Latest update on 2021年7月4日 (日) at 18:43:39.
BuzzFeedの記事を引用して,「賛成派が科学的に正しいことを言おうとするのに対して反対派は嘘がつけるから」みたいな言い方をするtweetがたくさんあるのだが,賛成派というか強硬推進派である村中氏やナビタスクリニックの人は科学的に正しくないことをたくさん言っているので事実誤認。しかも自分たちが過去に主張したことに責任をもたず,コロッと話を変える。まさかと思ったが本当にこれが今年1月の村中璃子氏のtweetだったのには呆れた。
むしろ,科学的に正しいことにこだわるために伝わりにくいのは,賛成派でも反対派でもなくて慎重派のスタンスだろう(村中氏らは慎重派に対しても反対派というレッテル貼りをしがちだったように思うが)。それにしても,村中氏,今頃になって9価じゃないととか男子全員接種でも効果は同じなどというオプションを,さも新しいことであるかのように喧伝するのは,控えめに言っても不誠実だと思う。そんなことはずっと前からわかっていて,だからこそ村中氏やナビタスクリニックの人に対して待ったを掛けていたのが,「積極的勧奨をしない」と決めた厚生労働省を含む慎重派のスタンスだった(時系列でぼくの日記から拾った関連情報を見ると確認できると思う)。村中氏の今日のtweetにおけるこの不誠実さも酷い。
十分な材料が揃ってから(効果についても副作用についても,まだ不十分であることは先のリンク先参照),いろいろなオプションの中からCRAなりCVMなりで政策決定をするのがまっとうな公衆衛生の役割だと思う。BuzzFeedの岩永さんもHPVワクチンについてだけ妙なスタンスになっているよなあ。
正しくあろうとする主張の方がわかりにくくなって,明らかに誤っている主張が広まっていく例としては,リベラルとネトウヨの論争の方が合っていると思う。リベラルは寛容であるという自己規定ゆえ,難癖に弱い。ネトウヨの方は嘘でも攻撃でも好き放題できるので,「我々の思想を受け入れないという不寛容さ」を自己矛盾として攻撃することができてしまうし,「自称リベラル」などというレッテル貼りによるアピールもできてしまう。
だから,リベラルも,少なくともリベラルを否定する言説に対してだけは不寛容で良いとしないと勝負にならない。
これは,コピーレフトの思想とも通底している。パブリックドメインというか著作権放棄では,誰かが私有を主張し他の人が自由に使えなくなってしまう事態が避けられないため,「そのソフトウェアを再配布する人は、変更してもしなくても、それをコピーし変更を加える自由を一緒に渡さなければならない」という制約をつけたStallmanは鋭かった。
まあしかし,単純な方がわかりやすいのは当然だし,新井紀子さんのRSTの結果や,最近文春オンラインに記事が載って話題になった,OECDによって2013年に行われたPIAACの結果(実は調査内容に対する疑問点も指摘されている)からすれば,複雑な文章やロジックを理解できない人も多いのだろう。
小泉政権がワンフレーズポリティクスで世の中を誑かしたときから,それが主流になってしまった。
世界中の事物にはすべてつながりがあり,長い迂回路を通って間接的に現れる影響(いわゆるバタフライエフェクトとか地球環境問題のような)は現状ではまだ予測不可能である以上,現実が複雑なのだから,わかりやすい単純化にはどうしても嘘が入ることが多いのは自明なはずだが,多くの人は「確率密度の雲の中で踏みこたえつつ」(川端裕人『エピデミック』に出てきたフィールド疫学者島袋ケイトの態度)順応的制御をするという対処は苦手だし嫌いなので,どうしても単純な説明を信じたくなってしまうのは当然かもしれない。
しかし世の中の多様性が増し格差が拡大しつつある(おそらく再分配とか強力なネガティブフィードバックを維持推進しない限り必然的にそうなる)現状において,単純化されたフレームからこぼれ落ちた現実が,まるでなかったことであるかのように見捨てられていくのは不公平だ。何かのきっかけで環境や状況が変わったら単純化されたフレームに最適化されたシステムは容易に崩壊する危険を秘めている。
多様性を多様なままに受け入れつつwell-beingにおける格差が縮小するようなセーフティを提供することこそが,国家や国際社会の義務だろう。気が向いたときに1日平均2~3時間働けば生きられた狩猟採集社会をやめて,生産活動を含めて制御可能な文明社会を築いて余剰を蓄えてきた,農耕開始以降の人類が目指してきた到達点は,当然そこにあるべきだと思う。少なくとも,単純な説明は嘘を含んでいるかもしれないし,少なくとも無視されたり捨象された例外があるかもしれない,という視点はもっておくべきと思う。
さて,この文章,どれくらいの人に伝わるだろうか?
今日は9:00から研究相談を受け,電話で入る相談に答えたりメールに返事をしたりしながらネットワーク仕事をやっていたが,面倒すぎる書式で簡単には埋まらない。センターはポートごとに個別の管理者を置くことを推奨してきているが,管理者申請を出さなかった人が使っているポートだけを部局管理者の管理下に置くということにせざるを得ないので確認作業が大変面倒になっている。やっぱり建物ごとだけの管理にする方が楽だったかも。
研究関係のメール返信とか院生の研究についての依頼状準備とかもあって,ネットワーク仕事があまり進まないままに夕方。ふと明日のスケジュールを確認したら某締め切り日だったことに気づいて愕然としている。これも急がなくてはならなかったか。
22:50頃疲れ果てて帰途に就いたが,食べるものがないのでLIFEに寄って食材を買ったりしていたら,帰宅は23:40頃になってしまった。レトルトご飯と納豆とサラダで晩飯。
リンクだけしておく。ダウンロード違法化に反対する緊急声明。
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