最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
こちらニッポン… | ハルキ文庫 |
著者 | 出版年 |
小松左京 | 1998 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
言わずと知れた日本SF界の巨人,小松左京氏によって1976年から1977年にかけて朝日新聞紙上で発表されたものだが,最近ハルキ文庫に入って再刊された。解説を瀬名秀明さんが新たにつけているのだが,これが分析的な解説で面白い。もちろん本作自体の解説をネタバレなしにやるのは至難のわざだと思うし,そのせいかどうか知らないが,瀬名さんの解説も「小松左京論」に近いが,一読の価値ありと思う(ぼくの「果しなき流れの果に」の評価は瀬名さんとは違うけど)。
内容に関しては,思考実験という意味では紛れもなくこれはSFである。現代文明のあり方について考えさせられる。凄いと思うのは,今読んでもさほど古くなっていないことである。発表されたのは20年も前なのに。さらに,場面転換のタイミングとか,ディテールの書き込みなど秀逸であり,小説として一流と思う。考えることは人によって違うということが良く意識されており,最強の記号小説である西村寿行の「鬼の跫」なんかとは対極にある。
一つひどいと思ったのは,たぶん編集者がつけたのであろうカバーの内容説明文である。「新聞記者・福井浩介はある朝,」云々とあるが,主人公,福井浩介は新聞記者ではない。読んでないだろ~>編集者。