最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
電脳進化論 | 朝日文庫 |
著者 | 出版年 |
立花 隆 | 1998 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
本書は1993年に出た本の文庫落ちである。700円という手頃な値段になると,こういう本も買おうという気になる。
コンピュータの本など,ふつうは5年も経てば古くて読めたものではないのだが,この本は今でも読む価値はあると思う。前半のスーパーコンピュータについて書かれた部分は,面白いのだが,ハードウェアと用途に話が集中していて,コンパイラ開発についてあまり書かれていないのが物足りない。ユーザとしては普通にコードを書くわけであるが,それを如何に効率よくベクトル計算に最適化してくれるか,というコンパイラの能力が大事なのではないか? 1章くらい割かれてもよかったのではないか。
後は,コンピュータ・シミュレーションの効用について書かれているのだが,これがなかなか面白い。原子力の分野で使われる予定と紹介されているモンテカルロ専用コンピュータは,当然のことだが人口シミュレーションにも有効だろう。条件分岐専用のパイプラインを作ってしまうとは凄い。本書に書かれている通りなら,もうできたはずだが,どうなっているのだろうか?
「いくらコンピュータが進歩しても,実物を使った実験は欠かせない」という,本書内で何度もでてくる主張には共感する。まあ原爆だけは実物はやめて欲しいけど(あんなもの開発しなければよいのだから)。