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【第1742回】 問題の原因が判明したので査読開始(2018年1月8日)
- 8:00起床。野菜類を大量に投入して豚肉小間切れと一緒に煮込んだスープを作り,レトルトご飯を電子レンジで温めて朝食を済ませ,トラジャを淹れて水筒に詰めて出発。
- バスの中で,青柳碧人『浜村渚の計算ノート8さつめ:虚数じかけの夏みかん』講談社文庫,ISBN 978-4-06-293741-2(Amazon | honto | e-hon)を読了。メインのキャラ造形がジュブナイルなのと数学テロリストという設定の非現実性から,著者自身も含めてラノベっぽい体裁で売っているけれども,ミステリとしての内容はどんどん闇が深くなってきたし,クイ研出身の本領を発揮して松岡圭祐の万能鑑定士Qシリーズや特等添乗員αシリーズ以上に細かすぎる雑学の宝庫だし(「アラビアン・ナイト千夜一夜物語」のアラビア語タイトルが『アルフ・ライラ・ワ・ライラ』だなんて,誰が知っているというのか?),本筋の数学についてもガウス平面における累乗を回転として図解する見せ方は,たぶん『物理数学の直観的方法』の第4章などいくつかの本で有名だから著者のオリジナルではないが,物語上での展開としてうまく行っていると思う。107584の開平は,おまけで付いているアラビア式の解説はなるほどと思ったけれども,それを知らなくても暗算でわりと簡単に解けるので(大きい方と小さい方から区間を狭めていくと,330^2より小さく320^2より大きいことはすぐにわかるので,1の位が2乗して4だから8となることから328には辿り着ける),もう少し難しい数字の方がもっと感心したかもしれないが,ジュブナイルの読者にはちょうど良いのか。でもまあ,著者が一番気に入っているフレーズは,後書きにも出てきたが,「横浜には、複素数がよく似合う。」だろう。太宰の「津軽」における「蟹田ってのは風の町だね」と同じくらい印象的なフレーズなので,ぼくも本文を読んでいる時点で気に入った。現在執筆中という長編の完成が待たれる。なお,解説の日下三蔵氏が,「普通の日常をちょっとだけはみ出した設定……(中略)……数学そのものがテーマになっている作品となると、天才数学者を主人公にしたアダム・ファウアーのサスペンス長篇『数学的にありえない』(文春文庫)くらいしか思いつかない」と書いているが,それはあんまりじゃなかろうか。本書の参考文献にも挙がっている結城浩『数学ガール』シリーズはミステリでもSFでもないから除外するとしても,Dlifeで放送されていたドラマ「NUMB3RS」とか,本書と同じくリーマン予想が絡んでくる川端裕人『算数宇宙の冒険 アリスメトリック!』とか,向井湘吾『算額タイムトンネル』(数学屋さんシリーズも)とか,橋本愛主演でNHKドラマになっていた『ハードナッツ!』とか,数学オリンピックレベルの高校生を主人公にした玉城夕紀『青の数学』(続編『青の数学2』も。3はまだ出ていないようだが)とか,もっとマニアックなやつだと,クヌース『至福の超現実数』とか,ブルーバックスから出ている数学漫画本『X教授を殺したのはだれだ! 容疑者はみんな数学者!?』とか,山ほどあると思う。少なくともこの文脈で向井湘吾に触れないのは手落ち。
- 研究室に着いて固定IPを試したら接続できたことから,DHCPサーバのセグメントに矛盾があったことに気づいた。盲点だった。が,問題解決の方法がわかったので業者にメールで連絡した。明日の朝には解決するはず。
- これでやっと講義準備とネット業務が終わったので,漸く査読開始できる(実はその査読と深い関係にある某学会からサーバ管理仕事が来ているが後回し)。が,間に合わないな。
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