間比較するとレバニは欠乏レベルの摂取の人が多い。窒素固定細菌の同定。Igai et al., 2016 (Scientific Reports)で根粒菌やシロアリにあるのと近縁のものがあり発現もしていることがわかった。実は日本人にもいることが後でわかった。培養して重窒素取り込みを調べたらオートクレーブを掛けた菌は取り込まないのに生きた菌は取り込むことがわかった。次の仮説としてNitrogen salvage(腸管に排出された尿素が腸内細菌によってアンモニアになり取り込まれてアミノ酸になって再利用される)がPNGの人でハイレベルを調べた。安定同位体解析。再利用が増えるほど15Nが増えるはず。動物性タンパク摂取が少ないときは15Nが上がるという散布図ができた→PNGの人が再利用を活発にしているという間接的な証拠。Tomitsuka et al., submittedはメタボローム解析。低地の人たちは便(fecal water)中のアミノ酸濃度は低い。高地の人は高い。これも再利用の間接的証拠。レバニの人をタンパク極度欠乏群とそうでない人に分けると,極度欠乏ほどアミノ酸濃度が高いことがわかった。無菌動物実験でPNG高地の細菌を付けたマウスは低タンパク食での体重減少が防がれた(再現性はまだ不十分)。日本人の便でもコントロールよりは若干体重減少が緩やかになる(Masuoka et al. 2017)。かかわっている細菌の候補も絞れてきたPrevottela copri近縁(農学部に嫌気チャンバーがあって培養可能)。PNGのはたぶん異種。ちゃんと同定できたら新種として名前がつくかも。IAAO法による体内の栄養学的恒常性を維持するために必要なタンパク量の評価(フィールド)。
- 質疑。適応度というのは普通の意味?→腸内細菌叢の小進化の意味。環境細菌なので入ったり出たりしている。成長期に意味がある?→筋肉がタンパク貯蔵庫だとしたらどういうメカニズムでそうなるのか成長も重要と思う。尿素になる以外の代謝系の関与は否定できるか?→そこは今後の課題。再利用促進だけでは説明できない。Prevotella copriはマウスにはつかない。他の動物?
- 4人目は関山さん。西ジャワ農村の子供の健康と栄養。2000年からの変容。12歳以下の子供500名を4年間追跡調査。尿検査や糞便検査による腸管寄生虫の調査をした。現在地球研のプロジェクトで調査中。2000年と2015年の間では著しい経済成長があった。ボゴール(ジャカルタ大都市圏Jabodetabekの西端)で調査。人口密度は2000くらい。比較的標高の高い村に住んでいた。年間降水量は3,600mmくらい。ボゴール市から車で1時間半くらい離れた村で調査。標高が440-730メートルくらい差がある。村には10の集落があり,低いところ(440m)と高いところ(600m)で調査した。304 haが村面積。2000年の人口は6434人。2016年までの村落統計データ(売られている)によると2016年には9616人まで増加。土地利用変化も村落統計に含まれていて,宅地は約2倍に。畑地は40(実測では110 ha?)から106.4 haに増加(あまり変わっていないかも)。滝の周辺にリゾート開発されてホテルができた。農業従事者は67%から47%に減少。ホテル・レストラン従業員は8.9%から31.6%に増加。子供たちの成長変化は,かなり村に残っていた。2001年7月と2015年8月の比較。参加した子供の年齢は有意差無し。平均収入は5倍以上に増加。就業年数も有意に増加。男女別の成長データは,身長は有意に増加(14年間で男児5.9cm,女児4.7cm),体重も有意に増加。BMIは男児のみ増加(Zスコアも)。2015年には肥満児がみられたが,BMIは女児は±0,男児は0.9増加。栄養摂取はエネルギーもタンパクも脂質も増加。男児のみ栄養摂取のばらつきが拡大(過体重14%,やせ4%)。食品摂取の多様度が低いため? 麺が増加した。芋類摂取は元々マイナーだったが更に減った。2001年にはキャッサバ,サツマイモ,ジャガイモなどいろいろな芋が食べられていたが,2015年にはジャガイモのみになっていた。購入食品への依存度が増大。芋食が減って,米と小麦への依存が上昇した。
- 質疑。土地所有? 不在地主が多くて村人はほぼ小作。村人が自由に農作業できなくなっている。TAMAN KUPU KUPU。機械化は? まだ手作業がメイン。なぜ男児だけ変化? 食べ物? 運動? 子供は車やバイクには乗らないので通学は徒歩。全員初潮前。男児の格差と親の職業との関連は?→未解析。出生はCBRが23→8(低すぎるので信用できないが)。大人は女性が太っていた。母親の体格と子供の体格の相関は? 2001年にはあった。2015年はやってない。
- 5人目は学さん。ケニア保健システムの概要と課題。社会人枠ということで。院生の時は実験室で水銀を測っていた。JICAに入って5年くらい経ってから自分がやりたいことが答えられるようになった。今日の話はケニア保健省アドバイザーをやっていた経験の紹介。社会経済背景,健康状態,システムなどから医療保障を語る。アフリカは経済成長著しい。GDPの毎年の伸びが5%以上。いま医療保障システムを作っておかないと後で困る。他部族。少なくとも42部族ある。若い人はもう部族にはこだわっておらず政治的利用という話もある。絶対貧困率が33%,インフォーマルセクタ労働が80%。2013年からdevolution(地方分権化)が急激に起こっている。SDGsが出たのでUHCは意識している。サブサハラアフリカ全体では死因の半分以上は感染症。ケニアでも死因もDALYのシェアもHIV/AIDSが最多。次が周産期。2000年以降は低下。MMRはエチオピアでは直線的に減少,ケニアは2005年ころまで下がらず,その後緩やかに減少(WHO2015の資料)。Total Health Expenditure per capitaはケニアは78 USD,日本は3,703 USD。Catastrophic (health) expenditure(医療費で破産する割合)がケニアでは6.2%いる。保険加入は2013年で17.1%。今は27-8%。これを上げ,貧困も減らすのが政府の方針。医療施設は6層(コミュニティ3500からTertiary Referral Hospital 4病院まで)。国家病院保険基金。インフォーマルセクタの保険料は500シル/月。払えない人も多い。poorestな人はカバーしている。フォーマルセクタもカバーされている。妊婦と乳児もカバーされている。高齢者はカバーされている。制度上は別々だが,実は重なっている。非効率。課題はいろいろ。(1)住民登録と動態統計が不十分。World Bankの母子保健プログラムのガイドライン2015のFig.2でもそれぞれ重要といわれている。長崎大学の金子さんと組んでケニアでやろうとしている。(2)現在の保険システムは非常に複雑で分かり難い。frangmented risk pools。地方分権でチャンスは増えたが格差は広がった。数%しか保険に金を付けていないcountyもある。3つのバリア(2010年にWHOがレポートで書いている,Physical,Cultural and psychological,Financial)。ハランベ(村で金を出し合うシステム)で検査だけ受けて悪性腫瘍が見つかっても治療の費用がハランベで集まらず治療できず亡くなるという事例があった。医療の質も重要。これを実現するにはpolitical commitmentが必須。ケニア社会の公平性の定義→脆弱な集団をターゲットに。システムへの信頼が損なわれると保険は成立しないので,そうなると税によるUHCの方が現実的かも。societal solidarityも。政策だけより実践が大事。
- 質疑。ケニアではアクションプランは誰が作ることになっているのか?→急に地方分権化が起こったので,郡政府がやらねばならないがその能力が無い郡も。ケニアは47郡。4600万人。行政単位としては適切。移行期は能力が足りない。他の国でモデルになりそうなところは?→わからない。民間保険は少しあるが国としては推奨していない(セネガルは最近そういう方向になった)。治安は?→あまり良くない。供給面での偏りの是正は?→弱い。人材補給は考えられてはいる。ストライキ頻発。
- 最終演者は大橋さん。いまの所属は理学系研究科生物科学専攻ヒトゲノム多様性研究室。タイトルは倹約遺伝子仮説とポリネシア集団。背景。現生人類の移住史。オセアニア。3つのネシアと2つの語族。アジアとは連続。第一の移住はスンダからサフルへ。ギデラの中でも古い人たちはそこに含まれる。第二の移住はオーストロネシア語を話す人たち(とくにラピタ人)。ポリネシア人の母胎。ラピタ文化。どこから来たかは謎が残っている。トンガの人たちには今でもラピタ土器の文様が入れ墨として残っている。star navigationで海を渡ることができた人たち。ポリネシアの人たちの移住モデルは3説。EXPRESS TRAIN / SLOW TRAIN / ENTANGLED BANK。対象集団は外群としてのギデラ,バロパ,トンガ(ハアパイ,ヌクアロファ),クサゲ,ラワキ。mtDNAのハプログループB4の頻度でギデラと他はきれいに分かれる。ハプロタイプネットワークを見るとかなり混血があったと示唆される(投稿中)。主成分分析をすると,ヨーロッパやアフリカに比べて,オセアニアとアジアは近い。オセアニア内だけでやるとより混血の様子がわかる。核遺伝子のSNIPでも同じようなことが示唆される(投稿準備中)。倹約遺伝子仮説(Neel JV, 1962)がもし本当にポリネシアに当てはまるとすれば,その実体があるのか? はずっと関心をもっていた。Nature Genetics (Minster et al., 2016)のCREBRF遺伝子(転写因子)の非同義置換がサモアにあるという報告を見て,そのアリルを調べてみた。淘汰が強く示唆される。PNGにはなく,ソロモンは低頻度,トンガはサモアほどではないが多かった。遠くの島まで移動するのに有利に働いた変異? 1コピーもっているとBMIが3増えると報告されている。これはNaka et al. 2017に発表済。古代人からオセアニア人への遺伝子移入。人類遺伝学でホットな話題は,ネアンデルタールとホモサピエンスの分岐は55〜76.5万年前だが,出アフリカ直後に混血したので,アフリカ人以外はネアンデルタール由来の遺伝子をもっているという話。Nature 2012, 485: 33-35.オセアニアの人たちはこの遺伝子頻度が高い。admixture(分岐後に混血)かancient structure(元々あったが非アフリカ系にだけ残ったと考える)か?→領域の大きさで評価可能。後者なら短いはず。ネアンデルタールアリルの頻度(NAF)を調べた。既にネアンデルタールのゲノムもデータベースとして利用可能。GCG遺伝子がグルカゴンをコードする。Science論文 Vernot et al. 2016で報告されていない領域も見つけた。2個のSNIPを調べたらアジア人よりも高頻度でオセアニアの人に見つかった。NAをもっていると中性脂肪が下がることがわかった。NAはグルカゴン生成量を増やすかも? 今後の計画として男女の平均身長をみると,ソロモン人はポリネシア人より低い。ポリネシア人は身長を高くする変異をもっている?(片山さんの過成長モンゴロイド仮説と関連する?)
- 質疑。身長は表現型なので栄養やライフスタイルの影響もあるかも。幼時の動物性タンパク摂取が身長への影響大。この違いはそれ以上の差か? CREBRFはマウスの線維芽細胞を脂肪細胞のような細胞に分化させた実験でみると,肥満関連のタンパク発現が変わるという結果はでている(先行研究で発表済)。トンガは半数がアメリカやオーストラリアに移住して何十年も経っているので,その人たちを調査すれば身長の話に別の角度からaddressできる? ゲノムワイドに調べた結果とはいえ,rs12513469とp.Arg457Glnだけか?→使っているSNIPがポリネシア対象ではないので,見落としている可能性はある。
- 大変面白い研究会が終わり,18:00から20:00まで赤門隣の建物で同窓会懇親会。その後,人類生態の集会室に移動して2次会。23:00近くまで参加していたが,あまり遅くなると息子に悪いので途中で抜けた。
- スポナビをチェックしたら今日もドラゴンズは惨敗だった。小笠原投手でもマツダの呪いを破ることはできなかったか。カープ強すぎ。
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