Latest update on 2021年7月4日 (日) at 18:43:39.
【第291回】 講義準備と会議(2020年1月22日)
- 6:30起床。豚肉野菜炒めを作り,レトルトご飯に豆腐と野沢菜ワカメを載せた主食と合わせて朝食。
- 書き忘れていたが,村上芽(2019)『少子化する世界』日経プレミアシリーズ,ISBN 978-4-532-26401-7(Amazon | honto | e-hon)を読了したのだった。かつて触れた際には専門用語の使い方が不正確な点が若干あることを指摘したが(他にも,図表1-5,1-6のように,横軸にTFR,縦軸に幸福度をとって各国の値をプロットし,回帰直線を引いたグラフの中に,あたかも点が幸福度,回帰直線がTFRであるかのようなキャプションを入れて意味がわからなくなっているように,若干のミスはあるが),全体としては人口学の用語や概念をかなり正しく使っていた。人口学者でない方が書いた本としては希有といえる。とくにコホート合計出生率(本書はコーホート合計特殊出生率と書いている。「コホート/コーホート」の違いは単なる表記慣習の違いで,「特殊」をつけるかどうかは,厚労省が採用しているように,かつて女性人口を分母とするfertility rateを,総人口を分母とするbirth rateと区別して特殊出生率とした訳語[本書p.90には英語でもfertility rateとbirth rateが微妙に区別されていないことがあると書かれているが,人口学の専門用語としては区別は明確である]を踏襲しているか,1994年に国際人口学会編の人口学用語辞典を日本人口学会が訳したとき,年齢別のbirth rateを合計した指標は計算しないから,もう合計出生率で良いとした訳語に従っているかの違いであり,どちらもありうる。なお,講義資料に書いたように,英語ではCohort Fertility Rateということも多いが,日本語では,期間合計出生率であるTFRと合わせて「合計」をつけるのが普通である)の意味と傾向を丁寧に紹介しているのは好感がもてる(もっとも,再生産期間を過ぎた後に既往出生児数を聞き取って平均した平均完結パリティとは,死亡や移動があるため,コホート合計出生率は異なるので,図表2-8は,コホート合計出生率の説明としては不正確である点に注意されたい。日本のように再生産年齢の女性の死亡や移動が割合としては無視できるくらい小さければ,両者にあまり差はでないが,途上国では随分異なる。移民が多ければ西欧でも差があるかもしれない)。フランス,ドイツ,イギリスについて,社会福祉の政策や制度を説明し,それらと出生率との関係を推論している点も示唆に富んでいた。参考資料にわりと丁寧に文献やウェブサイトが挙げられていたが,用語の整理のために,2002年の『人口大事典』か2018年の『人口学事典』を使っていただけると良かったかもしれない。人口学の方法論の適当な教科書がきわめて少ないという現状にも問題があるので,『Rで学ぶ人口分析(仮)』を早く出さないと。
- 黒須委員長から会員向けメーリングリストに告知が流れたので,Twitterでも以下を告知。
日本人口学会第72回大会の受付を開始しました。
- 大会参加登録は,https://meeting.paoj.org/reg.html
*締切: 2020年3月31日(火) 17:00 - 研究報告は,https://meeting.paoj.org/ask-for-abstract-upload.pdfに従って要旨を用意し,https://meeting.paoj.org/apply.htmlから申請できます。
*締切: 2020年2月22日(土) 17:00
- 名谷キャンパスに出勤し,国際交流関連の打ち合わせ。7月に1つ仕事が増えたが仕方ないか。
- BMJのオープンアクセスの論文で,BMJ 2020;368:l6669。看護師を対象にした前向きフォローアップ研究であるNurse Health Studyと,医療専門職者を対象とした前向きフォローアップ研究であるHealth Professionals Follow-up Studyのデータを使った栄養疫学研究(Walter C. Willet教授が共著者に入っている)で,糖尿病・心血管疾患・がんに罹患していない50歳平均余命が,リスクを低下させる生活習慣が1つもない女性では23.7年(95%信頼区間は22.6-24.7年)だったのに比べて,そういう生活習慣を4つか5つもっている女性では34.4年(33.1-35.5年)であり,男性では同様に23.5年(22.3-24.7年)と31.1年(29.5-32.5年)というのが主な結果。3つの疾患に限った健康余命のような値を計算しているわけだが,ちゃんと多相生命表を使っていて,しかもかなり顕著な差が出ている。ちなみに,この研究でリスクを低下させる生活習慣としているのは,(1)喫煙しないこと,(2)週に3時間半以上中程度から激しい身体活動をすること,(3)食事の質が良いこと(Alternate Healthy Eating Indexという,かつてWillet教授たちが提案した指標で上位40%),(4)アルコール摂取が中程度であること(1日当たりのアルコール摂取量が女性で5-15 g,男性で5-30 g),(5)正常体重(BMIが25未満)であること,である。
- 15:00から教員会議や教授会があるので,その前にEpidemiologyの講義資料は完成させたい。
- が,やはりそんなことは無理な話だった。17:00過ぎに教授会が終わって研究室に戻ってきてからEpidemiologyの講義資料作りの続きをしていて21:00を過ぎたが,まだまだ終わらない……。
- 結局日付が変わる10分前に研究室を出て,終電で帰宅。
(list)
▼前【290】(院生指導と講義準備と事務仕事(2020年1月21日)
) ▲次【292】(講義と博論審査(2020年1月23-24日)
) ●Top
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]