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【第326回】 原稿チェック(2020年3月1日)
- 7:00に目が覚めた。「サンデーLIVE」という番組がパルスオキシメータに触れた(追記:軽症なら自宅療養の方が良い,という文脈で,じゃあ,どういうときに病院を受診したら良いのか? ということから,自覚症状の話を先にして,でもそれではわかりにくいので,何か数字でわかるものはないの? ということで紹介されたのであって,とある医療系tweetが誤解して流したような,それでCOVID-19感染がわかるなどというトンデモではなかったことは付言しておきたい)。岸田さんが随分前にtweetしていたが,テレビでは初めてではなかろうか。あの時点では良かったが,関係ないものまで買い占めが起きている今,テレビで流すのは良いかどうか微妙。ただ,併せてSpO2が91-95%のときの自覚症状の目安として,歩くと息切れすること,90%未満の目安としてじっとしていても息切れすることを挙げていたのと,換気を勧めていたのは良い。トイレットペーパーやコメが売り切れたことに関連して,外出しない方が良いという町の人の声を流していたが,ここは「外出しない」ではなくて「人混みにいかない」であることをコメントして欲しかったところ。昨日の大阪府知事会見とライブハウスの外観を流したのは止めて欲しかった。首相談話にあった15分の検査って,先日産総研が発表したやつだろうが,RT-PCRだったらChain Reactionのために一定時間は要するはずなので,何か違う原理を使うのだろうか。仮にそうだとしても,問題は時間ではなく,検出限界が現状より低いところまでいくかどうかで,検出系よりもサンプリング方法の問題であるような気もするので(体内のどこかに存在するが,鼻腔スワブや咽頭スワブの中に偶々ウイルスが含まれていなかったら,増幅できない),検査上の問題解決にはつながらないだろう。文科省から5000万円の資金をもらって長崎大学熱研を中心とするウイルス学者のグループが取り組んでいるのは,たぶんELISAで血液検査をする簡易検査方法(いわゆるPOCTの1つで,マラリアやデングのRDTとかA型インフルエンザのクイックテストのように,サンプル採取したその場で結果がでるもの)だが,それとも違うのだろうなあ。産総研の発表はスルーしていたが読んでみないと……検索してみたら,ブログで解説している方がいて,その記事によると,RT-PCRという原理は変わらず,Chain Reactionを高速化する技術のようだ。サンプリング方法や輸送方法の新技術はないのだろうか。
- テレビでもSNSでも昨日の首相会見で全国一斉休校の根拠が示されなかったのは不満とするコメントが多いが,根拠などないのだから示せるわけがない。台湾のようなクラス単位や学校単位の休校基準の決め方なら合理的だが,それは元々日本の学校保健法でも休校は学校単位で判断されるものとなっているし,2009年のパンデミックインフルエンザ流行の前に定められたH5N1を想定した行動計画でも1例でも患者が出た都道府県という単位であった。今回全国一斉休校とすることで,逆に,感染者が出ている地域でさえ自由登校とか学童保育で引き受けるとかしてしまっては,感染拡大防止のためにはむしろマイナスだろう。
- 「サンデーモーニング」に出ている上氏,感染研の過去の成り立ちまで持ち出して不信を煽ってどうする。病院に行くことによって感染するリスク,検査を受けに行くことで手すりとかドアノブを介して接触感染するリスクを考えたら,風邪症状はあるが肺炎に至っていない人は,自宅で静養する方が良いのは明らかであろう。サンデーモーニング,再燃の問題について扱っているが,コメントした医師が肛門スワブの検査での陰性を退院基準に入れるべきとする論文に触れないのは残念。さっき見た「サンデーLIVE」の方がずっとマシな情報を伝えていた。
- スポーツコーナーのゲストが元スワローズ監督の真中さんだったのだが,「今日のゲストはマナカさんです」と聞いて,は! manakaさん? と一瞬思ってしまったのは我ながら変かも。
- 今日は某査読と,院生が投稿準備のために修論から書き直した原稿のチェックと,実は昨日が締め切りだった原稿2つを多少は進めるのがミッション。
- 天気が良いので海回りで出勤したいところだが,東京マラソンのテレビ中継を見始めたら,大迫選手の走りに惹きつけられてしまっている。沿道の声援はしない方が良いと思うが(公道の歩道を通ることを禁止はできないだろうが,来ないでください,というアナウンスぐらいはできたのではないか)。
- おお,日本新が出た。凄いな。プラン通りにやり遂げる格好良さ。しかし,やはり東アフリカ勢との遺伝的な差は如何ともしがたいのかもしれないが。
- 20周年記念にR-1.0.0のCDに(たぶん)Core Teamの人たちがサインした写真。Rの来し方行く末を考えると感無量。
- 日経新聞は専門家会議メンバーの鼎談を報じてくれているが,ここで押谷先生が語っていることが本当なら,西浦さんが触れていた「最初のミッション」は北海道ではなくて和歌山だったのかもしれない。
- 堀口逸子先生のtweet。効果的なリスコミ方法を探る試みの一つ。良いことを思いついた方は,是非ご協力頂きたい。
- キラキラシャミセニスト川嶋志乃舞さんによる東京事変「群青日和」のカバー。三味線でこんなに格好いい音が出せるのかという驚き。とくに終盤の三味線によるアドリブ演奏と思われる部分の超絶テクニックにはぶっ飛んだ。
- WHOが中国とのジョイントミッションで,COVID-19についての報告書(2020年2月25日)を公開していた。岸田さんがNHKによるこの報告書の紹介記事を紹介してくれていて知った。原文が公開されているのだから,NHKもpdfへのリンクをしておいて欲しいところ。ざっと目を通したが,データから見える傾向は,先日の中国CDCの報告と同様だった(80歳以上の高齢者のCFRは,先日の報告書よりさらに高く20%を超えていたが)。概ね良いまとめだとは思うが,2つ以上の要因の組み合わせによる重症化リスクや致命リスクへの影響評価が分析されていないのと,CFRのバイアスに触れていながらIFRに触れてくれていないのが残念だった。
- WHOの個人防護用具の合理的な利用についての中間報告(2020年2月27日)が,日報No.40からリンクされている。既に亀田病院のICUの林先生が一部訳されているとのこと。
- ぼくの昨日のメモに言及されているのだが,「ファクトチェック」と題して藁人形論法をされると困ってしまう。ハテナへのコメントの仕方がわからないので,たぶん書いた方がこのページを読んでくださっていると信じてここに書くが,ぼくはADEがあるなんて一言も書いていない(DENV2では再感染時にDHFになるリスクが高く,そのメカニズムとしてADEを想定した論文が多々あるが,SARS-CoV-2ではまだ学術的に論じられるほど報告がないと認識している)。ロイターの記事は,現在の退院基準で退院した後,再度RT-PCR陽性になる人が広東省CDCの記者会見によると14%いたということを紹介するために引用しただけだし,2月27日にも紹介したZhang W et al. "Molecular and serological investigation of 2019-nCoV infected patients: implication of multiple shedding routes"は,鼻腔スワブや咽頭スワブの検査結果が2回陰性になった後でも腸や血液に残っている場合があって,そこから再燃するのだろうという意味で触れた。つまり,再燃があるという報告は1例ではなく,かなり信じるに足りるエビデンスがある,という主旨なので,どうしてそういう誤読をされるのかまったくわからない。
- 今日のドラゴンズはボロ負けであった。カープの髙橋大樹選手,2打席連続ホームランってヤバいな。
- London School of Hygiene and Tropical Medicine (LSHTM)が3月23日から始める無料のオンライン講義COVID-19: Tackling the Novel Coronavirus - Find out more about the outbreak of the novel coronavirus and its implications around the world.。扱う内容は,COVID-19はどのように出現してどのように同定されたか,世界のCOVID-19に対する公衆衛生学的指標,COVID-19対策を進めるためには何が必要か,といったことで,想定受講者は,ヘルスケア従事者と,我々がこのアウトブレイクにどう対処すべきかに関心がある人,とのこと。
- 感染研へのデマが広まっていてまずいと思っていたが,所長名できっぱり否定した文書が出た。
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