最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
マレー半島すちゃらか紀行 | 新潮文庫 |
著者 | 出版年 |
若竹七海・加門七海・高野宣李 | 1998 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
3年前に出た本の文庫落ち。文庫に入るにあたり,座談会がついた。若竹さんは「ぼくのミステリな日常」で知られる作家,加門さんはオカルト系のライター,高野さんはフリーのOAオペレーターだということである。30代の女性3人による,16日間のマレーシア旅行記である。
文体は面白い。が,彼女たちのいう「ネコブル」や「貴人」の描写は,針小棒大な印象を受ける。トラブルというほどのトラブルでないからネコブルと呼ぶとか,言語的な発想は面白いし,ジャングルや海の描写は読ませるのだが,事物の解釈の仕方にはついてゆけない。オカルト的だったり,運命論的だったり,被害妄想的だったり……要するに勝手な解釈であり,異文化に触れて変わることがない。与那覇さんや藤原新也さんの旅行記に比べると表層的である。もちろん,「すちゃらか」というタイトルからして,意図的にその辺を狙っているのだろうし,そのジャングルやその海に行きたくはなるのだから,その意味では紀行文として成功しているといっていいのかもしれないが。