最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
ホワイトアウト | 新潮文庫 |
著者 | 出版年 |
真保裕一(Yu-ichi SHINPO) | 1998 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
山岳冒険小説の傑作である。関口苑生さんの解説に書かれている通り,叙事的な描写の積み重ねによって深い叙情を呼び起こすことに成功している。ぼくは冬山へは行ったことがないので,知らない用語もあったのだが,それを気にせずに読み進まずにはいられないほど,物語世界に引き込まれた。
描いているテーマは,極限状況における自己犠牲的自己実現である。その意味では,サン=テグジュペリの「夜間飛行」に通ずるものがあった。テログループによるダムの占拠と身代金要求というサスペンス仕立てでなくてもよかったかもしれない。厚みと切れ味の選択で厚みをとったということなのだろう。なお,もちろんサスペンス自体は成功していて,興奮させられはするので,たんにサスペンスを楽しみたいときにもお薦めできることを付記しておく。
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
今週末19日から映画が公開される。微妙にテーマが変わっているような気がするが,映画版の脚本も原作者の真保裕一氏が書いているそうだから原作の雰囲気を壊すようなことはなかろう。
映画に期待するあまり,「ホワイトアウト完全白書」(講談社),サウンドトラックCD(ビクター)も買ってしまった。なお,映画版のオフィシャルサイトは,http://www.whiteout-movie.com/である。
なかしま <n194230.ap.plala.or.jp>
小説版の『ホワイトアウト』を先に読んでから映画を見ると、少し、「あれっ?」と思う人がいるのではないだろうか。
ラストがだいぶ違うのだ。
小説版ではテロリストが銃を撃ったから雪崩が起きてしまったのに、映画版では、富樫(織田祐二)が銃(カラシニコフ・銃器名AK47)を引いて、雪崩を起こしているのだ。
まあ、アクション超大作としてはラストでああいうのをやってもらいたいのも希望するが・・・。
ストーリーも緻密だし、文庫だと分厚いし、読み応えがある。ハードカバー(現在若干入手困難。古本屋なら400円程度で買える)よりも文庫版の方をお勧めする。
映画は東宝より2980円で発売されている。DVDも同値段で購入可能。
とにかく、冒険小説として最高の出来映えだ。
必読。