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【第1237回】 採点と成績処理の続きをしてから「災害時の要援護者への支援」テーマのセミナーへ(2016年2月14日)
- 7:30頃にリクライニングした椅子の上で目が覚めた。外を見ると雨はすっかり止んで青空が広がっていた。
- 午後には地域連携センターの災害関係のセミナーを聞くため県庁前に行かねばならないので,それまで研究室で成績処理の続き。朝飯は自販機で買ってきたバウムクーヘンとカロリーメイトで済ませた。
- 「彼ら」というフレーム設定をして排除の論理に走るのは,鄭君がいう第二の掟を強化する安直な手段だが,人類はどんなに長く見積もっても100万年も遡れば皆血縁関係があるのだから,生命の連続性から考えても,人類全体を仲間と考えて,鄭君がいう第一の掟を大事にする方が理に適っている。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが世界中から孤児を養子として迎え入れていることや,小説では『人類資金』でMがセキ・ユーキットを引き取って教育するとか,灰谷健次郎『天の瞳』における庵心籐子さんがフィリピンのスラムから養子を迎えるときの気持ち(広い意味でいえば人道主義)の根源の一端はここにあると思う。ヒトは合理的には物事を考えられないことが多々あるけれども(だから,合理的経済人という古典的経済学の仮定は批判されているわけだが),国際政治や外交に当たる当事者は感情ではなく合理的に(しかもshort-sightedでなくlong-termかつglobalに考えて)やって欲しいと切望する。
- 12:10頃研究室を出て,まず名谷PATIOのトンカツ屋で昼食をとってから地下鉄で県庁前へ。会場に着くのに若干迷ったが,13:30開始のセミナーにはギリギリ間に合った。第一部は障碍をもつ児童生徒の災害時支援についての講演がいくつかあった。共通した結論としては,平時からの共助的な人間関係を育むことによって,十分なコミュニケーションが取れるようにしておくということだったかと思う。これは,たしか災害保健学の講義で高山先生が語っていたことだと思うが,災害を見て気の毒だと思って初めてその場所に赴くのではなく,平時から訪れていて好きになっている場所でないと海外への支援は続かないという話とも通底する。第2部はあしなが育英会の方による震災遺児支援の話(とくに「レインボーハウス」という施設での活動の話)と,「災害で大切な人をなくされた方を支援するためのウェブサイト」の世話人のお一人である瀬藤先生からの「南海トラフ地震に備えて何を伝えていくのか」という話(南海トラフ地震は近い将来ほぼ確実に起こり,甚大な被害が予測されているけれども,それに備えて何ができるのか? という話で,例えば,昨年の阪神淡路大震災20年後に遺族に対して,関学と朝日新聞が共同で実施した調査結果では,いまだに「自分だけが助かったことが後ろめたい」と回答した人が多数いたこととか,支援者はPsychological First Aidを学んで活用するべきとか,トリアージ黒タグの家族への配慮が重要であるとか,惨事ストレスへの配慮が必要とか,情報経路の整備が大切であることとか,トラウマ=PTSDとグリーフ=悲嘆がまったく違うことであって,後者は忘れたくないことなので,異なるケアが必要であることとか)で,大変盛り沢山だった。
- 終了後はとりあえず直帰するつもり。
- 総合討論ではちょっとセミナーの主旨から外れてしまうと思ったので発言しなかったが,思ったことは,今回は「災害時の要援護者への支援」がテーマで,要援護者と地域社会の平時からのつながりが大事というのはわかるし,神戸市立友生支援学校でされている取り組みなど素晴らしいが,最大の問題は,イベントに参加するなど支援者になりそうな人が社会全体からみれば一握りに留まっていることだと思う。例えば災害発生時に聴覚障碍者が周りにいる人から情報を得るのに気後れしてしまうという状況を解決するためには,周りにいる可能性がある一般社会人が「優しい顔」でいる必要があって,そのためには,学生だったり社会人だったりという社会のマジョリティを構成する人々が平時から地域のつながりを生む場に参加する余裕がなくてはいけないが,今の世の中,多くの人はそんな余裕はないと言うに違いない。つまり問題は,「地域で生活している」といえる人がどれほどいるか? ということだ。自分自身を振り返ってみても,単身赴任先である神戸では,住んでいるところはほとんど眠りに帰るだけで,地域の行事に参加する暇はない。これは寂しいことだが,忙しすぎて,どうやったら改善できるのかわからない。
- 復路の電車とバスの中で,『水鏡推理II』を読了。全体としては小説的には面白かったし,前半に登場人物の台詞としてあった文科省の政策のせいで大学と基礎研究が苦境に陥っていることの指摘はその通りなので良く書いてくれたと思ったし,現実とは違う結末の読後感も悪くないが,改善を望みたい点がいくつか。ネタバレを避けるため詳しくは書けないが,動機からすれば当然やっているはずの行動を犯人がとっていないこと,メイントリックにちょっと無理があった(と思う)こと,authorshipについて著者あるいは共著者と筆頭著者(First author)と責任著者(Corresponding author)を混同しているように思われたところがあったこと,アクセプト通知の英文がおかしいこと,Referencesは参照文献とは普通言わないことと,「学会発表されたわけでなく,査読審査付き論文というわけでもありません。雑誌に載ったというだけです」と専門家が言うのは変であること(理系ならば学会発表よりも原著論文として学術雑誌に掲載される方が価値が上なのは常識だし,査読が無いということは依頼原稿かLetterか何かであって原著でないことを意味していて,いくらIFの高い一流誌であっても原著,せめて短報でなくては価値は低い。原著ならば商業誌でも査読者全員がリジェクトと言っているのに編集者が強引に掲載することはできないはず……たぶん),体脂肪率測定値のグラフの「見出し」の英語がSOMATIC FAT RATE MENSURATION DEVICEってのはあまりに変だろうということ,ニュースまとめサイトに書き込む人々とブロガーを混同していること,松岡圭祐が多用する英語のカタカナ書きルビで「お連れのかたは……」にホエアー・イズ・ユア・カレッジはありえないこと(たぶん,Where is your colleague? を誤解しているのだと思うが,カタカナ書きするならコリーグでなくてはいけない),は直した方が良いと思った。第3弾が6月15日発売だそうなので,発売前に研究者にチェックして貰った方が良いと思う。
- 晩飯は土曜の朝作ったスープの残り(鍋に蓋をしたままとっておいた)を再加熱し,レトルトご飯を温めたものに掛けて食べた。帰りがけに神戸駅のKOHYOスーパーで買った,最近気に入っているはるみという柑橘類をデザートにした。
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