Latest update on 2021年7月4日 (日) at 18:43:39.
【第304回】 博士後期入試(追加募集分)の日(2020年2月5日)
- 寝坊した。
- 急ぎのメールに返事を書き,鶏肉野菜炒めとレトルトご飯で朝食を済ませ,シャワーを浴びて髪を洗ってから出勤。
- 今日は博士後期入試(追加募集分)の日なので,その業務に時間をとられる。
- 香港でも1例死者が出たので,昨日の西浦さんたちの推定値は大きく変わる可能性がある(と思ったが,JCMの短報を見る限りではIFRの分子で中国の国内外で区別した推定をしているわけではなさそうなので,ほとんど影響なさそう)。流行初期には1例でも推定値に大きく影響する。
- クルーズ船の乗客のうち10人から2019-nCoVが検出されたと厚労省からの発表があった。まだ検疫中なので,もっと増えるかもしれない。Johns HopkinsやWHOの時空間情報で,中国以外の患者数増加にはブレーキが掛かり始めたかのように見えたのは,一時的なギャップだったのかもしれない。引き続き注意が必要。とはいえ,一般人ができることは,人混みを避けること,なるべく不特定多数が触る可能性があるものには触らないこと,外出から戻ったら必ず石鹸で手洗いすること,体力を落とさないように節制した生活をすること(だから自分も食事と睡眠は最低限確保している),くらいしかないのだが。
- 専門科目試験中は待機,その後面接と採点なのだが,待機中は査読ができるか。
- 西浦さんが言われるように第一線の研究者には本当に時間が無いので,メディア対応とか査読とかはシニア層の義務であろうと思われ,できる範囲でやっているが,それ以外の業務からも逃れられないので,断ったりなかなか対応できなくてもご寛恕いただきたい。
- さっき書き忘れていたが,もちろん,『病気は社会が引き起こす』の著者である木村知先生が言われる通り,一般人ができることとして,風邪様症状があったら学校や会社を休んで自宅療養し(これは勤務先や学校が認める社会的コンセンサスさえできれば即時実行可能),重症化の兆しがあったら医療機関に電話で確認してから受診する(ここの部分はもっと医療側の体制強化が必要)のは前提。
- IHR2005はグローバリゼーション前提で,人やモノの移動なしには世界中の人々の生活が成り立たないので,貿易や交通の制限は必要最小限に抑えつつ,犠牲者を増やさないために有効な対策をうつ,というものなので,WHO事務局長の発言は当然そういうスタンスになる。西浦さんの発表にあったように,既に半分くらいの感染が不顕性感染者から起こっているとしたら,症状がある人だけの移動を止める対策の効果はほとんど無いし,症状がない人まですべての中国との人口移動と物流を止めることはデメリットの方が大きいだろう(もっとも,もし,今後も世界的にCFRが2-3%であると判明したら,その限りではないが)。
- 面接と採点完了。修論の査読コメント書きの続きと公衆衛生学の採点の続きと追試問題作り。
- PH領域会議が終わって,査読コメント書きが終わったら18:30を過ぎた。これから採点と追試問題作り。
- 「ただの風邪」言説はデマ。ヒトに感染する既知のコロナウイルスは6種類あって,うち4種類が「ただの風邪」の原因となり,残りのSARSとMERSが高い確率で急性の重症の肺炎を起こすものだった。2019-nCoVは新たにヒトに感染するようになった7種類目のコロナウイルスで,上気道にとどまって風邪症状で治る場合もあれば,肺に移行して肺炎になる場合もあるので,ただの風邪でもないし,SARSやMERSのようなものでもない。何度も書いているが,IFRが0.3-0.6%としても,風邪やインフルエンザより2桁大きい値である。ぱっと見ただけの一般人や臨床医は100人に1人より少なければ低リスクという印象を受けてしまうのかもしれないが,公衆衛生的には小さくない。
- ゲイツ財団が新型コロナウイルス対策に1億ドル提供すると表明した。眠る前にWHOの記者会見のライブ中継を見ていたら,Tedros事務局長が歓迎の意を表していた(Tweetもしていた)。全速力でやるべき研究は,どういう条件で肺炎に移行するのかとそれをどうすれば防げるのかの解明と,肺炎になったときに効く薬の開発であろう。長期的にはワクチン開発が望ましいが,短期間では無理と思う。どれも巨額の金がかかるはずなので,ゲイツ財団の決定は大きい。Tedros事務局長は,いま対策を進めれば奏功する可能性もある,という主旨のことを何度も言っていた。
- 昨日の西浦さんの会見を取材して書かれた毎日新聞の記事がミスリードで,それがYahooニュースに載ったことから,臨床医などが「ただの風邪だった」という誤解を広めている。WHOがどういう対応を取っているかを見れば,「ただの風邪」でないし,2009年のパンデミックインフルエンザとも全然違うことは明らかだろうに。
- 2月4日付けで,2009年のパンデミックインフルエンザ流行時も示唆に富んだコラムを書いていたリスクコミュニケーションの専門家,Peter Sandmanが「封じ込めについてのリスクコミュニケーション―2019年新型コロナウイルス」というコラムを公開していた。
(list)
▼前【303】(採点とか審査とか(2020年2月4日)
) ▲次【305】(シンポジウムとかミーティングとか(2020年2月6日)
) ●Top
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]