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【第1899回】 前期4コマ講義最終日の翌日は午後から東京へ(2018年7月26-27日)
- 木曜は例によって4コマ講義だが,やっと15回目に辿り着いたので今日で終わり。公衆衛生はワクチン政策の話。WHOやCDCの資料を使いながら,文系の院生もいるのでワクチンによる疾病予防の原理とかから話し始め,WHOのスタンスとかGAVIとかGIVSとかGVAPとかまで3時間英語で喋り倒した。大事なことは,一次情報まで遡って,目的に対して用いられている検証方法が妥当か,あるいは結果から考察に際して拡大解釈がされていないかを注意深く読み解くこと,というのを例示した辺りで時間になった。1974年から展開されたEPIによって世界の子供の死亡が大幅に減ったのは確かだし,DPTやMMRはリスクベネフィットを考えるとたぶん世界中どこでも定期接種にするのは妥当だが,問題はその先。しかし総合的に政策として考えなくては対処できないことは間違いないし,WHOがそういうスタンスで情報を出していることはわかっておくべき。今年は講義サポートサイトのリンク集は充実させたけれども,来年はまとめた資料を作るべきか。それならいっそレビュー論文でも書くべきか? 医療人類学は安楽死・尊厳死を日本で合法化すべきかどうかについてのディベート。生老病死の捉え方は文化的な要素が大きいし法律は社会が決めるものだから,国や地域によって意見が違って当然だし,宗教観など考えたら個人ごとに違うわけで,ディベートテーマとして大変興味深い議論が展開された。人口学最終回はマイクロシミュレーションの原理とプログラムの解説をした後,2003年に発表したパラダイス村のシミュレーションを紹介したが,C++でやっていたのをRに移植して最適パラメータの自動探索をさせるべきだなあ……と考え始めてから,もう何年経ったことか?
- ベトナムからの博士後期の学生のワークショップ2を聴いて質疑をしてからミーティングで韓国で調査してきた院生の中間報告を聞いてコメントし,神戸駅に出て中華料理屋の焼肉定食を食べてからバスで帰宅。ドラゴンズはまた負けた。
- バスの中で,本間龍『ブラックボランティア』角川新書,ISBN 978-4-04-082192-4(Amazon | honto | e-hon)を読了。何日か前に書いた通り,ぼくも以前から東京オリンピックは反対だし,本間さんが書かれていることには概ね賛成だし,本書にはいろいろなデータや推定値が載っていて参考になる。ただし結論部分だけは同意できない。p.192に「最後に結論を言おう。組織委は,真夏の酷暑下でも責任感と誇りをもって働いてくれるボランティアを集めるために,全員を有償とし,交通費と宿泊費を支給すべきである……(中略)……どうしても有償化しないのなら,もう一般からのボランティア募集などやめて,スポンサー企業やマーケティング専任代理店として巨額の収益をあげる電通などから,社員をボランティアとして派遣してもらう形にすべき」とあって,これはもちろん組織委員会の核心的利益として本間さんが挙げている2点の後の方に牴触するから,どうせできないだろうというレトリックかもしれないのだが,ぼくの視点では,有償でも真夏の開催は認められない。責任感と誇りをもって働いてくれる人は,たとえ有償でも酷暑の環境下で無理をして熱中症になる危険がきわめて高い。有償にするとか社員を派遣してもらうとかでは,救急がパンクするリスクはまったく解決しない。救急がパンクしたらオリンピックとまったく関係なく他の急病や大怪我をした人も必要な医療を利用できなくなるわけで,人道的にそんなことは許されない。ぼくの結論としては9月末〜10月に延期するか,さもなくば返上するしかない。組織委員会から正式に「招致の時は嘘をつきましたが酷暑でスポーツ大会を運営できる環境ではなく,強行すると多数の熱中症等の被害者が出る可能性が高く,そうなったらオリンピックの長い歴史に泥を塗ることになり,致命的なイメージダウンになるため,強行できません。賠償金が必要なら払いますから9月末〜10月に延期させてください」とIOCにお詫びして延期を許してもらうしかないと思う。IOCやスポンサー企業(世界に13社しかないワールドパートナーの中にはコカコーラも入っているし,パナソニック,トヨタ自動車,ブリジストンと日本企業も3社入っている)にまともな理解力と判断力をもった人がいれば理解されるはず。
- 金曜は期末試験問題を作るため名谷に出勤したが,他の仕事が忙しくて問題づくりが進まない。とりあえず教務係には解答用紙の印刷だけ頼んだ。問題は日曜午後に東京から帰ってきてから自分で印刷するしかないな。
- Excelの表をマークダウン形式テキストと相互に変換するアドインとは,凄いなあ。個人的にはマークダウン形式よりLaTeXのtabularと相互変換できるものがあると嬉しいのだが。もしかしてもうあるのか?
- 16:00を過ぎた。あと30分くらいで名谷駅から東京に向かう予定(明日,法事をするため。台風が心配だが延期もできないので仕方ない)。
- 東京に移動する新幹線の中で東海ラジオを聴いていたが,まさかノーヒットノーランを食らうとは。山井投手はHQSだっただけに,唯一のチャンスを生かせなかったのが痛かった。昨日もそうだが,平田選手が鍵で,既に活躍しているのだけれども,さらに1本打ってくれたら勝てている気がする。木宮条太郎『水族館ガール5』実業之日本社文庫,ISBN 978-4-408-55426-6(Amazon | honto | e-hon)を読了。前半のイタチさんから水族館における客への体験の与え方はどうあるべきかを教えられる話は前置きで,徳島のウミガメの話が圧倒的に凄い。現場を見ない(養老さんが言うところのスルメを見てイカを語るような)研究者の話も,地域の子供たちと由香の対話も深いし,相変わらず生きもの好き,水族館好き,自然好きには堪らない物語である。それに加えて,この巻では,これまでなかなか進展しなかった梶先輩と由香の関係が少しだけ進展するラブストーリー展開も良い雰囲気を醸し出しているのだけれども,ここはドラマ化のときのキャストがあまりにハマっていたので,脳内では桐谷健太と松岡茉優で再生されてしまった。いやこれはドラマも続編作るしかないだろ。その後は東京に着くまでオセアニア学会仕事の続きをしよう(さすがにここで試験問題を作るわけにはいかないので)……と思ったが,メールの返事を打っていたら東京駅に着いてしまった。
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