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【第312回】 今日も成績評価の続きなのだが進まない(2020年2月14日)
- 7:00起床。レトルトご飯とレトルトカレーを電子レンジ加熱して朝食を済ませつつテレビをつけていたら,渡航医学の濱田先生が,COVID-19の致命割合がインフルエンザと変わらないという誤った情報を語っていた。その後の番組のコメンテータの玉川氏も同じ誤情報を語っていた(本当は2桁違う)。
- 岩田先生が死亡数で語るべきとtweetしているのは,そういう誤解やデマを避けるためには正しい方針と思う。ただし,死亡数は絶対リスクであって公衆衛生政策上重要だが,「感染者総数×IFR」か「確定診断がついた患者数×CFR」の結果として出てくる数字なのだから,それ自体を直接予測することはできないし,相対リスクがどうでもいいわけではない(絶対リスクと相対リスク参照)。
- 臨床の生データが論文でオープンにされているわけではないから,たぶん臨床論文を書いている著者グループにしかできないのだが,診断時または入院時のさまざまなデータ(白血球数とかCRPとかサイトカイン類とか,もちろん年齢とか基礎疾患の有無も含めて)から,ロジスティック回帰分析などで,その後重症化してICUに入るリスク因子や死亡転帰を辿るリスク因子を特定できるのではないだろうか。回帰式からROCをやって,AUCが十分に大きければ,診断時または入院時の血液検査データから重症化リスクが高い人を見つけるための最適カットオフ値も求められる可能性がある。誰かやってないだろうか。AUCが0.99くらいになる方法が見つかれば凄く意味は大きいはずなんだが。
- ともかく早く成績評価を済ませよう。
- 3月末のラオス研究班の班会議について確認メールが入り,東京出張の飛行機と宿の手配をしていなかったことを思い出したので,急いで手続きした。
- たぶんどんな経過を辿るにせよ,COVID-19の流行状況は9月頃までには定常化するはずで,そのときまだIHR2005の枠組みが生きているならば,国際交通や貿易も正常化しているはずなので,東京五輪は今からでも10月に延期した方が良いと思う。熱中症リスクも避けられるし。7月ではまだ影響が残っている可能性は十分にある。
- 人口学会のメールで,『人口統計学』の著者,岡崎陽一先生が亡くなったことを知った。歴史人口学の速水融先生に続いて,最近,日本の人口学の泰斗が次々に亡くなっていくなあ。
- 厚労大臣が今日の会見で,「咳や発熱等の症状がある方で、特に高齢者の方、基礎疾患のある方についてはなおさらでありますが、症状に不安がある場合には、まずそれぞれの地域にあります帰国者・接触者相談センターにご相談いただきたい」と述べた。2009年のパンデミックインフルエンザのときに発熱外来に人が殺到して対応に時間が掛かってしまったことを反省し,外来窓口は公表せず,相談センターに電話連絡すると教えてくれる対応にしたとのこと(県の保健所のそれぞれ,地方中核市や政令指定都市の市保健所,県の疾病対策課に1つずつ回線が用意されているようなので,概ね二次医療圏単位での対応ということを意味する)。フリーダイヤルにした方が良いと思うが,現在は普通の電話だなあ。
- クルーズ船の陽性者は昨日付けで公表された第8報によると,延べ713名を検査したうち218名とのこと。死亡後に感染が判明した80代女性,その方の娘婿であるタクシー運転手(発症は80代女性の方が早いが,人によって潜伏期間は違うので,この2人の間で感染が起こっていたとしても,向きは特定できない),和歌山県の医師,千葉県の20代男性の情報も公表された。既にメディアでも言われているように,検査の範囲を広げたことによって一気に見つかっただけで,もっと広まってしまっている可能性は高いだろう。
- 官房長官もそうなのだろうと思うが,知らない人のために書いておくと,リンクが辿れない症例が見つかることは,流行していることのエビデンスとなる。厚労省サイトは消し忘れているだけだと思うが,まだ「我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません」という文章が残っているからといって,それを根拠に青梅マラソンのようなマスギャザリングイベントを開くのは悪手過ぎる。少しでも感染者が含まれている可能性がある状態でマスギャザリングイベントをやったら,Rが高くなることは考えなくても明らかだろう。それによって患者数増加速度が高まり,重症化する人数もそれに比例して増えるはずなので,医療施設の収容能力を危険に曝すことになる。厚労省のサイト管理者は早く修正した方がいいし,青梅マラソン運営者は中止の決断をすべきと思う。
- ぼくがここにいくら書いてもパブリシティが低いのが現状なので,誰かメディア訴求力のある人が,2019-nCoVのメモとリンク集を広めてくれると嬉しい。少なくともリンク集は一次情報を厳選しているので役に立つはず。
- 何度も書いているが,高齢者や基礎疾患がある方は,COVID-19に限らず,すべての病気が重症化しやすいハイリスクグループなのであって(もっといえば,免疫が弱かったら感染自体もしやすくても不思議はない),COVID-19の重症化に気をつけなくてはいけないのは,この方たちだけではない。臨床系の論文から,高齢者でなくても,基礎疾患がなくても,無視できない割合で重症化してICUに入っていることは,1月24日時点で既にわかっている。専門家としてメディアに登場する方や政治家は,「高齢者や基礎疾患がある方はとくに気をつけて」というのではなく,すべての人の感染リスクを減らすような行動を呼びかけるべき。人混みに行かない(マスギャザリングイベントは緊急性がなければ中止するかオンライン化する。延期するだけでもエピデミックカーブのピークを後ろにずらせるしピークの高さを下げることができるので,医療施設のキャパシティを超える患者増加の回避に寄与する)とか,風邪様症状がある方はできる限り外出を避ける(公共交通機関の利用やイベント参加はしない。仕事も休む。どうしても外出しなくてはいけないときは鼻と口を覆うマスク必須)とか,石鹸での手洗いやアルコール含浸シートで手を拭うとかいったことを継続するのが大事。
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