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【第308回】 楽観視はまだ早い(2020年2月9-10日)
- 日曜はチェンソーで庭の松,樫,銀杏を切り倒したので疲れた。雪も5 cmくらい積もっていたので雪かきしたが,午後から晴れたので必要なかったかもしれない。何とか追試問題は完成したので,後は印刷するだけだ。
- またメールで仕事が舞い込んだ。
- NHKスペシャルを見てから(忽那先生の数例しか診ていない時点での臨床的な印象に対して,東大のウイルス研究者や押谷先生が,大半の人は軽症なので診た症例が偶然軽症例ばかりだったのだろう,という含みで,重症化する人も間違いなくいるのだからまだ楽観視は早いと言われていたのは重要だし,西浦さんのコメントにあった潜伏期間中でも感染3日目くらいから感染力があると推定されるという話も重要だし,WHOの進藤さんが生中継でコメントされたのには驚いたが重要なコメントであった。火曜深夜に再放送があるそうなので,2019-nCoVについて正しく理解したいと思うなら,見逃した人は見るべき),夜行バスに乗って神戸へ。
- 普通に生活している人が予防としてできることが風邪予防と同じことしかない,ということを知らしめるのも重要かもしれないが,全世界的な公衆衛生対策の必要性を軽視させるようなコメントは,この時点では軽率と思う。
- 7:15三宮着。いったん帰宅してシャワーを浴び,朝食をとってから名谷キャンパスへ出勤。
- 武漢以外では2019-nCoVのCFRが0.17%でインフルエンザの倍という東京新聞の記事だが,直接インフルエンザによる死亡数は年間1000-2000人程度と推定されている。インフルエンザの年間推定受診者数は1000万人程度(概ね確定診断がついた患者数と思って良いと思う)なので,インフルエンザのCFRは0.01-0.02%という計算になるが(おそらくIFRにしたらもう1桁小さい),どうして2倍と言えるのか? 津田さんのコメント「武漢の致死率が高い一番の要因は、多くいる軽症者が把握されていないからだ」は,むしろ武漢のCFRが普通のCFRに近いことを意味しているのではないか(もちろん医療体制が不十分で,それが整えば多少は改善するかもしれないが,Nスペで押谷先生が言われていたように,武漢の医療水準はそこまで低くないはず)。武漢以外では積極的に検査しているから軽症の人も無症状の人も把握されて,IFRに近い値になっているとも考えられるし,発症からの経過日数が武漢より短いから,まだ死者が少ないだけかもしれない。この記事の「倍程度」は記者が考えたようだが(さすがに津田さんはそんなことは言わないはず),「厚生労働省によると、日本国内のインフルエンザ感染者数(推定)は、年間一千万人規模。感染がもとで死亡する人は約一万人とされ、致死率は0・1%程度となる」は,感染者数と推定受診者数を混同しているし,「感染がもとで死亡する人」というのは,インフルエンザの流行によって間接的に増える死亡をすべて含めて推定された超過死亡の話なので,2019-nCoVのIFR(に近い値)と比較するのはナンセンス(そもそも,超過死亡数を確定診断がついた患者数で割った0.1%という値には何の意味も無い)。
- 追試完了。今年の公衆衛生学は期末試験を受けた全員が合格となった。
- 何日か前の日経の記事,英語版にもなっているとは知らなかった。
- クルーズ船で新たに検査結果がわかった57名中,陽性は6名だったという,厚労省からのリリースが出ていた。
- さらに103名中65名陽性と判明したという厚労省のリリース。
- 浴槽に湯を溜めて入浴し,洗濯機を回したまま眠ってしまった。
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