目次

書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『ソリトンの悪魔』

書名出版社
ソリトンの悪魔朝日ソノラマ
著者出版年
梅原克文1998年12月



Mar 18 (thu), 1999, 22:19

八方美人男 <omy18ds40.stm.mesh.ad.jp> website

 前作『二重螺旋の悪魔』でも感じたことだが、この著者のアイディアの秀逸さ、豊富な専門知識、そしてストーリーテラーとしての才能には、ただただ脱帽するばかりだ。その著者が、いまだ謎の部分が多く、それゆえに人々を魅了してやまない海底世界を舞台にして、またとんでもない物語をつくってきた。それが、本書『ソリトンの悪魔』である。

 今回の主人公倉瀬厚志は、日本の最西端・与那国島の近海で操業している海底油田採掘基地「うみがめ200」の責任者だ。物語は、その基地の近くにある、完成間近であった海上情報都市「オーシャンテクノポリス」が、謎の生物の襲撃を受けて沈没させられる、という、もう冒頭からハイテンションな展開ではじまる。しかもその生物は、多量の衝撃波や超音波をまきちらしているにもかかわらず、肉眼でも、また潜水艦のソナーにも反応しない、まさに見えない生物なのだ。さらに、その都市の下を遊覧していた潜水艇には厚志のひとり娘である美玲が乗っていて、事故にまきこまれたまま連絡がとれず、そのうえ事故の余波をくらって「うみがめ200」でも事故が発生してしまう。
 はたして娘は無事なのか? 基地での事故はどうなるのか? そして何より、あの正体不明の敵は何物なのか? とにかく次から次へと事件を引き起こし、多くの謎を提示することで物語を進めていくやり方は、たとえばシドニィ・シェルダンの諸作品などが代表的だが、本書はそれに豊富な専門知識を加えることによって、近未来SFでありながら限りなくリアリティーのある物語世界を構築することに成功していると言える。潜水艦同士の派手な立ちまわりももちろんあるし、それでなくてもハードアクション映画さながらの緊迫した場面が連続するので、人によってはめまいを覚える人もいるかもしれないが、けっして飽きることはないと断言しよう。文庫本の帯にある「ジェットコースター・ノベル」という表現は、そういう意味ではまさに正鵠を射ている。

 ちなみに、タイトルにもある「ソリトン」とは、「波の非線形効果と分散効果とか釣り合った結果、半永久的に存在する孤立波」だそうだ。なぜ本書のタイトルが『ソリトンの悪魔』なのか、ということも含めて、ぜひ一読をお勧めする。

 なお、同じく梅原克文の傑作『二重螺旋の悪魔』に興味のある方は、下記URLをクリック。


Nov 06 (wed), 2002, 00:50

Lion <kaad291.airnet.ne.jp>

前作「二重螺旋の悪魔」でも感じたのだが、

前半の主人公があまりに無鉄砲に感じられるのは私だけでしょうか?

特に探査艇でのシーンなどは・・・どうなんでしょう?


でも、後半になるにつれて主人公はヒーロー化してきますし、

何よりも物語全体のスピード感がすばらしいと思います。

着想も奇想天外であるとともに、しっかりと科学的な説明が物語とともになされているので

薄っぺらさを感じません。


読み応えのある作品でした。


旧書評掲示板保存ファイルトップへ