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【第317回】 書類仕事と修論査読(2020年2月20日)
- 7:00起床。名谷キャンパスへ出勤。
- 明日はGSICSの修論審査会なので,自分が副査になっている論文を読んでおかねばならない。publishされた論文や国際学術誌に投稿された論文の査読より疲れる。
- 合間にメールの返事とか書類仕事とか。
- 博士後期の院生が投稿していた論文がアクセプトされたという朗報。大変嬉しい。半年遅れることになるが,学位審査自体は,たぶん難なく通るだろう。
- 2月17日付けで中国CDCから数万人規模の患者のデータのサマリーが出ていることをGigazineの記事で知った(それ以前にtwitterで見かけたような気もするがリンクを見つけられなかった。Gigazineはソースへのリンクがあるのが素晴らしい)。これで漸く重症化リスクについて定量的なことが少しはわかりそうだ。
- Table 1を見ると,全体のCFRが2.3%とこれまで言われてきた通りだ。確かに高齢者でCFRが高い傾向は顕著にある。10歳未満は死者ゼロで,10代から40代では0.2%~0.4%にとどまり,50代で1.3%,60代で3.6%,70代で8.0%,80歳以上では14.8%である。0.2%というと低い気がするかもしれないが,10代や20代で
感染したら確定診断がついたら1000人に2人亡くなるというリスクが,風邪のように普通に罹る感染症によってもたらされるとしたら,社会的ダメージが大きすぎる。男性のCFRが2.8%,女性のCFRが1.7%で,Rでprop.test(c(653, 370), c(22981, 21691))を実行すると,男性の方が統計的に有意にCFRが高いことはわかる。ただし男女別年齢分布がわからないので(なぜクロス集計を出してくれていないのか謎だが),もしかしたら男性患者の方が高齢者が多いのかもしれない。湖北省のCFRが2.9%(979/33367),それ以外のCFRが0.4%(44/11305)というのは,これまで言われてきた通りだ。Figure 1によると武漢,湖北省,中国全体で,COVID-19確定症例の年齢分布や性比はほぼ同様なので,武漢や湖北省の患者に男性が多いとか高齢者が多いということはない。基礎疾患として高血圧がある人はCFRが6.0%,糖尿病がある人は7.3%,心疾患がある人は10.5%,慢性呼吸器疾患がある人は6.3%,がんがある人は5.6%と高いのもこれまで言われてきた通りだが,何も基礎疾患がなくても0.9%というのは高いと言わざるを得ない。発症日別のCFRが2019年12月31日以前で14.4%,2020年1月1日-10日で15.6%と高く,そこから10日ごとに5.7%,1.9%と低下し,2月1日以降発症の人では0.8%となっているのは,時間が経つほど適切な全身管理により救命に成功する症例が増えてきたのかもしれないし,発症から回復して退院または死亡までの時間がかなり長いためにまだ亡くなっていないということなのかもしれない。後で発症した人の方が湖北省以外で多いことも関係しているかもしれない(ヘルスワーカーについてはTable 2に武漢,武漢以外の湖北省,湖北省以外の中国で発症日別にCFRを計算しているのだが,同じ形の表を確定症例全体について提供すれば良いのに)。これの生データを使ってロジスティック回帰分析をすれば,どの要因が相対的に強く死亡に影響しているかについて推論が可能なはずなので,是非やって欲しいものだ。ていうか,簡単にできるので,データを匿名化して公開してくれればいいのだが。
- ちなみに,2010年に厚労省がまとめた資料の22ページ右の図に2009年のパンデミックインフルエンザの致命割合が,確定患者数1万人当たり死者数の形で掲載されているが,CFRにすれば全年齢で0.001%,40歳未満はそれ以下で,40代で0.0031%,50代で0.0066%,60代で0.0147%,70歳以上で0.0282%だった。2009年のパンデミックインフルエンザの致命割合は日本ではとくに低かったことは考慮しなくてはいけないが,この数字と比べると,COVID-19の致命割合がいかに高いかわかるだろう。
- 今日は18:30から定例のミーティング。M1の学生によるタイでの研究計画の発表。
- その後も副査になっている修論の査読をしていたがしんどい。22:00前に帰途に就き,LIFEで食材を買ってから帰宅し,適当に晩飯を作って食べた。
- ななきさとえさんが自ら進めた再発企画により,アナログLPがレーザーターンテーブルでデジタル化された『パンドラの呪文』,数日前に直販で購入手続きをしていたのだが,郵便受けに入っていて嬉しい。早速リッピングしてスマホに入れ,聴いていると,学生の頃アナログLPを買ってテープにダビングし,Walkman-DC2に大きな密閉型ヘッドフォンをつけて移動中聴いていた記憶が甦ってきた。「ラチャチャ」「黄色い魔法使い」と始まるオープニング2曲の,どことなくオリエンタル風かつファンタジー風味なメロディと扇情的なボーカルをドキドキしながら聴いていた記憶があるが,今聴くとバックの演奏の凄さに圧倒される。とはいえ,このアルバムでもっとも凄いのは,やはり表題曲「パンドラの呪文」だと思うが。
(list)
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