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【第288回】 公務と修論チェック(2020年1月19日)
- 4:30起床。朝食を適当に作って食べ,6:30頃まで修論チェックの続き。終わらないが,とりあえず名谷キャンパスへ出勤。
- センター試験絡みの公務が終わったので修論チェックの続き。
- センター試験の数学は確率・統計の出題がかなりあるが,今年の,2015年の男性の市区町村別平均寿命の分布を使った問題を見て思ったこと3つ。(1)P10はどの都道府県だろう?→調べてみたところ(このページにある,統計表2を見ると),大阪市西成区の男性の平均寿命が73.5だったので,大阪府だとわかった(2)P1~P47は何の順番だろう? 都道府県別平均寿命の短い順?(3)そもそも人口規模が小さい市区町村があるため,通常の平均寿命の計算では信頼できないので,ベイズ推定を含めたかなりの仮定を置いた推定値(方法論としては,府川・清水 (1990) 小地域生命表のベイジアン・アプローチ. 人口学研究, 13: 37-49.に基づいているはず。これを紹介した本として,藤田一弥『見えないものをさぐる―それがベイズ ~ツールによる実践ベイズ統計~』オーム社,2015年の第6章の説明は,かなり簡略化されているがわかりやすいと思う)について,こんなにいろいろ記述統計を出すこと自体にあまり意味が無いのでは? とも思ったりする。もっとも,この方法だと極端に低い値は都道府県レベルの平均値に近づけられるはずなのに,西成区のこの低さは,かなり悲惨な状況であることを示していて,それはそれで公衆衛生的には大きな問題だが。
- いやまあ,問題としては中央値,四分位範囲(三重大学の奥村先生も指摘されているように,分位数を求めるためのRのquantile()関数にはtypeが1から9まであり,fivenum()というTukeyの定義通りの四分位範囲―Tukeyはヒンジと呼んだ―を返す関数もあるが,日本の高校数学の定義はそのどれとも異なり,今回のセンター試験の解答は高校数学の定義でないと正解にならないものだったらしいが……自分では確認していないが,もしそうなら数学の問題としても良くないと思う),ヒストグラム,箱ひげ図などを理解しているかどうかを問うているのであって,数値そのものの意味はどうでも良いのかもしれないが,もう少し適当な数値例はなかったのだろうか。
- ところで,厚労省サイトを検索していて,昨年3月に健康寿命のあり方に関する有識者研究会報告書が出ていることに気づいたのだが,WHO方式(というかGBD方式)のHALEについてはp.6で「その意義を確かめつつも、我が国の健康寿命の算出に導入することは難しいとの結論に至った」と書いてあって,Nomura et al.のLancet論文はまったく無視かと思ったら,p.18の図表10には入っていた。しかし計算方法としてはサリバン法にしか触れられておらず,多相生命表を使おうという議論は,未だに無いようだ。
- 修論チェックが一区切りついたところで21:30なので,院生にメールを送って帰ることにした。明日も講義があるので徹夜は避けたいが。
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