最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
ミトコンドリアの謎 | 講談社現代新書 |
著者 | 出版年 |
河野重行 | 1999 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
こういう本を待っていたのだ。
著者はバリバリの分子細胞学者で,東京大学大学院新領域創成科学研究科教授である。ミトコンドリアは,さまざまな点で現代の細胞学の要であり,生物学の理解に必須な細胞小器官なのだが,これまで,90年代的な新しい知見を簡明にまとめた本が存在しなかったのだ。
生物学史的な側面は多少鬱陶しく感じる人もいるかもしれないが,ぼくには面白く読めた。高校生物で習ったことが記憶の底から呼び起こされたのと同時に,それから現代の最先端の生物学への知見へのつながりが無理なくわかる仕組みになっている。分子シャペロンとかミトコンドリアプラスミドとかω因子とかいったことも,わかりやすく説明されているし,巻末の用語解説もよくできている。引用文献が網羅でなく代表的なものだけなのが若干ものたりないが,新書という性質上しかたないかもしれない。