最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
ビフォア・ラン | 幻冬社文庫 |
著者 | 出版年 |
重松清 | 1998 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
この作品についてはぼくは評価に向いていないので,感想にとどめる。1991年にKKベストセラーズから刊行され,その後絶版だった作品の文庫化再刊である。
おそらく一般には青春小説にカテゴライズされる作品なのだろう。うまい小説ではあるが,後ろ向きなので得るモノはなかった。読んで元気にはならないし,夢を叶える話でもないし。ある意味ではモラトリアムを期待しつつそれを軽蔑したがり自己批判する登場人物たちの気持ち悪さが,そのまま伝わってきて嫌な気分になる。筋立てには触れないが,成長期の若者が捨て去ってゆくもろもろのコトを,うまく表現している。もう一つのストーリーの核は,「嘘」であろう。これらの絡ませ方も優れているので,人生が充実していない読者には救いになるかもしれないが,ぼくは嫌いだ。こんなのに共感しちゃいけないんだって。
NHKの朝のテレビ小説「走らんか!」は,きっとこれにinspireされてできたに違いない。あるいは,重松清さんはシナリオも書いているとのことなので,「走らんか!」も実は彼の作品かもしれないのだが。