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【第315回】 院生の相談に乗ってから成績処理完了するつもりだったが(2020年2月18日)
- 6:30に起きたが眠くて耐えられそうになかったので二度寝し,7:30起床。浴槽に湯を貯めて入浴後,残り湯を使って洗濯しつつ朝食。干してから出勤し,10:00過ぎから予約されていた院生の相談に乗った。成績登録が今日締め切りというメールが教務から来たので,急がねば。
- しかし2つのデマというかメディアの勇み足にはストップを掛けておきたい。
- CDCの2月14日のpress briefingを聴くか読むかして,米国のインフルエンザ流行が実は新型コロナかも?という見出しは酷い。2つのメッセージを混同している。CDCからの発表は,これまで封じ込めには成功しているが,今後の感染拡大に備えて,(中国渡航歴や感染者との接触がなくても)インフルエンザ様症状を呈する人に検査できるようにするため,5カ所の保健センターに検査できる仕組みを整備したという話と,12月はB型,途中からA(H1N1)が主なインフルエンザによる患者や死者が増えていて,公衆衛生上の大きな危機であるという話。2つは別の話だ。そもそも2800万人は確定診断がついた人の推定人数だから,もし全員がCOVID-19だったなら死者は56万人を超えるはずで,14000人では済まない。CFRが0.05%というのも,日本のインフルエンザのCFRである0.01-0.02%よりは高いが,米国は格差が大きくまともに医療を受けられない人もたくさんいるので,乳児死亡率も高いし平均寿命も短い国なので,インフルエンザのCFRとしても不思議はない。もちろん,1月中旬以降にインフルエンザ患者と診断された中に2019-nCoV感染者が少しはいるかもしれないが。
- アジア人男性が重症化ハイリスクとわかったという話も見かけるが,元になった論文は,成人8人の肺の細胞43,134個それぞれについてRNA発現を調べた研究で,2019-nCoVが細胞に侵入するときのレセプターとなるACE2を発現している細胞の割合が,細胞ドナーの年齢や喫煙とは関係なく,男性2人では1.66%であったのに対して女性6人では0.41%(U検定でp=0.07。なぜ二項検定でなくU検定なのか不明だが)であり,1人のアジア人男性ドナーで2.50%だったのに対して白人とアフリカ系アメリカ人では0.47%だったから,この違いが新型コロナウイルスパンデミックとかつてのSARS-CoVパンデミックがアジアに集中していることを説明するかもしれない,と書いているものだ。この結果からアジア人男性がハイリスクという一般化をすることが馬鹿げているのは,説明するまでもないと思う。
- メディアのブラフみたいな情報に惑わされないためには,情報源を確かめて,どういう対象についてどういう方法で得られた情報なのかを確認する必要がある。
- リトグリの去年のMonste Groove Partyの11月3日最終日の公演をノーカット収録した映像作品が4月8日にリリースとのこと。ツアー中とはソロパフォーマンスが違っていたとの話なので,早く見たい。Blu-rayの2枚組を予約するつもり。
- 昼飯はカップ麺で済ませ,ともかく今日は成績処理を終わらせることが優先。
- 東京大学の入試方針だと,風邪様症状があっても医療機関を受診せずに受験すると思われるので,まずいのではなかろうか。文科省は振替とかセンターだけで判定とか柔軟に対応するようにと指示しているが。
- 専門家会議の意見がやっと反映されたのか,官邸や厚労省の「国民の皆様へ」から,「我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません」が削除された。
- 20:30を過ぎたところで,残すところはオムニバスの国際保健だけなのだが,成績評価をまだいただいていない教員がいたことに気づいたので,今日の完了は無理だな。
- 23:00前に帰途に就いた。
- 岩田先生がダイヤモンドプリンセスに乗り込んで追い出された経緯を日本語と英語でYouTubeで報告されていて,凄い勢いで拡散されている。ダイヤモンドプリンセス内の指揮系統が混乱しているというか,システマティックに対処できていないことはわかる。東日本大震災のとき,石巻市の医療がうまく運営し続けられたのは,事前に業務分担してシステマティックに動ける組織を作って訓練していたから,と石井正先生の著書に書かれていたが,感染症アウトブレイクは一種の災害なので(という視点ではDMATが入るのはわからないでもないが,通常DMATは発災後2~3日以内の超短期対応を担当するので,現状ダイヤモンドプリンセスにDMATが対応するのは原則的にはおかしい),組織的対処が必要だ。しかし,FETP修了者のネットワークがそのように活用できるのかといえば,たぶん権限も無ければ指揮系統が独立して動ける形になっていなくて,岩田先生の動画から推察されるように,政治家から厚労官僚を通じた横やりが随時入るのだろうから期待は薄い。公的資料に名前が出てこないのに厚労省に招集されているらしい高山義浩先生は,たぶん対策本部に毎回厚労省から提出している資料をまとめる作業をさせられているのだろうが(政治家しかいない対策本部に,この資料が15分だけ毎日報告されているという事実は,災害にも感染症にも素人で,自分の言葉も持っていない政治家たちが,専門家より上の立場で指揮を執りたがっていることを意味する。人間は権力に従って黒いものを白く塗ることさえするかもしれないが,ウイルスは忖度もしてくれなければ命令にも従わないので失敗はそのまま露呈する),もし本当にその仕事をさせられているのだとしたら(憶測に過ぎないが),高山先生には役不足も甚だしい。以前から書いているように,佐久総合病院で地域に寄り添う医療を実践され,世界中の被災地や紛争地での救援医療にも長年携わってきているのでギリギリの状態での交渉もできれば臨機応変の判断もでき,沖縄県立中部病院で感染症専門医としても経験があって,それらの経験を語る言葉ももっている高山先生こそ,この場の指揮者に相応しいと思う。事前準備がないし組織もない状態で指揮をとれと言われても困るかもしれないが,下働きをするよりは指揮権をもつ方が,高山先生の力を生かせると思う(SNS等で,元厚労省,とするコメントが散見されるが,2009年の新型インフルエンザのとき,佐久総合病院から対策室に呼ばれて出向していただけで,官僚ではないし医系技官でもない。今回も招集されて出向しているだけで,本当は沖縄に戻りたいだろう。そう思ってこれまであまり触れずにいたが,ご本人がFacebookで岩田先生の乗船に際して果たした役割を発表され,「権限はない」と繰り返されていた点から考えると,たぶん覚悟を決められたのであろう。大御所や官僚や政治家とも喧嘩をせずに対話ができ,最悪の事態を常に視野に入れながらネゴシエーションができる専門家として,国は高山先生に指揮権を委ねるべきだと思う。昔の政治家だったら,信頼できる専門家に全権委任して,責任は自分が取る,というような人がいたと思うが,今の政治家は逆なのが悲劇だ)。
- 西浦さんがFacebookで,Grantz K, Metcalf CJE, Lessler J (15th Feb 2020) Dispersion vs. Control.を紹介して,パンデミックを避けられる可能性が出てきたかも,と評価しているのだが,ハーバードのLipsitch教授は,同じ論文を見た上で,武漢以外ではR0<1にできる可能性があることを踏まえた上で,その可能性は低いので世界人口の40-70%が感染するパンデミックになるだろうと2日前に書かれているので,まだどちらに転ぶかわからず,対処の手を緩めてはいけない。蔓延期になってからマスギャザリングを止めるのでは遅く,蔓延状態になるのを防ぐためにマスギャザリングはできる限り避けるべきだと思う。
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