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Dengue fever memo

Made by Minato Nakazawa, on 8 October 2014. The latest update was done on 8 October 2014. Contact address is minato-nakazawa[at]umin.net ([at] should be replaced by "@").

これまでデング熱について鵯記で書き散らしてきたことをまとめて採録するページ。

2014年9月25日「蚊対策の技術」(当日の鵯記
2012年11月のTEDの講演であるHadyn Parry: Re-engineering mosquitos to fight diseaseが,"The mosquito has killed more humans than any other creature in human history."という見出しでTweetされた。さすがTEDの講演で,Oxitecの人が,人類を最も殺している動物はライオンなどの猛獣じゃなく,ペスト菌でもなくて,多くの感染症を媒介する蚊なのだ! これまでも大問題で毎年大勢亡くなっているマラリアに加え,最近はAedes aegypti(ネッタイシマカ)が媒介するデング熱が世界中に広まっていて問題だ,とくに4種のウイルスのうち,以前に罹ったのと別のウイルスに感染するとDHFやDSSになりやすく問題だ! と概論から語り始め,現状の対策としてはAedes aegyptiを減らすことしかできないが,殺ボウフラ剤にも殺虫剤にも限界があるので,不妊(厳密に言えば受精後致死)遺伝子を組み込んだオスを放飼することで効果的にAedes aegyptiを減らせるのだ! と彼らの技術をアピールしていた。ケイマン諸島,ブラジル,マレーシアで試験して有効だったので,今後もっと大規模な試験をやると言って喝采を受けていたので,おそらくこの講演でOxitecは首尾良く出資を集めたであろう。マラリアによる死者数の推定値が大きい方の文献値を紹介しているとか,今回の代々木公園での感染のように,ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)もデングウイルスを媒介できることを無視しているとか,話に厳密さを欠いていて,突っ込みどころもあるのだけれども,TEDの講演として聴衆への訴求力をもたせるための話の進め方,強調効果をもたせるための間のとり方など,上手いとしかいいようがないものだった。 なお,Oxitecはオクスフォード大発ベンチャーで,この他にもいろいろな遺伝子組換えビジネスをやっており,講演の最後にはそこもちゃっかりアピールしていた。一方,NHK科学文化部のTweetで紹介された(Wolbachiaを「物質」という書き方には違和感を感じたが)蚊対策技術は,これとはまったく異なり,発想としては伝播阻止ワクチン(transmission blocking vaccine)に近いもので,体内に細胞内共生細菌であるWolbachiaを注入した蚊を放飼して,Wolbachiaにデングウイルスの増殖を抑制させるという発想である(ポルトガル語だが計画を実施しているFiocruzによる解説)。蚊を減らすのではなくウイルスだけを減らすという考え方は,生態系への影響がより小さいと思われる。色々調べていたら,今年4月に出たActa tropicaのSupplement "Biology and behaviour of male mosquitoes in relation to new approaches to control disease transmitting mosquitoes"に,この技術も含めて蚊対策関連の興味深い新技術がいくつも紹介されていた。オープンアクセスなので読んでみなくては。なお,日本語メディアとしては,Gigazineの記事が詳しくて参考になると思う。
2014年9月20日(当日の鵯記
Dengue Fever, Zika & Chikungunyaに書かれている南太平洋諸国でのデング熱,Zika,チクングニアの流行状況(8月29日時点)をみると,デングはかなり広まっているが,後二者はまだ限定的。媒介蚊は一緒だから広まる危険はある。どうやって患者の移動を制約するか,どうやってヒトと蚊のコンタクトを減らすか。
2014年9月11日(当日の鵯記
岩田健太郎先生のtweetを拝見し,簡単な地図へのプロットを描いてみた(Rコード。ただし,#コメントで書いたようにESRI JapanからshpをダウンロードしてEpiMap(EpiInfoに入っているので無料で使えるけれども,ESRIからライセンスされているソフトで,とても操作がわかりやすい)などで加工しないと,このコードは実行できない。あと,地名から緯度経度情報への変換は,Geocodingを使って得た数値をハードコードしているが,GeocodingにはXMLを返すAPIがあるので,それを使うと情報更新が楽になると思う)。
デングウイルス感染が疑われる場所の地図表示(2014年9月11日現在)
たぶん,厚労省サイトのデング熱についてからリンクされているデング熱の国内感染症例について(第十報)(現時点ではこれが最新だが,毎日のように新しい情報が追加された続報が掲載されている)のデータを入力してanimationパッケージを使って検出日ごとに推定感染場所のプロットを更新するようにすれば,岩田先生が参照されているエボラの地図のようなものも描けると思うし,Shinyサーバでやれば随時更新もできそう。暇がないのでやらないが,このRコードを自由に使っていただいて構わないので,実現してくださる方がいると嬉しい。
これくらいの描画なら30分もあればできてしまうRとmaptoolsとEpiMap,それにネットでの情報入手のしやすさは,一昔前なら考えられないほど便利になったものだと思う。
■昨夜録画しておいた,NHKクローズアップ現代のデングの話を視聴。感染したNHK職員は労災になるのかが気になった。ダンスの練習中に感染したとされる最初に見つかった患者さんへのインタビューが貴重。デング熱感染を最初に疑ったのはお母さんだったのか。原因不明の高熱で,治療に効果がなく,娘の足が蚊に刺されてボコボコになっていたことが気になってFORTHのサイトでデング熱の特徴に合致することを見つけ,医師に尋ねてみたということだ。これまで蚊の専門家があまり出てこないなあと思っていたが,この番組には長崎大の砂原さんが登場し,ヒトスジシマカの生活史を詳しく説明して,駆除の難しさを説明している。いい番組だと思う。その後の解説が感染研の高崎さんという人選も流石だ。ちゃんと虫除け剤を「塗る」と言われていたし,5〜8割は無症状,つまり感染発症指数が20%から50%ということも言われている。ただ,50メートルしか移動しないと断言してしまったのはどうかなあ。リオでの実験放飼では6日で800メートル広がる可能性が指摘されているという論文はご存じないのだろうか? その次の,西宮での研究で,住宅地の感染拡大の難しさを説明したのもいいコンテンツだと思うし,難しさだけでなく,地域の活動としてゴミ拾いと各戸敷地内まで含めた水溜まりへの薬剤散布をして,蚊を減らしているのは素晴らしい。地域保健活動の好例。
■ソロモン諸島の麻疹アウトブレイクについて,現在,ホニアラ市内の何ヶ所もの診療所で麻疹ワクチン接種を無料で実施中なのだが,簡単には終息しそうにない。OCHA Pacificのtweetによると,935人も患者が出ているそうだ。南太平洋ではサモアでチクングニアも流行中。ポリネシアにはハマダラカがいないのでマラリアはないのだが,Aedes属の蚊はいるということだ。そういう意味では,デング熱もいつ流行しても不思議ではないし,実際にイースター島ではアウトブレイクが起こったこともあるので,デング熱流行のフロントラインとしての太平洋諸国という研究は重要だと思うんだがなあ(去年申請した研究費は通らなかった)。
2014年9月5日(当日の鵯記
昨夜録画しておいた,News23の亀岡先生のコメントを拝見。実験室では卵経由でウイルスが伝わるというのは重要なポイント。自然界では起こりにくいとされていたが,古い論文で,環境中のヒトスジシマカの雄でデングウイルスをもっているものがいて,雌から雄へは感染しないので,それらの雄は卵経由でデングウイルスに感染したのだろうと論じているものがあった。卵経由でも伝わるなら,感染拡大に関わる様相はまったく違ってくる。とくに,第2世代の蚊を経由しても感染力を維持しているとしたら,R0がどこまで高くなるのか見当もつかない。しかし,これまでの研究では,R0はそこまで高くないから,卵経由で伝わるということは,もしあるとしても稀なのではないか(そうだとすると今回のトラップで検出された感染蚊の割合が高すぎるのが不思議だが)。感染拡大を食い止めるには,空き缶とかまで含めて,少しでも水が溜まっているところには殺ボウフラ剤を撒くか水を無くすかして,成虫に対しては葉っぱの裏なども含めて徹底的な殺虫剤散布をするのが筋となるだろう。あと,これも古い論文だが,リオデジャネイロでルビジウムでマークしたネッタイシマカとヒトスジシマカを実験的に放った研究から,6日で800メートルは飛ぶということがわかっている。一日の飛翔が50メートルから100メートルとしても,何日も生き続けるので,代々木公園に隣接する明治神宮にも感染蚊が広がっているというのは,普通にありそうなことだ。どうせなら明治神宮も封鎖した方がいいと思う。
2014年9月4日(当日の鵯記
殺虫剤を撒いた日より後にサンプル(ドライアイスベイトトラップ)した蚊からデングウイルスが検出されたという報道からすると,あの程度の殺虫剤散布では不十分だったのだろう(このトラップによっても減っているはずとはいえ)。となれば,患者から吸血した蚊の寿命が尽きる9月末くらいまでは,代々木公園周辺で新規感染が続く可能性はゼロではないので,当面蚊が好みそうな場所は封鎖するという判断は合理的だと思う。あと,取材に行く人は,日本で普通に売られているスプレーの虫除けではなく,DEETをたっぷり含んだtropical strengthの昆虫忌避剤(液体の)を塗って行くべきだろう。
2014年9月2日(当日の鵯記
■厚生労働省のサイトに,今回,代々木公園でデング熱に感染した患者の一覧pdfがあった。現時点で34人。13番の人が少し潜伏期が長いのが気になるが,この人を除けば数日から1週間の潜伏期で,蚊に吸血されたのは8月10日から26日の間だったから,海外で感染して血液中にデングウイルスがいる状態で8月7日〜10日頃に代々木公園に来た発端患者(この人は輸入症例)から吸血した数匹から十数匹の蚊が,殺虫剤を撒いた日まで吸血を続けて患者を増やしたという解釈と矛盾しない。となれば,殺虫剤を撒いた日より前に代々木公園に行って吸血された人がこれから発症することは,あと2,3日はありうるだろう。R0がイースター島のアウトブレイクなみに高いことになるが,それだけ蚊と人の密度が高かったと考えられる。大都市内の公園という環境がデング熱伝播には適していることは,シンガポールで流行が続いている(在シンガポール日本大使館のサイト内pdf)ことからもわかるだろう。
■デング熱のワクチンについては,数日前にもリンクしたが,夜明けか?とLancetのEditorialが褒めている研究がある。アジア5ヶ国での第3相臨床試験で,六千何百人かのワクチン接種群,三千何百人かのプラセボ接種群を比べて,防御の有効性は56.5%だったこと(両群とも百人ちょっと発症した),ワクチン接種から4週間以内の重大な副作用は両群とも約1%だったこと,3回接種したけれども1回でも有効だったこと,D2以外への有効性が高かったことを示したものだ。が,有効性56.5%というのは,もちろんこれまでよりいいのだが,ワクチンとしては物足りない気がしてしまう。実用化にはまだ時間がかかりそうだ。しかしアウトカムとしては,デング熱よりもDHFやDSSを防げるかどうかの方が大事だろうから,そこをターゲットにした研究が待たれる。
2014年9月1日(当日の鵯記
「デング熱の疑い、都内で十数人 代々木公園で感染か」という見出しの記事が日本経済新聞に出ているが,発熱だけでは何ともいえないので,確定診断の結果が待たれる。ここに書かれているように,急激な発熱の他に急激な血小板減少が必須所見だし,随伴所見として頭痛,筋肉痛,関節痛などがあれば,もう少し特異度が高まるけれども,日経の記事を読む限りでは,この十数人は代々木公園に行って発熱したために検査中というだけのようだ。ちなみにデング熱のbasic reproduction number(R0)については,蚊が媒介することもあり,いろいろな推定方法があって複雑だが,この論文のTable S1(のソースはこの論文)によると1〜6程度,ブラジルのデータで2.36とか,イースター島でのアウトブレイクでは27.2(95%信頼区間が14.8〜49.3)という論文も出ているが,概ね3〜6と考えられるので,もし確定患者数が6程度で収まれば,最初の輸入症例から1匹あるいは数匹の蚊が媒介して直接感染させた患者だけということになるし,そうでなければ代々木公園でデングウイルスに感染した患者から,さらに別の蚊が媒介して感染拡大させた可能性が出てくる。代々木公園に行った日と発症した日も含めた情報が一覧で出てくれば,もう少しちゃんと分析できるんだが。あと気になるのは,すべての患者について,デングウイルスはD1だったのか,発症後にヤブカに刺されたか(刺されるような場所に行ったか)。当然,確認していると思うが,その辺りの情報がメディアに出てこないのが歯痒い。
2014年8月28日(当日の鵯記
■デング熱に国内で感染した埼玉のケースの発生をうけて,東京都感染症情報センターのデング熱のページがすぐにアップデートされていた。tweetで教えていただいた,厚生労働省の報道発表ページが公開されるまでには,それから少し時間がかかった。この件については,ドイツ人旅行者が日本でデング熱に感染したという報告が出たときの鵯記からリンクしたこのページは参考になる。直近に東京でD1の輸入症例があるから、その患者の誰かの血を吸った蚊に刺されたのか?
■2例目,3例目の国内感染デング熱患者が見つかったとのことだが,夜のニュースによると,たぶん1例目の患者と同じ蚊に,代々木公園で吸血された可能性が高いようだ。このページのリストにある33番から36番の患者の誰かが帰国後入院前に代々木公園に行ったことが確認できれば,今回のエピデミックは追跡できたことになる。代々木公園に広域の殺虫剤散布をしていたから,たぶんこれで終息すると思う(採録時付記:少しだけ読みが甘かった)。Wer-jでは2012年にデング熱の報告がされているが,そこでトライアル中と書かれていたワクチンについては,7月28日にメモした通り,今年大きな進展があった。Lancetの元論文には,以前タイで試してあまり有効でなかったワクチンと同じものだが,今回5ヶ国の多集団で試したところ,D2を除いてかなりの防御効果が見られたとのことだった。DHFやDSSは怖いけれども,デング熱対策はわりと見通しが明るいのではなかろうか。
2014年7月28日(当日の鵯記
Bill Gatesのtweetで,デング熱のワクチンについてのBBCニュースが紹介されていた。Lancetの元論文を読んでみなくては。
2014年1月25日(当日の鵯記
一昨日,堀 成美さんのtweetで,昨年9月にデング熱を発症したドイツ人患者についての論文がEurosurveillanceに発表されたのを知り,tweetだけしていたのを,鵯記にも採録しておく。「ドイツ人旅行者に感染したのはD2だった。論文の結論としては笛吹でブドウ狩り中に感染した可能性が高いとのことだが,11日の鵯記に引用した通り,昨年8月の山梨の症例はゼロ,長野の一例はD3なので,成田か東京の方が可能性が高いと思う。」
(採録時付記:ただし輸入症例のすべてが感染研で確定診断されたとは限らないので,もしかすると感染研以外で確定診断をつけた輸入症例が山梨か長野にいたのかもしれないという可能性は排除できない)
2014年1月11日(当日の鵯記
昨日のドイツ人が日本を旅行中にデング熱に感染したという話だが,このページで昨年の県別輸入症例数をみると(デング熱は4類感染症なので,医師が診断したら全数報告されているし,高熱と頭痛がひどいので,医療機関を受診しない人も少ないと思われる。もっとも,誤診され見逃されたまま治癒している可能性はあるが……),長野県1人,山梨県ゼロなので,そこで偶々輸入症例の血を吸ったヒトスジシマカが再び件のドイツ人の血を吸ったという可能性はきわめて低いと思う。ただし,この長野県の1人は8月に発症しているので,可能性はゼロとはいえない。厚生労働省報道発表からリンクされている別紙1の昨日のPROMED記事の抄訳に載っている立ち寄り先の中では,東京都で症例報告数が多い(といっても66例だし,人口が多いことと,海外旅行に行く人が多いということなんだと思う。この報告数から考えると,国内で感染環が成立してしまっている可能性も,ほぼありえないと思う)。立ち寄り先としては含まれていないが,成田空港がある千葉県での感染可能性もあるだろう。改めて月別症例報告をみると,8月の長野県の患者はデングウイルスの型がD3,千葉県はD2なので,ドイツ人女性が感染したデングウイルスの型がそれ以外なら東京で感染した可能性が高いと思う。ドイツからの情報に型が含まれていないので,これ以上はわからないが。他の可能性としては,直行便で往復したのが嘘で,デング熱患者が多発しているシンガポールなどを経由する便で,経由地で感染した? くらいしか思い浮かばない。
2014年1月10日(当日の鵯記
今日驚いたのは,堀 成美さんがtweetされた,日本を旅行している間にデング熱に罹ったというドイツ人女性の話だ。夕方になってTwitterのトレンドワードにもデング熱が入った。Aedes albopictusは確かに日本にもいるから,媒介した可能性はゼロではないが,この60年間,輸入症例しかないはずなので,偶々輸入症例の血を吸った蚊がこの女性の血を吸ったことになり,俄には信じがたいほど低い確率だと思う。最初は飛行機がシンガポール経由とかいう話ではないのかと思ったが,堀さんのリンク先の文書を読むと,往復ともフランクフルトから成田への直行便だったと書かれていた。それが本当なら,既に日本でも感染環が成立してしまっている可能性が高いと思う。注目しなくてはいけない。
2013年10月18日(当日の鵯記
気候変動の健康影響の話は,いろいろな場所の例が紹介されて興味深かった。時間があったので,コメントとしてマレーシアの気候変動がデング流行に与える影響の予測コラボでわかった問題点3つを紹介した。WHO神戸センターの方が,気候変動に対する人々の意識を変えるのが難しいという話もされていたことを踏まえて,ホテルがクーラーの効き過ぎで寒かったことが最も印象的で,講義していただいた通り,意識を変えることが難しいのを実感した,といってコメントに落ちをつけたつもりだったのだが,あまり受けなかった。
2013年9月6日(当日の鵯記
(補足:この日からのマレーシア出張は,地球温暖化にともなうデング熱流行拡大について対策するためにマレーシア政府保健省が進めている研究について,WHO経由で助言を依頼され,マラリアの数理モデルを含む疫学研究の専門家として呼ばれたものである)
8:30からの予定だったが若干遅れて始まった会議は,クアラルンプールのデング熱流行状況のサーベイランスデータとその質という話から,ダイナミックモデルを使った予測を試してみたという話まで。とりあえず質の向上とモデルの中身の吟味は必要。当然だが。全国規模ではまた別のアプローチが必要だろう。ともあれ,途中2回のコーヒーブレイクとか昼飯とか晩飯とかを挟んで夜までホテルに缶詰だった。
(補足2:この関連で読んだ論文のうちとくに重要なものを,鵯記にはメモしなかったが,以下リストしておく)
  • Dana A. Focks, Eric Daniels, Dan G. Haile and Jame E. Keesling. A simulation model of the epidemiology of urban dengue fever: literature analysis, model development, preliminary validation, and samples of simulation results. Am. J. Trop. Hyg., 53(5), 1995, 489-506.(CIMSiM/DENSiMを開発したという論文。ただし筆頭著者は既に研究をリタイアしている)
  • Magori K, et al. (2009) Skeeter Buster: A stochastic, spatially explicit modeling tool for studying Aedes aegypti population replacement and population suppression strategies. PLoS Neglected Tropical Diseases, 3(9): e508, 18pp.(CIMSiM/DENSiMの開発者であるDr. Dana A. Focksと協力し,ノースカロライナ州立大のDr. Alun L. Lloydのグループが元のモデルをC++で書き直し,同じパラメータのときの出力が完全にオリジナルのプログラムと一致することを確認した後で改良したものを使った論文)
  • Xu C, Legros M, Gould F, Lloyd AL (2010) Understanding uncertainties in model-based predictions of Aedes aegypti population dynamics. PLoS Negl Trop Dis 4(9): e830. doi:10.1371/journal.pntd.0000830(この論文は,CIMSim/DENSiMを改良したモデルで結果の不確実性を評価できるようにしたもので,FASTアルゴリズムを使ったソフトを開発し,この評価が半自動的にできるようにしたとのこと。Dr. Alun L. Lloydグループに途上国からコンタクトすればC++バージョンのソースコードが入手できると思う)
  • Alicia M. Ellis ,* Andres J. Garcia , Dana A. Focks , Amy C. Morrison , and Thomas W. Scott Parameterization and Sensitivity Analysis of a Complex Simulation Model for Mosquito Population Dynamics, Dengue Transmission, and Their Control. Am. J. Trop. Med. Hyg., 85(2), 2011, pp. 257-264
  • Blacksell SD (2012) Commercial Dengue Rapid Diagnostic Tests for Point-of-Care Application: Recent Evaluations and Future Needs? Journal of Biomedicine and Biotechnology, 2012, 151967, 12pp [doi:10.1155/2012/151967](デング熱検査の市販されている迅速診断キットを比較評価した論文)
  • Bannister-Tyrrell M, et al. (2013) Weather-driven variation in dengue activity in Australia examined using a process-based modeling approach. Am. J. Trop. Med. Hyg., 88(1): 65-72.(CIMSiM/DENSiMを使ってオーストラリアでの気候変動の影響を評価した論文)
2013年3月8日(当日の鵯記
うわ。ホニアラでデング熱流行との情報。知らなかった。もちろん蚊はたくさんいるし,流行の素地はあったから,これまでも研究しなくてはと言ってきたのだが。ABC Newsではとっくに報道されていた。まあdengue hemorrhagic feverの患者は発生していないそうで,それが不幸中の幸いか。それにしてもサンタクルスの地震・津波といい,先日ほぼ全国を襲った大雨といい,このホニアラのデング熱流行といい,今年のソロモン諸島は災害に続けて襲われているので心配。タシンボコやパラダイスの人たちは元気だろうか。
2012年8月1日(当日の鵯記
森山さんの日記で引用されていたWIRED JAPANのSCIENCEカテゴリの記事なんだが,かなり変だ。ネッタイシマカはデングや黄熱病は媒介するがマラリアは媒介できないし,マラリアの病原体はウイルスではなくて原虫だ。マラリア原虫は蚊の腸管で接合してオオシストを形成し,そこから出たスポロゾイトが唾液腺に溜まらないと,ヒトへの感染が起こらないので,寄主をかなり選ぶ。つまり,そういう機能がある媒介蚊はハマダラカ属(Anopheles)に限られているのだ。訳が変なのか,原文から間違っているのか知らないが,明らかにいろいろ間違っている。

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